奥多摩個人迷宮+   作:ぱちぱち

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17層・18層攻略。まだダンジョン回


誤字修正。ハクオロ様、244様、kuzuchi様ありがとうございました!


第四十七話 バンシーの恐怖

第四十七話 バンシーの恐怖

 

 

十七層の雑魚は予想通りネクロマンサーだった。

といっても攻撃手段はもう知れている以上魔法連打で完封だ。

やっぱりフレイムインフェルノが強すぎる。これ絶対に10層とかで思いついて良い魔法じゃない。

 

 

「フレイムインフェルノ!」

 

 

沙織ちゃんがネクロマンサーに止めを刺した。グロに耐性のない沙織ちゃんだが遠距離ならある程度平気なのか、近づかれる前に感知した敵をバンバン魔法で焼き払っている。

ゾンビに噛まれて大丈夫かもわからないし、遠距離攻撃が鉄板だろうな。

 

 

「ボスはネクロマンサーと・・・・・・マミーか?」

 

「見えないだけゾンビよりマシ・・・・・・」

 

 

ボス部屋に入るとネクロマンサーが使役したモンスターを連れて待ち構えていた。引き連れているのは包帯で全身を覆ったミイラのような怪物だ。

炎が有効そうなので一斉射撃でボス部屋を真っ赤に染める。大した苦労も無く17層も攻略完了だ。

 

 

「マミーのドロップは・・・鞘付きの短剣。宝玉付きだな」

 

「これ、価値があるかなぁ?」

 

「どうかな。何か特殊な効果があるかもしれないし取っとこう」

 

 

ゴーレムのインゴットのようにどんな効果があるかわからないからな。一通り調べるまで価値を見出すのは難しい。

ネクロマンサーのドロップ品は変わらず水晶玉だったが、雑魚のネクロマンサーが落とす物より透明度が高く感じる。

これは、次もネクロマンサーな予感がぷんぷんするな。

 

 

「やっぱり・・・・・・」

 

「もうこいつ嫌・・・・・・」

 

 

18層の雑魚は予想通りネクロマンサーとマミーだった。面倒になった俺達は考えうる限り最短距離を火葬しながら走りぬける事にする。

そしてボス部屋まで走り抜けて、中を伺うと・・・・・・嫌な予感は当たるようだ。

 

 

「またネクロマンサーか・・・あとは、女?」

 

「全身黒ずくめにフードマント・・・明らかに悪い魔女っぽいんだけど」

 

「後はスケルトンかぁ。この階層でも出てくるとはね!」

 

「皆、アンチマジックはかけなおしておいてくれ。何かがあった時は恭二、頼むぞ」

 

「りょうかい。気合入れなおすわ」

 

 

真一さんの指示に従い、各自がアンチマジックをかけなおす。俺も戦闘能力の高いライダーマンスタイルに切り替えて、自身にバリアとアンチマジックをかけなおした。

 

 

「いくぞ!」

 

 

真一さんの号令に従いボス部屋に突入した瞬間。

 

 

【ギャアアアアアア!】

 

 

黒い女が金切り声のような叫び声を上げた。

音を聴いた瞬間、天地が逆転したような衝撃を受けて俺は座り込んだ。

これは、まずい。体が動かない。

自分の身体がまるで粘着性のある液体の中にとらわれているような感覚だ。

ヤバい、どんどんスケルトンが近づいてくる。このままじゃ不味い。

後方の仲間からの魔法はない。皆恐らく同じ状況だ。先頭の俺と恭二が止めなければ後ろの仲間が。

一花が危ない!

 

 

「オオオオオオオオ!!!!」

 

 

雄たけびを上げて、立ち上がった。魔力と言う魔力を無理やり体内で爆発させて相手の影響を消し飛ばす。

戦闘態勢をとるスケルトンに駆け寄り殴り飛ばすと、殴った部分が吹き飛んだ。

手の周りを何か黒い蛇のようなものが這い回り、普段からは信じられないほどの力が全身を覆っている。

 

 

「恭二!」

 

「・・・!レジストぉ!」

 

 

俺の声に応えて恭二が立ち上がった。

俺は恭二を庇うように立ち、スケルトンの攻撃を盾で遮る。

 

 

「フレイムインフェルノ!」

 

 

特大の火柱がボスのネクロマンサーと黒い女を包み消滅させる。

最後のスケルトンを殴り倒すと、ちょうど魔力切れか右腕が溶けるように消えた。

荒い息をつきながら恭二を見ると、顔を興奮で真っ赤にした恭二の姿がそこにあった。

 

 

「きょ、きょう・・・」

 

「兄貴!クソっ、レジスト!」

 

 

真一さんのうめき声に我に返ったのか、恭二は慌てて全員に魔法をかける。

レジスト・・・抵抗か。あの状態にそれで抗ったって事だな。

 

 

「あ・・・うう」

 

「これじゃ駄目か!どうする・・・状態異常、状態異常だ。治す・・・よし!リザレクション!」

 

 

ヒールより強い閃光のような光が真一さん達を覆った。

効果は・・よし、顔色が戻っている!

恭二は念の為、全員にもう一度リザレクションをかけて様子を見る。

 

 

「どうだ、兄貴」

 

「・・・ふぅ、はぁ。大丈夫だ、何とか、戻ってこれた」

 

 

ドカッと真一さんが座り込む。沙織ちゃんやシャーロットさん、一花も立っていられないのかぺたり、と地面に膝を突けた。

 

 

「・・・・・・ヤバかった。あのオークにぶっ飛ばされた時よりも」

 

「・・・・・・恐らく状態異常だと思う。あいつの鳴き声はアンチマジックを貫通してたから、スキルかな」

 

「バンシーかな、多分」

 

「イギリスの伝説に出る妖精ですね。アレは、かなり邪悪に見えましたが」

 

「妖精なんて可愛いもんじゃない。悪霊って方がまだ分かる」

 

 

シャーロットさんの言葉に恭二が頷いた。

俺達は心を落ち着けるために他愛無い内容の会話を繰り返した。

 

 

「さて、どうする?」

 

 

ある程度頃合を見て、真一さんがそう尋ねる。

撤退か進むか、という事だろう。

 

 

「進もう。この階層はさっさと終わらせた方が良い気がする」

 

「俺もそれに賛成」

 

「ほう、理由は?」

 

 

恭二が真っ先に手を上げたので俺も賛成の声を上げる。撤退になると踏んでいたのか真一さんが少し驚いた顔をしている。

 

 

「まず、対策が立てられれば大した相手じゃないのが一つ。あいつの鳴き声に抵抗するレジストと、万が一状態異常になった時のリザレクション。これがあればあいつはただの雑魚だ」

 

「・・・・・・成るほど。一郎、お前もレジストが使えるんだな?」

 

「いや、俺は力技で破ったんで」

 

「・・・・・・・・・・・・人類の言葉で分かるように話してくれ」

 

「と言われましてもねぇ」

 

 

無理やり魔力を体に込めて弾き返したからそれ以外に言い様がない。

 

 

「レジストとリザレクションは後で教えるよ。で、二つ目がこの辛気臭いエリアをとっとと終わらせたい。ドロップも美味くないしな」

 

「私賛成」

 

「あたしも」

 

「じゃあ、私も。流石に辛くなってきました・・・・・・」

 

 

二つ目の言葉に女性陣全員が賛成に回り、真一さんはお手上げと肩をすくめる。

多数決なら仕方ないよね。早めに魔力回復しよう。

 

 




レジスト:抵抗力を上げる魔法。基本的に自身の状態異常に対する抵抗力を上げる為、状態異常になった後だと効果が薄い。

リザレクション:上位回復魔法。傷も状態異常も回復する。

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