奥多摩個人迷宮+   作:ぱちぱち

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でも会社の話は殆どなし。

誤字修正。、kuzuchi様ありがとうございました!


第百九十六話 一郎、社長になったってよ

 肩書きが増えました。やったね恭二!

 

「……ラーメン、奢ろうか?」

「ありがてえ、ありがてえ……勉強手伝うぞ」

 

 心底気の毒そうにこちらを気遣う恭二の言葉に思わず本音で礼を返す。2、3年ぶりに活字を読んでるせいでどうにも頭に知識が入り込まないと言っていたし、流石に完全に身につかないとかだと周囲が困るからな。手助けに入るのもやぶさかではない。

 

 本当は恭二が社長にされそうだったのだが、そちらは政府筋から「山岸恭二さんが動きにくくなるのは困る」とかなり丁重なお話が社長宛に来たらしい。真一さんに振るかとも思ったらしいが真一さんはヤマギシブラスコも見なければ行けない。

 

 そこで信頼が出来てかつヤマギシチームの一員としては随一のネームバリューがある俺に白羽の矢が立ったという訳だ。と言っても俺自身結構飛び回っているし、京都の方にも顔を出さないといけないからそんなに暇がある訳じゃない。

 

 その辺りは新しく入ったベンさんやジュリアさん、それに浩二さん達自衛隊上がりの人もそちらを手伝ってくれるので、あくまでも俺に求められているのはある程度の実務能力とそれ以上に旗印としての存在感だという。

 

 それなら恭二で良いじゃん、と思うかもしれないが、恭二は恭二で色々厄介な立場になっている。というのも、全国を巡って色々とヤバい事実を見聞きした恭二は立場的にも知識的にも一民間企業にそのまま置いていて良い状況じゃないそうだ。本人の意向は兎も角、抱えている情報がヤバすぎるらしい。

 

 これはヤマギシの幹部だけに知らされた情報だが、どうも過去に魔力に似た何かがこの世界に存在したのはほぼ確定したそうだ。明らかに魔力を用いて扱う前提に作られた物品がとある宝物殿や離島の神社に収められていたそうだし、恭二が見る限り安全そうなものに魔力を流し込んだ所実際に効能を発揮した物もあるらしい。

 

「多分、本当に鬼切ったんだろうなって剣とか。魔力流し込んだら本当に凄い威圧感放ってびっくりした」

「……それ、大丈夫だよな? どこの寺なんだよ」

「清水寺。特にそれから何も言われてないな。あ、いや。むしろ周りが静かになったとか住みやすくなったとか言ってたから邪気を払ってるんじゃないか?」

「なにそれこわい」

 

 俺が握ったら持ち主が出て来るとか流石にないよな? い、一応名品って刀とか銀座の刀商の爺さんに触らせてもらった事あるんだけどこれもしかしてヤバかったんだろうか……と、特にクレームとかは来てないし大丈夫だろう。何か起こったら駆けつけるという事でいこう。

 

 

 

「お兄ちゃん、いやさ社長」

「やめろくだしあ」

「取締役の方が良かった? 水無瀬さんのおじいさんから祝電来てたよ! モッテモテだね!」

「……あー。その、お礼は言っとかないとな」

 

 以前のやり取りで本当に俺のファンになってくれたらしい水無瀬さんは、あれから何かある度に連絡を寄こしてくれている。何でも俺との会話でダンジョンに対しても色々と目線が変わったとかで、どうも最近はお孫さん達から色々習っているらしくSNSなんかも始めているらしい。

 

 元々関西では結構な影響力のある人だったからあっという間に財界人を中心にフォロワーを増やしていき、また何故か結構な頻度でダンジョン関係の話や俺の話を内部側の視点から発信しているもんだから、始めて2か月位で万を超すフォロワーを獲得。

 

 それに普段は上品な物腰とのほほんとした文章が特徴なのに、お孫さんの事や俺の事を話すときだけ熱意がもの凄く、そのギャップが面白いと人気を博しているそうだ。

 

 麻呂さんが「強力なライバルだ……おじゃ」とかつい生放送で真顔を晒してしまう位には脅威的な勢いで面白オーナー枠を脅かしているらしい。

 

「その麻呂さんもこないだのお兄ちゃんとのコラボが大当たりしたみたいだけどね」

「あれはな。ブラックさんが動画に出て来たの確か初めてだし、俺とセットも初めてだったし。そら注目されるだろ」

「うん。お兄ちゃん目線で言うとそうだけど、麻呂さんとかほかの動画投稿者だとちょっと違うんだよねぇ」

 

 ぽりぽりと頭を掻く一花はうーん、と少し頭を捻り、何かを思いついたのだろう。ポンッ、と手を叩いた。

 

「お兄ちゃんさ。他の人の動画に出た事ある? 公式動画以外で。あ、こないだのイキマスQは別だよ? 切れたナイフがカンヌでうろちょろしてたアレ」

「んー……初代様と一緒……あれは東京の方の映画会社の依頼で、ロックマン……は自分の動画か。あ、昭夫君の奴」

「そ。でも昭夫君はそもそもお兄ちゃんの動画でこういった動画投稿とかを始めたし言ってみれば身内枠。弟子枠だよね? 麻呂さんが初めてなんだよ。自分の動画にお兄ちゃんを登場させた部外者の動画投稿者は。まぁ、そういった依頼はシャーロットさんが全部弾いてたんだけどさ」

「むしろそんな依頼が今まであったなんて聞いた事がないんですが」

 

 聞いてたからってどうこうする訳ではないんだが、一言も報告が無いという事実に思わず戦慄を隠せない。シャーロット、恐ろしい子……と少女漫画ごっこを妹と行いながら、そういえば麻呂さんもあれが初コラボだったんじゃないかなと思い出す。

 

 麻呂さんシリーズは大体見てるけど家族とダンジョン所属の冒険者以外が出てるのはほぼ見た事が無い。例外として撮影を許可された研修の時位かな。あの時は確か昭夫君とわちゃわちゃ遊んでた気がする。やっぱり冒険者としてのスタイルを前面に押し出してると他と絡みにくいってのもあるんだろうな。

 

 とはいえ、折角知名度の高い動画チャンネルを維持してるんだし、最近開発してる小物類なんかの紹介とか面白そうだと思ってるんだがこれは難しそうかな。テレビで最近よくある1ヶ月位使ってみたって奴。

 

 初代様に頼めば結構反響良さそうだし、シューズの下敷きとかにヒールを付与した商品を試して貰って「いくらキックしても足が痛くならない!」とかやって貰ったらバカ売れ……いや、止めておくか。もうちょいまともな商品で試してもらう方が良いわな。うん

そろそろ番外編見たいか否か。見たいなら何が見たいかもオナシャス

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