奥多摩個人迷宮+   作:ぱちぱち

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遅くなって申し訳ありません。
ちょっと別作品の更新に物凄いエネルギー使ってしまって(白目)

誤字修正、kuzuchi様ありがとうございました!


第二百十二話 ウィルソン大統領

『私が最も好きなシーンは、やはりハジメがハナを助け出したシーンだね。秘宝を富士山中から取り出すために大規模転移魔法の触媒とされたハナが、もう用済みだとオークの王に殺されそうなタイミングでストレンジのスリングリングが現れた時は興奮したよ! 空いた時間があれば何度もあのシーンを再生してるんだ。やっぱりヒーローは遅れて、そして間に合わないといけないんだ!』

『あ、はい』

 

 若干白目を向きながらそう相槌を打つと、向かいに座るナイスミドルは我が意を得たり! とばかりに再び口を開く。あ、ヤベ、と思った所で、横合いに座った秘書官らしき人が慌てたようにナイスミドルに耳打ちをする。その迅速な対応に、恐らく慣れてるんだろうなぁと彼の気苦労を感じていると、ナイスミドルが口をもごもごとさせながら諦めたように小さなため息をつく。

 

 安堵の表情を浮かべる秘書官さんに心の中で拍手を送っていると、こちらに向き直ったナイスミドル――米国大統領閣下は居住まいを正して再び口を開いた。

 

『さて。非常に、非常に残念だがプライベートな話はここまでとして、そろそろ本題に入るとしよう。その前に……招待を受けてくれてありがとうMS。合衆国は国を挙げて君の来訪を歓迎するよ』

 

 そう言って、現米国大統領のウィルソン氏はにこやかな表情を浮かべた。

 

 

 

『君達には随分迷惑をかけてしまった。ブラス嬢にも憎まれ役をさせてしまった……公式の場では口に出せないが、本当に申し訳なく思っている』

『すみません貴方に頭を下げられると本気で居心地が悪くなるんです』

 

 まずは、と口にしてすぐ、ウィルソン氏は申し訳なさそうに軽く頭を下げた。周囲には俺とウィルソン氏、そして秘書官さんの3名。多分外には沢山のボディガードも居て監視もされてるんだろうが、ほぼ衆人環視のない状況とはいえ現職の大統領に謝罪をされるのは恐れ多すぎる。

 

 ウィルソン氏は俺の言葉に礼を返して頭を上げる。

 

『キョージ・ヤマギシを祭り上げるという決定を下したのは私だし、その事を米国に責任を持つ者として後悔はしていない。ただ、一個人としてはどうしても君に一言謝りたかった……すまない』

『あー……何となくそうじゃないかなぁとは思ってました。前後が明らかにおかしかったですし』

『彼女も交えた世界冒険者協会の首脳陣とは何度も話し合った。最終的には必須であると理解して貰えたが、混乱は避けられないだろうとも』

『まぁ……混乱しましたね』

 

 ヤマギシとブラスコの連帯がギクシャクするレベルで混乱してしまったんだが、これはまぁ向こうも知っているだろう。それらを織り込み済みで、それでも強硬した何か。

 

 世界冒険者協会がヤマギシとこじれる可能性と天秤にかけた上で、ランキング制なんて導入して恭二を祭り上げた理由。米国政府が態々主導してまで行った一連の真相。秘書官さんに淹れてもらったコーヒーで口を湿らせ、大統領の言葉を待つ。

 

『だが、先ほども言ったがこれは必要な事だったんだ。彼に対して世界冒険者協会及び米国政府がどう評価しているかを内外に知らしめる為にも』

『……内外、ですか』

『ああ。内外だ』

 

 俺の言葉に大統領は小さく頷き、秘書官さんへと目配せをする。その視線に頷きを返して、秘書官さんは一枚の書類を手渡してきた。

 

 グラフやら何やらで書かれた書類は全て英文で書かれており、念のためにスパイダーマンに変身を切り替えてそれらを読んでいく…………

 

『嘘やん』

『今年に入ってから貴方とキョージ・ヤマギシを対象に行われたテロ及びハニートラップの回数は共に100を軽く超えています。勿論、全て未遂で食い止めていますが』

 

 顔を引きつらせた俺の言葉に容赦なく秘書官さんがとどめを刺す。自爆も含めたテロ未遂、大よそ2~300件。ハニトラに至っては毎日3、4回計画されており、今日飛んできた飛行機の中でもテロとハニトラ両方が企まれていた、そうだ。

 

 そしてそんな俺よりも狙われてるらしい恭二君20歳。なんとハニトラ未遂の回数が1000を超えているらしい。中にはあまりにハニトラが成功しないから同性愛者なんじゃないかと男性のハニトラ要員が準備されたらしく、5~6回くらい別枠で男と書かれたグラフが出されていた。大草原。

 

『あの。ぜんぜんしらなかったんですが』

『こちらも網を張っているからね。仮にその網を突破してもベンジャミンやジュリアが最終防衛ラインとして食い止めている。彼らは優秀だ』

『日本国外の場合は、常に冒険者協会の誰かが一緒に居たはずです』

『……いましたね。しかも腕っこきの人が』

 

 二人の言葉にここ数か月の生活を思い出す。そういえばイギリスでもフランスでもドイツでも、常に誰かが俺と恭二の傍にいた気がする。スパイダーセンスで粘っこい気配からは遠ざかるようにしてたんだが、うん。ハニトラは想定してなかったわ。

 

『ランキング制で君たちの注目度と重要性を世間は認知した、と理由をつけて、世界冒険者協会はヤマギシチーム……とりわけ君達、上位3名を代わりのいない最重要な人物として護衛対象に指定している。上位3名以外だと特にシンイチ・ヤマギシは注目の的だそうだ』

『……い、いえ。その、あの』

『君も若い男だ。ハニートラップは厳しいだろう?』

『ま、前向きに善処する考えです』

 

 そっと目をそらしてそうお茶を濁す。正直、俺だって健康な男の子である。綺麗なお姉さんがあられもない姿で迫ってきたら断りきれる自信はない。

 

 その様子に苦笑を浮かべて、大統領は口を開いた。

 

『まぁ、そういった保護という観点もあるんだが、キョージ・ヤマギシに関してはまかり間違って第三次世界大戦の引き金になられても困るからね』

「What do you mean」

 

 何事もないようにそう言った大統領閣下に思わず素で尋ね返した。

 もしかしてリアルに無限石とか持ってると思われてるのか? 恭二は……確かに怪しいかもしれない。

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