今週もありがとうございました。
また来週もよろしくお願いします!
誤字修正。アンヘル☆様、kuzuchi様ありがとうございます。
夏も終わり秋。ランク分けとそれに付随する騒動がある程度落ち着きを見せた頃。
「イチローサーン! お久しぶりデース」
「また御厄介になります」
「こちらこそ、おかえりなさい」
ジュリア・ドナッティさんとベンジャミン・バートンさん。二人の仲間が奥多摩に戻ってきた。去年、彼等が大統領の護衛をしていた時に遭遇して以来の再会である。米軍は夏に除隊していたらしいのだが、諸事情あって日本に渡るのが遅れてしまっていたらしい。
「そう言えば夏にはとか言ってましたよね。どうかされたんですか?」
「ゴメンなさーい! 私のダディ、大統領とネンネンコロリデス。ダディのお願い、私断れナイ。ジュリア、私助けてくれマシタ」
「懇ろ、ですね。彼のお父様が大統領のスタッフの一人でして、その縁から魔法に関する基礎知識を大統領にお教えしていました」
それはレベルが高いというか何というか。そこを辞めてウチに来ても大丈夫なのか心配になるんだが、講義が進む内にむしろ是非行ってくるよう後押しされたらしい。何それ怖いんだけど。
大統領自身経済的な観点から元々非常に魔法について興味があったらしく、ジュリアさんやベンさんに引率されて実際にダンジョンに入ったりもしたらしい。大統領をダンジョンに放り込むのは結構な問題だと思うんだが、それをやってのける行動力は凄いな。
「彼は貴方とイチカさんの大ファンですよ。是非恭二さんや一花ちゃんと一緒に米国に帰化してほしいと常々言っていました。次回の渡米の際には是非購入した魔剣にサインを入れて欲しいそうです」
「に、日本が好きなんでとお伝え頂ければ……」
おかしいな。住居スペースは完全に空調が効いてるのに背中がぞくりとしたぞ? それにはい、と言ったらそのまま本当に連れて行かれそうな恐怖を感じるんですがジョーク、ジョークですよね?
「勿論ジョーク。プレジデント、ジョーク好きデース。でも、ジョークじゃない国、沢山ありマース。外国旅行、食べ物気を付けてくだサーイ」
「……それは穏やかじゃあないですね」
言葉は軽く感じるが、そう語るベンさんの目は少しも笑っていない。つまり彼はそれがありえると思っているし、彼が最近まで所属していた米国大統領府もありえると思っているという事だろう。
ジュリアさんは、俺のスパイダーセンスの事は知っている筈だ。シャーロットさんの趣味友である彼女にシャーロットさんが語っていない筈がないからな。俺も別に隠していない。それでも口に出したという事は、多分本気で狙っているような連中が居るという事だろう。しかも少なくない数で。
確かに変装するわけにもいかない祭典なんかでは結構怪しい視線を感じたりする事はある。あれを感じるようになってから、ここ最近素顔で街を歩いたことは一度もない。
つまり、あの粘着くような視線とビンビン突き刺さる危機感はそういった類いのものだった、という事か。大変迷惑な話だ。こちとら一介の民間人だぞ。
「それが起こる。ヤマギシはもう、そういう存在なんです。そして、貴方方ヤマギシチームも」
ジュリアさんの言葉に、俺は頷きを返した。現状のヤマギシはたった数年で世界有数と言える知名度を誇る会社になったし、歴史を変えるような発明品を多数保有している。
それらを欲しがっている奴は多いし、米国も実際欲しがっているが彼らはこちらに対して配慮するつもりがある、とメッセンジャーを務めてくれた二人は語っているわけだ。
そして、二人は多分かなりこちらに多目に情報を渡してくれている。プレジデントの下りは冗談めかして誤魔化しているが、恐らく本来は伝えなくても良い情報の筈。彼等の内心が少しだけ伝わってきたような気がして、少しだけ頬が緩む。
「……二人が戻ってきてくれて良かった。本当に、そう思います」
『……ありがとうございます。貴方に頼りにして貰えるのは、望外の喜びです』
「我々も出来る限りはお力になりますが、先ずは皆さんの協力が必要です。社長には許可を頂きました。要人警護は対象の協力も必要不可欠です。一緒に学びましょう」
目に涙を浮かべて感動しているベンさんを後目に、にこやかな表情を浮かべたままジュリアさんはどこから取り出したのかという多さの冊子をドン、とテーブルの上に置いた。
目を点にする俺の前で、にこやかな表情のまま冊子を一つ一つ丁寧に説明し始めるジュリアさん。狙撃の警戒ってそれ必要あるんですか? え、ベンさんもウンウンしてるけど本当に必要なんですか?
えっ?
「受験前にマジ勘弁」
「それな。勉強はどうよ」
「夏に息抜きする位の余裕はあるよ。これならもっと上でも狙えたかもね」
「お、おう」
冊子を眺めながらそう零す一花に戦慄を覚えながら頷きを返す。東大より上って何だよ。大学院大学か?
「でも渡るんならアメリカだしアメリカだとブラス家かジャクソン家の干渉は目に見えてるからね。奥多摩離れる気は無いしやっぱり東大かなぁ。恭二兄ちゃんみたいにゲートで通学出来るなら別だけどさ」
「まぁ、お前が決めた事なら文句は言わねぇよ。ほら、出来たぞ。右手見せろ」
「ありがと」
一花の右腕にサイズを調整したウェブシューターを巻き付ける。こいつは本人の魔力があれば魔法を使わなくても使えるからな。発射された糸は時間経過で消えるかアンチマジックを使うまで消えない為、防犯用具としてはこの上ないシロモノだし、緊急時には警察やヤマギシの警備センターに緊急コールを流してくれる。
当然発信機の機能も付けられて居るため、ダンジョン内部以外ならこれを付けていれば居場所を見失う事はそうはないだろう。
ヤマギシに戻って来た米軍組二人の意見を社長は受け入れ、ヤマギシ幹部並びにヤマギシチームの面々は外出時にはこれを必ず装備するように義務付けられるようになった。
社長曰く「この手の事は、確かに少し遅かったくらいだろうな」との事。遠方に出てた恭二と沙織ちゃんも急遽呼び出され、お勉強を強制される事となった。
存分に煽ってやりたいが、沙織ちゃんも涙目になってるから煽るに煽れん。恭二は履修→現地→履修の繰り返しだから他の面々が終わった辺りで存分にニヤニヤしてやれば良いか。