奥多摩個人迷宮+   作:ぱちぱち

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誤字修正。244様、あんころ(餅)様、kuzuchi様ありがとうございました!


第四十六話 日米教官訓練

第四十六話 日米教官訓練

 

 

「自衛隊のAチームと米軍のAチームがダンジョンに入ったみたい」

 

「よし、俺達も行くぞ。ベンさん、美佐さんよろしくお願いします」

 

「コチラこそヨロシクお願いしマス」

 

「頑張ります!」

 

 

自衛隊のAチームには浩二さんが、米軍のAチームにはジュリアさんがついてるから問題ないと思うが、念のためダンジョン内のレスキュー部隊として俺と一花、それに基礎的な魔法を全て習得したベンさんと美佐さんが巡回することになっている。

この巡回ではベンさんと美佐さんの感知の魔法の精度を上げる事も目的にしている。

 

 

「この感知の精度がそのままダンジョン内での生死に関わるから、頑張って磨いてください」

 

「了解デース」

 

「中々、難しいですね」

 

 

飄々としたベンさんとは対照的に生真面目そうな美佐さんは眉を寄せる。

ああ、いつの間にか愛称で呼んでるけど、ベンジャミンさんだと呼びにくいだろうって事で本人が言い出したことだ。美佐さんもその時に許可を貰っている。

 

 

【日米チームへ。巡回チーム出発します】

 

【JAチーム了解】

 

【AAチーム了解】

 

 

JAは日本A、AAはアメリカA。単純な分け方だが咄嗟の際に問題なく区別できるように分かりやすい言葉で表してもらっている。

日本側が救助を求めているのにアメリカ側に走ってしまうとかあったら困るからね。こういう奴は分かりやすくしとかないと。

 

もう少ししたらBチームも出発する。1層に24名も入るのは初めてなので、同士討ちが無い様今日は各自銃は自重してもらい近接用のブラックジャックのような棍棒を持ってもらっている。大コウモリ相手ならこれで十分すぎる位だからね。

念のために拳銃は持っていると思うけど、無線で聞く状況的にどこも拳銃を抜くような状況にはなっていないみたいだ。

 

初日の取り敢えずの目標は各自にダンジョンに慣れてもらうことと、あわよくば魔力の存在確認をしてもらう事。倒した魔石は公平に分配する予定なので、今日中に魔力が感じ取れるセンスのある人を見出せれば満点って所だろうか。

 

A/Bチームが終わればその次はC/Dチームになる。今日は午前中のそれぞれ2時間だけダンジョンに潜り、午後は各自で実際に潜った際に気になったことや気づいたこと等をまとめて議論するために会議を開く予定だ。

この会議は言語の関係上日米で別々に行う予定だが、今回の教官教育に来ているメンバーには最終的に皆翻訳の魔法を覚えてもらう予定なので、途中からはその練習も兼ねて日米での合同会議等も行う予定だ。翻訳の魔法は実際に相手の言葉を聞き取ろうとすると覚えやすいしね。

 

 

 

 

さて、ダンジョンである。

午後になったらヤマギシチームのメンバーは暇になってしまったので、これはチャンスだと恭二の進言により16層へ。

ベンさんも美佐さんもそれぞれの会議に参加しているので、6名でのダンジョンアタックとなる。

 

 

「個人的に一番良い人数だと思う」

 

「ああ。多すぎず少なすぎず。5名か6名が1パーティの理想人数だって報告しとこうか」

 

「少なくとも新層に突入するときは6名がベストだな。唯の狩りなら5名でいいけど」

 

 

そんな軽口を叩きながら大昔の炭鉱のように、もろい部分を柱や板で補強してある坑道の中を歩く。防毒マスクと酸素ボンベは腰に付けてありいつでも被れるよう準備している。

 

 

「サイアク・・・・・・」

 

「キモーい」

 

 

沙織ちゃんと一花がそう言って口を閉じた。

ずるずる動く腐敗した「人間」だったもの。グールなんか目じゃない気持ち悪さだ。

 

 

「恭二、何かないか。アンデッドに効きそうな魔法」

 

「あー、えーと。ホーリーライトかターンアンデッドかな」

 

「よし、やれ」

 

「あいよ」

 

 

少し恭二が考え込む中、とりあえずゾンビを火葬で仕留める。フレイムインフェルノが目の前に展開されているのに突っ込んでくる姿はちょっとシュールだった。

自意識がないのかもしれないな。フレイムインフェルノに焼かれて灰になり、ドロップ品を落とすゾンビを見てそう考えていると、恭二が「OK」と声を上げた。

 

 

「試してみる。ターンアンデッド!」

 

 

恭二が魔法を唱えた瞬間、ゾンビの上空から乳白色の魔法が降り注ぎ、一転、上空に舞い戻って消える。

おお、と仲間達のどよめきが聞こえる中、恭二はどんどん魔法でゾンビを仕留めていった。

 

 

「属性は聖と浄化って考えて作ってみた。ちょっと試してみて欲しい」

 

「成るほど、聖属性と浄化か。それをイメージしながらやってみればいいんだな」

 

 

イメージが頭の中で一致したのか真一さんが納得したように頷いた。練習がてら全員で交代しながらターンアンデッドを唱えつつ前に進む。

俺の場合はなんか乳白色に右腕が光りました。流石に接近戦をするつもりは無いのでスパイダーマンモードになり、乳白色に輝く糸をばら撒いてます。

糸に包まれたゾンビが昇天していく様は正直ちょっと面白かった。

 

16層のボスはネクロマンサーだった。周囲には腐敗した冒険者的なのが四人。1人は魔法使いらしい木の杖を持った女のゾンビで、残りは長剣を持った戦士だ。

俺はウェブシューターを使って聖属性の糸をばら撒きゾンビを縫いつける。特に魔法使いは、下手な動きはさせるわけにはいかないからな。

手下が絡め取られたからか、ネクロマンサーは一声唸り声を上げると周囲からゾンビがまた湧き出てきた。

 

 

「恭二!」

 

「分かってる。ホーリーライト!」

 

 

え、その魔法何?と思った瞬間恭二を中心に乳白色の光が弾け、周囲のゾンビが全て昇天していく。あ、範囲版のターンアンデッドか。もう開発したのね。

怯んだネクロマンサーに右手を巨大な手に変形させて一撃。いきなり新技なんか出してきたのでちょっと対抗心を見せてみる。

巨大な爪を持ったその右手で叩き潰され、ネクロマンサーは煙になった。

 

 

「何だそれカッケー」

 

「いや、お前こそなんだ今の。何時の間に開発してたんその魔法」

 

「ターンアンデッド開発したときに思いついた。結構魔力食うからまだ試さなかったけど」

 

「さいですか」

 

 

軽口を叩きあいながらドロップ品の回収をする俺達を、呆れた目で真一さんが見ている。

 

 

「お前らもうちょい人類の言葉で会話してくれ。とりあえず恭二、その魔法のイメージを早く教えろ」

 

「うーっす」

 

 

ドロップ品を収納に仕舞い込み恭二が返事を返す。

次は17層か。気を引き締めていこう。

 




ターンアンデッド:聖属性?の魔法。ゾンビ等のアンデッドに効果有。

ホーリーライト:ターンアンデッドの範囲強化版

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