同じ島国とはいえ秋のロンドンはかなり冷え込む。事前に連絡を貰っていたとはいえ、ジャケットやらを用意しておいて良かった。エアコントロールがあるとはいえ、流石に真夏みたいな恰好でうろつくのは目立ちすぎるからな。
「でもロンドンの人は結構薄着で歩いてるよね!」
『ロンドンはすぐ近くに二つダンジョンがあるので、若い人間に冒険者が多いんです。中にはエアコントロールのお陰でお洒落がしやすいと、冒険者になりにくる人も居るんですよ』
「あー。うん、日本でもモデルとか役者さん達がそのノリだなぁ」
イギリス料理の店で注文した料理を待つ間、俺達はそれぞれの国の冒険者について世間話をしていた。やっぱりお国柄というか、意外と欧州の人はダンジョンという物を身近な物だと捉えてるのか。兼業や専業の冒険者を選択する人はかなりいるらしい。
特に中高年になると若さを保つ為に本業の傍ら兼業冒険者の道を選んだりするのが流行ってるんだとか。まぁ若さを求めるのはどこも一緒だな。そういったそこそこ年の行った人はケアのきめ細やかな英国のダンジョンを選ぶことが多いそうだ。
そう、英国の、である。欧州の冒険者は何というか、それぞれの国に拘らないというか行き来が楽だからと平気で隣の国のダンジョンに行ったりする事があるらしい。
日本国内では現在、国内ダンジョンの行き来を簡便にする為にダンジョン毎に魔石燃焼型の新型ヘリを配備してこいつで定期便を、といったような施策を試みているが、欧州の場合そんな物がなくてもバスと車で行き来してしまうそうだ。
『まぁ、冒険者協会のある国とない国のダンジョンでは危険性に圧倒的な違いが出ますからね。自分の実力と危険性を見極めてダンジョンを選ぶのは当然の事でしょう』
『協会がない国のダンジョンに入る人も居るんですか?』
『ええ。やっぱり、儲かりますからね。ドロップ品は兎も角、協会の手が入っていない魔石の値段は天井知らずですから』
オリバーさんの言葉に聞き捨てならない部分があった為尋ねると、何事もないかのようにそう返事が返ってきた。いや、それ危険何てもんじゃ……ヤバい案件じゃないか?
「いえ。協会は再三注意して居ますので……実際EU内部の国々ではすでに冒険者協会の発足準備に入っている国も多く、管理下に置かれているダンジョンを封鎖している国は多い筈です」
『流石に全てを、というのは各国の内部事情もある為無理があるという訳です。そして、そういった未規制のダンジョンに潜ろうとする人間を止める事も残念ながら……』
「EU内部はむしろまだ目が届いている方ですね。まぁ、アメリカやロシアのように広すぎて未だにぽこぽこと未発見のダンジョンが見つかる国もあります。協会としても手をこまねいている訳ではないんですが、世界中をとなるとどうしても……」
オリバーさんとシャーロットさんは、そう言って少し申し訳なさそうな顔を浮かべる。いや、二人が悪いわけではないし……今のは質問の仕方が悪かったな。申し訳ないと頭を下げておく。
しかし……うん。成程。確かに、イギリス人が自国の料理の話をしないのが良く分かった。この丸々ウナギのぶつ切りが入ったゼリーを一体どうすれば良いんだ。
「……え。マジで食べるんだ」
『ははは……一応連れてきましたが……その。無理はしないで良いですよ?』
「いやぁ、一辺食べとかないとさ。ほら、割とグルメで通ってるし」
「B級舌が良く言うよ。何でもおいしいおいしいって食べてるくせに」
恭二の言葉にやかましいと返事を返して、俺は目の前に置かれているドンッと効果音でも付きそうな代物に目を向ける。イギリス料理が食べてみたいと無茶ぶりをした結果、オリバーさんからそこそこ美味しいという事で連れてきてもらったお店の逸品、ウナギのゼリーよせである。
まず、開幕すでに生臭い為正直後悔し始めているのだが……と、とにかくまずは一口。
……うん、生臭い。
『フランスで食べた奴は凄く美味しかったんだけどね……なんであれでそのまま来ちゃったのか』
『英国人も自国の料理は……その。基本的に素朴な調理法しかないので、味付けは個人でしてくれという物でして』
成程、昔ながらの作り方だとそうなると。最近はイギリス料理を改革した美味しいイギリス料理なる新しい料理体系もあるらしいから、最初からそちらにすればよかったかな。昔ながらの、という言葉につい拘ってしまった失敗だろう。少し反省する。
口直しに訪れたカレー屋が大繁盛しているのも頷ける話である。英国は大航海時代から各地の文化を集めており、その中には当然食文化もある。カレーなんかは現在日本でよく食べられてるのはイギリス式の物で、インド式をアレンジした物だったりする。うん、やはりカレー粉は万能だ。これがあればたいていなんとかなる。
『今度はモダン・ブリティッシュ形式の料理を出すお店にお連れします』
『ありがとうございます。うん、美味しい』
出てきたカレーの大皿にスプーンを落とす。これを生み出す技術があるのになんで昔ながらの現地料理がああなんだろうか。首を傾げながら栄養補給の為にお代わりを頼み、明日のダンジョン探索に向けて英気を養う。
明日からは本格的にロンドンダンジョンの30層以下を攻略に当たるわけだからな。上手い飯を食って気合を入れておかないと。何か面白い発見があると良いんだがね。
そろそろ番外編見たいか否か。見たいなら何が見たいかもオナシャス
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良いから本編を進めろ