誤字修正。アンヘル☆様、広畝様ありがとうございます!
『Hey MS! ダンジョンには夢と希望と女の子との出会いが詰まってるんじゃないのかい!?』
『夢と希望はあるけど最後はラノベの読みすぎです』
アメリカにもラノベってあるのかは疑問だが一応伝わったらしく、本家スパイディさんはぐぬぬっと唸り声を上げて睨みつけてくる。いや、あんた超人気俳優でモッテモテやないんですか。ガールフレンドのお誘いが多くて大変だとかツブヤイターしちゃって炎上してたの知ってますからね?
『いや、ああいう遊びなれた感じの子じゃなくてだね。冒険者の娘ってこう、ストイックなイメージというか戦う女性って感じがしてグッとくるんだよ。それに専業の娘って美人が多いしね!』
『協会に注意喚起しときますね』
『そりゃないだろイッチ!』
残念でもなく当然なんだよなぁ。久しぶりに会ったのに相変わらずの軽さに少し安心感を覚えてしまう。ここ数日はやたらと偉い人の前に引き出されて緊張しっぱなしだったから余計にそう感じるのかもしれない。
だが、慣れない社交も昨日で終わり。今日からは本来の目的であるマーブルへの訪問や打ち合わせが始まるわけで、その相手は気心の知れたスタンさん達だ。撮影に対しては色々思うところもあるけどな!
『というかですね、人によっては毎回命がけって気持ちで挑んでたりするんでそんな時に軽く声掛けられても困りますって』
『あー……うーんそうだねぇ……』
本家さんもダンジョンに潜った経験はあるだろうけど、恒常的に潜る冒険者にとってダンジョン内、特に本家さんが潜れる位の階層って事は10層以下だろうし、その位の階層をアタックしてる子達は基本必死だろうから余計な茶々は入れてほしくないんだ。10層まではいわば冒険者を続けられるかどうかの分水嶺みたいな物だし。
まぁ10層までというか、ぶっちゃけオークが超えられるかどうかが最も大きい試練なんだけどね。
『あぁ、オーク。確かにあれは怖い。映画で何度も戦った筈だったんだけどダンジョン内だと全く別物に見えるね』
『撮影の時のはエキストラ役の人に一花が変身をかけてたやつですからね』
『凄いリアリティだったよ。あれを見て僕もダンジョンに潜るようになったんだ。これからの時代は魔法を使えないとってね』
お陰で自前で傷の手当もできるようになったし疲れた時にヒールするとすごく快適なんだ、と笑う本家さん。確かにヒールは本当に便利なんだよな。リザレクションに慣れるとまた違うんだけど。あっちは本当に一番体の調子が良い所まで持って行っちゃうから。
『え、というかオーク突破したんですか?』
『うん。キャップや鉄男さんと一緒にね。オフの予定が会うときに一緒に潜ったりしてるんだ。日本でも俳優や女優に人気なんだろ? ローシがツブヤイターで良く言ってるじゃん』
あ、老師って初代様の事ですねわかります。映画でもその呼び名でテロップ流されてたしな。アメリカだとライダーの方よりも、こっちかハジメが彼を呼ぶ時の「師匠」の方が有名かもしれない。
『ローシがアクションスターを育ててるってこっちでも結構有名なんだよ。そこから第二、第三のMSが出てくるんじゃないかって』
『俺を基準にするのはやめてくれませんかねぇ?』
『去年と今年で2作も超話題作に出てるんだから、それは無理じゃないかな?』
白目を向きながら本家さんにそう返すと、全く違う方面から追撃が襲い掛かってくる。部屋のドアを開けたスタンさんは、にやにや笑いながら室内へ入ってきた。
『スタンさん、言うてはならんことを……』
『……むしろ俳優としては誇らしい事の筈なんだけど』
『(俳優じゃ)ないです』
眉を寄せて首をかしげる本家さんに白目のまま答えると、苦笑いで返されてしまう。別にボケてるわけじゃないんですがね。フリじゃないんですがね。俺の視線に気づいているのか居ないのか。スタンさんはそのあだ名の通りのいつもの笑顔を浮かべながら俺と本家さんの向かいの椅子に腰かける。
『いやぁ、遅れてすまないね。ちょっとレオパルドンレオパルドンと五月蠅い奴の対処をしていて』
『え。スパイダーバースで登場するんですか?』
『そうだね。俳優の関係で難しかったが君が一人二役に』
『不参加が良いと思います』
いや、好きだけどさレオパルドン。個人的にスパイダーマッはやっぱりあの人が演じて欲しい所ではあるんだ。本人も元気に俳優やってるんだし。
『そうか、残念だ。まぁそれはそれとして早速だが次の映画についてなんだが』
『直球っすね』
『待たせてしまったしね。楽しくお話するのはまた出来るさ!』
そうにこやかに笑いながら、スタンさんは2枚の紙をテーブルの上に置き、俺と本家さんの前に差し出す。
『他の映画との兼ね合いもあるしまだ綺麗に決まってるわけじゃないんだがね。君たちには2パターンの方向性がある。時に……』
その紙に目を通そうとする俺たちを手で制し、ピッと俺の前に置かれた紙の一文を指さして。いつもの笑顔を不敵な笑みに変えながら、スタンさんはこう言った。
『異世界探検に興味はないかい?』