奥多摩個人迷宮+   作:ぱちぱち

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大雨の片付けで大分時間を取られそうなんで明日の投稿延期になるかもしれません。
6時に更新が無かったらお察し下さい(吐血)

誤字修正。、kuzuchi様ありがとうございました!


第百九十三話 NYから来た男

『急にランク制なんて出て来たから何事かと思ったよ』

『いきなりですみませんね』

『君が謝る事じゃないさ。お嬢さんやその他の人には、僕の方からもお小言させて貰ったけどね』

『ハハハ……』

 

 にこやかな表情で毒を吐く老人……スタンさんの言葉に、曖昧な笑顔を浮かべておく。まぁ、態々俺に報告したって事ははっきり文句を言ったけど、文句で終わらせたって事だろう。スタンさんは全米の冒険者協会のスポンサーの一人で、特に例の映画の件で広報面では非常に強力な後押しを行っている人物だ。そのスタンさんからの『お小言』は結構きついと思うんだが。

 

 例のランク分け会議の次の日。スタンさんはその足でテキサスにある冒険者協会本部に殴りこみをかける予定だったそうだ。そのタイミングでケイティから連絡が入り、恐らく彼女は彼にかなり込み入った事情まで話したのだろう。その場でスタンさんは一先ず殴り込みを辞めたそうだ。

 

『理由と事情が分かった以上はね。協会側がルールを作るのは当然のことだし、ウチとしては『もっとこちらにも配慮しろ』以上は言えないからね。まぁ、お上からのお達しじゃしょうがない』

 

 にこやかにそう話す彼の『配慮しろ』は、結構な圧力があるんだろうなぁ。等と考えながらブラックさんが運んできてくれたジャンボハンバーグをナイフとフォークで切り分ける。今週は東京のお店に顔を出すと言ってたから、丁度いいとスタンさんの紹介がてらお店にお邪魔している。前回は時間の関係でサイドメニューをあまり頼めなかったから、今日はメニュー制覇を目指していくつもりだ。

 

 店舗の各所に散らばるグッズ類に『こういう展望もあるのか。日本のアクション俳優はキャラと一緒に愛されるんだね』と感心しているスタンさんは、RXステーキをむしゃむしゃと美味しそうに食べている。90代とは一体何なんだろうか。うちの爺さんも最近仕留めてきた獲物を燻製にしたりとやけに肉食だし、魔力が多くなると食欲も上がるんだろうか。

 

『あぁ、そういえばその後に出てきた動画も見たけどさ。あれ凄いね、何で映画の前にあれ教えてくれなかったの? 彼にストレンジの魔法演出をお願いしたいんだけど』

『むしろ前の映画見て『あ、これイケる』って思ったらしいです』

『成程。世界一の魔法使いと呼ばれてるのも頷けるよ……まぁ、ドクターストレンジの方が強いと思うけどね』

『そのどっちが強い論やめてください……最近、それで酷い目にしかあってないんです』

『コミックなんてそんなもんじゃないか。ハルク並みのパワー、アイアンマンに匹敵する頭脳。知名度が高い人物を基準に設定するのはね、良く知らない人に物事を伝える時にとても便利なんだ。今回のは許さないけど』

 

 スタンさんはにこやかな表情でそう語るが、目が笑っていなかったのは気のせいじゃないだろう。手早く事情を連絡し、説明を受けていてこれだ。もしケイティから何の連絡も無ければスタンさんがスマイリーの名前を投げ捨てていたのは間違いない。

 

 何せ連絡を受けた後、1日も経たずに日本に飛んできた位なんだから。この事だけでも、スタンさんがどれだけ事態を重く受け止めていたのかが分かる。

 

『君の顔を立てて。私はこれ以上彼らに何かを言うことは無い……何度か言っていると思うが、君はもっと自分が周囲にどう思われているのかを意識した方が良い。イチカ君が爆発したのは、君が今回の件で怒る事が無いと分かっていたからだぞ』

『……すみません』

『いや、老いぼれの愚痴だよ。とはいえ、君がもしも少しでも私に対して悪いと思ってくれているのなら。再来月からのスケジュールを空けておいてくれると嬉しいな』

「……あ、はい」

『日本語が出来なくてもハイと言ってくれたのは分かった。よろしく頼むよ? ああ、そうだ。冒険者協会にウィルのスケジュールを空ける事も頼まなければな。忙しくなるぞ!』

 

 力強く肩を掴まれて言われた言葉に俺は精一杯の笑顔を浮かべて答えた。その返事に心底嬉しそうな笑顔を浮かべてスタンさんが肩に手を回してくる。多分、きっと、恐らく、励ましてくれているんだろう。そうに違いない。うん。

 

 その後、出てきた端からやけ食いのように食べまくって店のメニューを全制覇し、乾いた笑顔を浮かべるブラックさんとスタンさんの三人で並んで記念撮影。前回と同じくダブルライダーと、スタンさんからの要望に応えてMS(パーカースタイル)とRXでの写真を撮ってもらう。

 

『SNSで流しても大丈夫かな?』

『ええ、勿論です』

『……ふむ、翻訳も出来る……成程。確かに言われている通りなんだね』

 

 ブラックさんを品定めするように眺めるスタンさん。あの、ブラックさんも仕事中なんであんまりそういうのは止めてください、と伝えるとスタンさんは両手をあげて『すまないすまない、つい』と苦笑いを浮かべる。

 

 前々から初代様が育てているという俳優冒険者チームに興味を持っていたらしいからな。その一人を見てしまってつい品定めをしてしまったのだろう。東京の方の映画会社とも最近色々と接点を持ってるらしいし、今回折角東京に来たんだからと何度かお邪魔もしてるみたいだからな。

 

 もしかしたらスパイダーマのリバイバルが起きるかもしれない。流石にMSがあるから俺は中身にはならなくて済みそうだし、スパイダーマは純粋に特撮として面白いから、もし復活するなら是非見たいもんだ。レオパルドンの演出に魔法を使っても良いしね。




もう1場面ぶち込みたかったけど予想より長くなったので。
一花の次に過激な反応をしそうだった人でした。

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