奥多摩個人迷宮+   作:ぱちぱち

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誤字修正。ハクオロ様、244様、kuzuchi様ありがとうございました!


第四十五話 ベンさんと美佐さん

第四十五話 ベンさんと美佐さん

 

 

「ベンジャミン・バートン少尉デス。ヨロシクお願いしマース」

 

「坂口美佐二等陸曹であります!よろしくお願いします!」

 

日米の訓練生受け入れに先駆けて、ジュリアさんと浩二さんの代わりに二人の人材がチームに参加した。

まず米陸軍からは日本語が若干怪しい陽気なイケメン白人男性のベンジャミン・バートンさん。24歳の陸軍士官で、なんと弁護士の免許も持ってる超の付くアメリカンエリートだそうだ。

 

 

「家柄もホワイトアメリカンのセレブで、このまま10年軍に勤めて、更に10年弁護士、そこから政治家という出世コースの人材なんですがね」

 

「て事はヤマギシへの出向はそれを上回るチャンスになったって事かな?」

 

「可能性はあります。そして出向のタイミングも素晴らしい。かなり先を見る目を持っているようですね」

 

 

冒険者部門頭脳担当のシャーロットさんと一花は彼をかなり高く評価しているらしい。

その評価は決して間違ってないと思うんだが・・・

 

 

『やぁスパイディ、会えて光栄です。今から秋葉原に一緒に行きませんか?日本のアニメと漫画は素晴らしいですね!貴方の他の変身した姿についても勉強したいです』

 

 

この人一花と同じ匂いがする。有能な趣味人だこれ。

 

そして次に陸自から出向してきた坂口美佐さん。25才女性の陸曹で、何と看護師の免許を持っているそうだ。

勿論歩兵訓練は施されているそうだが、最初から回復魔法が使えた浩二さんといい、自衛隊は回復魔法の習得に重きを置いているのだろうか。

非常に小柄な人で一花より少し背が高い位の身長なのだが・・・何というか、警戒心の強い小動物を彷彿とさせる人だ。

 

 

「リスみたいだな」

 

「ちょっ、きょーちゃん止めてよ!」

 

 

ボソリと恭二が呟くと耐え切れなかったのか沙織ちゃんが吹き出した。

 

 

 

 

 

前回の浩二さんとジュリアさんの経験を活かして、まずは魔石を吸収してもらい二人には魔力の感覚を掴んでもらう。

次にライトボール、ヒール、バリアーといった必要最低限の魔法を覚えるまで大コウモリやゴブリン退治を行い、基礎が固まったらパーティーを組んでダンジョンアタックという手順でいく。

といっても途中で横田基地からの呼び出しがあり、日米の訓練兵のお迎えが入ったので二人の自力での10層到達は一旦延期になってしまった。

 

 

横田基地についた俺達を米軍20人と自衛隊20人の選抜チームが出迎えてくれた。

先頭に立つのは先日別れたばかりのジュリアさんと浩二さん。二人が俺達に敬礼をすると、それに合わせて一斉に全員が俺達に敬礼をしてくる。

 

 

「おい、恭二」

 

「ああ、分かってる」

 

 

一人一人の紹介を岩田さんとドナッティさんがしてくれるが、俺達の視線は5人の米兵に向けられていた。

全員の紹介が終わった瞬間に恭二が5人に向かって歩き出したので俺も付いていく。

 

 

『あの。お久しぶりです。お体の具合は、どうですか?』

 

『お久しぶりです。貴方の、貴方達のお陰で、どこも悪くありません』

 

 

恭二が声をかけた人物は、黒人の身長190cm以上ありそうな大男だ。小太りでスキンヘッドという厳つい外見だがやけに瞳が可愛い。恐らく20代前半のその人物は、以前カリフォルニアのダンジョンで救助した部隊の隊員だ。

腹を裂かれていたのに俺達の救助まで生き抜いていたタフな人で、恭二に助けられたらすぐに起き上がって周りの人を助けようとしていた。

 

 

『そうですか。本当に良かった』

 

 

そう言って恭二が彼と握手をすると、5人全員が涙を浮かべた。ちょっと俺も貰い泣きしそうだ。

一同は軍用車を使って奥多摩に移動する。奥多摩に着いたらそのままヤマギシのワンルームマンションに案内する。

このマンション、各部屋にはトイレしかないが変わりに3階に男女別の大浴場と食堂があり、食事は持ち回りで日米が担当するらしい。

俺達も利用していいそうなので早速お邪魔する事にした。

 

 

「米軍の料理はやっぱりお肉多めだね!」

 

「バイキング形式か、すげぇな」

 

「お兄ちゃん、あんまり欲張らないでよ?」

 

 

肉を更に積み上げてニコニコしながら歩く俺を、横から一花が注意してくる。

 

 

「おーい、一郎。こっちこっち」

 

「あいよ。あ『どうも』」

 

『ど、どうも。お邪魔しています』

 

 

見ると例の5人と相席していたらしい。挨拶するが、どうも表情が硬い。あれ、俺嫌われてるのか?

 

 

『あ、あの。カリフォルニアでは本当にお世話なりました。ありがとうございました』

 

『いえいえ。俺達は依頼を全うしただけですので。えぇと、ちょっと表情が固くないです?もっとフランクに行きましょうよ』

 

『それは、その、すみません、貴方相手にほぼ初見で、フランクに話せるアメリカ人はそう居ませんよ!』

 

 

悲鳴をあげるような声に、周囲に座って聞き耳を立てていたらしい米軍兵士が一斉に頷いた。

ジュリアさんにまで頷かれたのは本気でショックなんですが。

 

 

「申し訳ないですが、イチローさんには一度実際に目にして欲しかったので。多分、今アメリカの何処で貴方を見かけても似たような反応になると思います」

 

「・・・・・・あ、はい」

 

 

笑顔のまま固まる俺に申し訳なさそうにジュリアさんがそう言った。

一花さん、ちょっと流石にこれは俺も心が折れそうなんですが。頑張れ?はい・・・

 




ベンジャミン・バートン:米陸軍少尉。24歳。出世コースを蹴って?ヤマギシへ出向してきた。休日に秋葉へ行こうと暇があるたびに言っている。

坂口美佐:二等陸層。25歳。看護師の資格持ち。身長が低く小動物のような印象のある可愛い系の美人。

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