奥多摩個人迷宮+   作:ぱちぱち

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20層まで攻略。普段よりちょっと長くなりました。

誤字修正。244様、kuzuchi様ありがとうございました!


第四十八話 ドラゴンスレイヤー

第四十八話 ドラゴンスレイヤー

 

 

さて、色々大変だったボス部屋を出て19層へ。

となる前に全員でレジストの練習からだ。次の階層に入る前に覚えないとバンシーの相手が辛いからな。

 

 

「バンシーの泣き声は恐らく俺達の精神を直接攻撃してくる魔法か、スキルなんだと思う。だから、レジストはその攻撃から精神を遠ざける、要はバリアーと同じく精神の壁を作って攻撃を妨げたり、弱体化するように【障壁】を作るイメージで使用している。バリアーと似た様なイメージで出来ると思う」

 

「なるほどな。これに属性を混ぜるのか。聖で良いのか?」

 

「ちょっとやってみるね!」

 

 

レジストのイメージはバリアに近く、イメージもしやすかった為か全員がすぐに覚えることが出来た。

だが、もう一つの魔法。リザレクションに関しては難航していた。

 

 

「駄目だな。どうしてもヒールになってしまう」

 

「イメージの仕方がなぁ。復活と言うか復帰させるって考えてみたらどうだ?」

 

「んー、んん?うーぬ」

 

 

沙織ちゃんや真一さんといった今までの魔法は全て見ただけで覚えてこれたセンスの良い人たちでもどうもイメージが沸かないらしく、ヒールが発動してしまうようだ。

俺は一応成功できたが、いつも通り右腕に付与する事しか出来ず乳白色に光る右腕という微妙な見た目の新必殺技(回復呪文)が出来てしまった。

これで殴ると相手は治る。アンデッドには特攻だがな。

 

 

「そういえば、さっきなんか一瞬だけ右腕が変なオーラ出してなかったか?」

 

「ああ、うん。俺もちょっとビビッた」

 

「・・・・・・多分、もののけ姫のアシタカじゃないかな、と思う。邪王炎殺拳の可能性もあるけど」

 

 

眉を寄せて一花がそういうが、確証は無いようだ。

俺も一瞬だったしよくわからなかったが、そう言われてみるとそんな気がしてみたのでちょっと使ってみた。

 

 

「うぉっ」

 

「うわ!」

 

 

ごっそりと魔力を吸われて右腕の周囲に黒い蛇のようなオーラが立ち昇る。それと同時に、体中を全能感の様な心地よさが駆け巡った。

瞬時にバスターに切り替えるが、魔力を吸われすぎたせいか微妙に気だるさが体を襲ってくる。右腕が溶けるほどじゃないが、これは本当に一瞬しか使えないな。

 

 

「これ魔力の消費がやばいわ。多分、そうとう強い腕だけど」

 

「うん・・・・・・感知ですっごい魔力の流れを感じたよ。お兄ちゃん、これ当分っていうかほんとのピンチ以外禁止ね」

 

「おお。頼まれても出来ねぇわ・・・すまん、ここの魔石貰っていいか?」

 

「いいぞ、あまり無理するなよ?」

 

 

足りない分の魔力をバンシーの魔石を使って補う。流石に18層のボスだけあってかなり回復したのを感じる。

 

 

「行けるか?」

 

「大丈夫です。今の・・・呪いの腕を使わなければ問題ありません」

 

「わかった。じゃあ、行こうか!」

 

 

真一さんの号令を受けて俺達は19層へ足を踏み入れた。

19層では予想通りバンシーが雑魚として出てきたが、しっかり対策を取れば怖い相手ではない。

要は初見殺しのような奴だったんだな。その分、恐ろしい位に致死率が高い。

先に俺達が入ってよかった。もし、恭二や俺が居ないパーティーなら恐らくここで全滅していた可能性が高い。

バンシーのドロップは・・・・・・フード付きのマントだ。絶対に着たくない。

 

アウトレンジでの魔法攻撃でどんどん進み。ボス部屋までやってくる。

19層のボスはネクロマンサーに、従者として侍る赤黒い血でペイントされたスケルトン。そしてバンシーと・・・レイスか。

 

 

「9層の奴よりはパワーアップしてると見よう。一気に火力で押し切るぞ!」

 

 

真一さんの号令でボス部屋に突入。

 

 

【ギャアアアアアア!】

 

 

即座にバンシーが金切り声を上げるが・・・よし、レジストできている!

 

 

「フレイムインフェルノ!」

 

「フレイムインフェルノ!」

 

 

状態異常を完全に防げたことを確認し、各自がフレイムインフェルノを放つ。一瞬でボス部屋が炎に包まれた。

悲鳴を上げる事も無くモンスターたちが瞬時に消滅していく。

 

 

「よし。これならやれるな」

 

「20層までの必須魔法になりそうですね」

 

 

レジストの効果の高さに自信がついたのか、真一さんはすぐさま20層への突入を決断。

俺達も異議はなく、そのまま一直線にボス部屋までひた走る。

さっさとダンジョンから出たいという意思が足を速めたのか、程なく俺達は20層のボス部屋へとたどり着いた。

 

 

「うわぁ」

 

「いつか来るかと思ってたがなぁ」

 

 

明らかにドラゴンの体躯をしたゾンビとそれを従えるネクロマンサーのコンビに一花と真一さんが苦笑いを浮かべる。

あいつブレス撃ってくるのかね。肉がぽたぽた腐り落ちてるし骨も見えるんだが。

 

 

「バンシー、レイス、スケルトン。ここまでの総ざらいみたいな編成だな。それにあのネクロマンサーめちゃめちゃ身なりがいいぞ」

 

「全部の指に指輪付けてるし。ネクロマンサーロードって所かな?」

 

 

部屋の手前で作戦会議がてら恭二と一花が雑談を始める。口調は気の抜ける言い方だが、表情は一切笑っていない。

あのドラゴンゾンビが俺達を全滅させうる敵だと認識しているんだろう。

 

 

「よし。全員、ガスマスク着用。腐敗した空気を肺に入れるのはさけよう。リザレクションがあるから大事は無いと思うが」

 

「あ、そういえば使ってなかったね。賛成!」

 

「俺も。すっかり忘れてたわ」

 

 

酸素ボンベを背中に背負い、ガスマスクに付けて外の空気を完全に遮断するタイプのマスクだ。こちらが吐き出す息は逆流防止弁という物を押し出して吐き出すので二酸化炭素が溜まる事もない。

そして全員が念の為にアンチマジック・バリアー・レジストをかけ直して、全員がしっかりシールドと、シールドへのエンチャントも行う。

死なない事を最優先にフォーメーションを組み、俺達はボス部屋に突入した。

 

 

【ギャアアアアアア!】

 

【ゴボゴボ、ゴォォォ!】

 

 

バンシーの金切り声にあわせてドラゴンゾンビが咆哮を上げる。まるで排水溝に水が流れ込む時のような音だ。

真一さんたちの魔法がボス部屋を包み、炎の柱が何本も立ち並ぶ中、ドラゴンゾンビはそんな魔法の嵐を涼風だと言わんばかりに腐りきった口を開く。

白骨化した牙が並ぶあごの奥、喉に蠢く紫色に発光する何かが見えた瞬間、俺はフルチャージしたリザレクションバスターを口の中に叩き込んだ。

 

 

【ゴォォオ!】

 

 

濁流のような悲鳴を上げてのたうつドラゴンゾンビを乳白色の閃光が包む。

恭二のリザレクションだろうそれは一瞬でドラゴンゾンビを灰にしてしまった。

周囲を確認し、もう敵が居ないと見て取った真一さんが手で合図をしてマスクを外す。

 

 

「よし、作戦がバッチリ当たったな!」

 

「一郎、ナイス!良いタイミングだったぜ」!

 

「お前もな。一発で昇天させちまいやがって」

 

「ドラゴンスレイヤーですよ!私達!」

 

「よかったー!何も無くて」

 

「あいつのブレスは食らいたくないからね。ハメ勝ちできてよかったよ」

 

 

口々に喜びの声を上げて、俺達はドラゴンが残した見たことも無いような大きさの魔石と、ドラゴンの骨と牙を拾った。

そして、予想通りに鍵を見つける。

 

 

「やっぱりあったか。なら、この先にあれがあるな」

 

「早く帰りたいよぉ、真一さん!」

 

「本当ですね・・・今日はもう、クタクタです」

 

 

ネクロマンサーのドロップ品と共に落ちていた鍵を拾い、真一さんが奥のほうへ歩いていく。

ネクロマンサーのドロップ品は指輪だった。恭二に収納してもらい、俺達も先に進む。

予想通り先に進む道と鍵のかかった部屋があったのでこれを開けると、20層の転送室があったので早速宝箱タイムだ!

ミギーを使って部屋の外から腕を伸ばして宝箱を開ける。今回も罠は無く、中には人数分の皮袋があった。10枚前後の金貨と何らかの宝石、指輪、そして皮袋をどけると、読めない文字の手紙が置かれていた。

それらを恭二に収納してもらい、俺達は水晶玉に手をかざす。

見慣れた1層の部屋に出た俺達は無言のままダンジョンの外に出て、その場でへたり込んだ。

 

 

「あ、あれ?」

 

 

立とうとしてよろめいた沙織ちゃんを、恭二が支える。

 

 

「・・・・・・し、死ぬかと思った」

 

「うん・・・・・・」

 

 

終わったと認識したとたん体が死の恐怖を思い出したらしい。呆けた表情の沙織ちゃんと一花がそう呟くと、沈黙が場を満たした。

 

 

「今日は、帰ろうか」

 

「・・・そうだな。反省会は明日だ。正直、寝たい」

 

「浩二さんとジュリアには、私から連絡しておきます・・・・・・」

 

 

そう言葉を交わして、俺達は解散する事になった。全ての続きは明日。反省も何もかも先送りにして、俺達は帰路につく。

1人で歩くのも億劫なのか、一花はずっと俺に縋り付いて離れなかったので、俺はそのまま実家まで一花を送って、一花が眠るまで手を握ってやった。

 

 

 




鈴木一郎:結局一花が手を離してくれなくてそのまま雑魚寝。

鈴木一花:一郎の手を握ったまま寝ていた事に気づき赤面。蹴り起こす。

山岸恭二:死にかけるという経験がチートをより進化させる。

山岸真一:人生最大のピンチに何もできなかったという事実と、弟と弟分が自力で立ち上がったと言う事実が心に一筋の傷を作った。

下原沙織:恐怖で眠れなかったため恭二の部屋に突撃。

シャーロット・オガワ:強い酒を呷って体を強制的に休ませる。かなり精神的に着ていた模様。
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