奥多摩個人迷宮+   作:ぱちぱち

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7時丁度間に合わなかった……orz

誤字修正。244様ありがとうございます!


第二百四十一話 合同オフ開始

『なにか面白いことをしないか?』

 

 始まりはあるニンジャコスプレの書き込みからだった。

 

『面白いこと?』

『イベントって事? いいねぇ!』

『具体的な案はあるのでおじゃるか?』

 

 同じ分野で戦う仲間兼商売敵(ライバル)たちが集うチャットは俄に活気づく。トップ不在の中、停滞するダンジョン探索。マンネリ化した配信活動への倦怠が見え隠れしていた界隈に、活気が戻ってきた。

 

『全国のダンジョンを配信冒険者で攻略とかですかね?』

『専業なら兎も角兼業は無理』

『春休みの間なら兎も角、大学が始まるまでには終わらせたいですわ』

 

 次々と出る諸問題。遅々として進まぬ企画。このままでは企画がボツる。集まる面々の脳裏にその言葉が過ぎった、その時。

 

『そうだ、北海道へ行こう』

 

 一人の男の言葉が、決定打となった。

 

 

 

ドドンドン ドドンドン ドドンドン ドドンドン ドドンドン

 

プロジェクトD~冒険者たち~

 

 

 

『かぜのな』

『それ以上はいかんでおじゃ』

 

 

わこつ

麻呂とニンジャの同期タッグか!

わこつ

いかんでしょ

カ○ラックは強敵でしたね・・・・・・

わこつ

 

 

 いきなりマイクを持ったニンジャ風の男を、進行役と書かれた名札を貼り付けた麻呂風の男が押し留める。彼らの前に若干遅れて【一条麻呂】と【みちのくニンジャ】と書かれたテロップが現れる。それに合わせるかのように周囲を囲むスタッフから漏れる失笑の声にニンジャ風の男が頭をかきながら浮かした腰を椅子に下ろした。

 

 そんな彼らの様子に合わせるように画面を流れていく文章、メッセージ。配信が始まった瞬間から流れるその文章を机に備え付けられた画面で見ながら、一条麻呂が口を開く。

 

『乙ありでおじゃ。一条三位のそっくりさん事一条麻呂、今回は総司会を担当させて頂いておじゃる。しかしスマイル動画での配信は久しぶりでおじゃるな』

『みちのくダンジョンに潜む影、みちのくニンジャだヨロシクな! メッセージが流れてくんだよな、俺は初経験だが面白いんじゃないか!』

『今回は幾つかの動画配信サイトからも生中継されておじゃ。協会の広報さん、本当にお疲れ様です』

 

 一瞬素に戻って軽く頭を下げた麻呂に、少しの間の後【ええんやで(にっこり)】と画面にテロップが表示される。

 

 

そしてこのノリである

さすが冒険者協会そこに痺れる、憧ry

それで良いのか冒険者協会!

 

 

『世界一動画配信に力を入れている協会でおじゃるからな』

『前例が凄いからなぁ、っと。ダベるのはこの後幾らでも出来るからな。今は先に、そろそろ紹介して欲しそうな連中にカメラを渡すぜ!』

 

 メッセージに返事を返す麻呂と相づちを打つニンジャの前に、催促するかのように【巻きで】と書かれたテロップが表示される。

 

 そのテロップに対してまたメッセージが荒ぶるも、苦笑を浮かべながらニンジャがそう続けると画面がぱっと切り替わる。

 

『そのノリで渡されてもちょっと……あ、痩せぎす太郎です。よろしく』

『かーっ! 痩せすぎ君は硬いなぁ! うなる魂仮面が光る! エセライダー惨状!』

『……皆様ごきげんよう。ダンジョンに咲く漆黒の薔薇、ダンジョン・プリンセスですわ』

『あの、僕今は痩せぎす太郎でして……』

 

 2カメと右下に書かれた画面には【痩せぎす太郎】と書かれた細身の青年とパチもののライダーマスクを被った【エセライダー】、そしてドレスに身を包んだ少女【ダンジョン・プリンセス】の3名が現れ、それぞれ発言をした後にまた画面が切り替わり次の配信者に、そちらの紹介も終わるとまた次の画面へと変わっていき、10名の参加者が名乗りを終えた所で画面が再び麻呂とニンジャの映る1カメに戻ってくる。

 

 

ダンプちゃん! ゲロインダンプちゃんじゃないか!

京都からはエセライダーが参加か

忠猫ポチ公ちゃんは不参加か

くノ一さんとニンジャが遂に出会うのか・・・・・・

ダンプちゃん早速顔色悪い、悪くない?

ポチ公ちゃんはアカンでしょ(年齢)

タカバット! お前は博多の誇りバイ!

あの、そろそろ痩せぎす太郎くんについてもふれてあげてください

 

 

 自らの推し配信者が居る、居ないという話題でコメント欄がざわめく中、画面を眺めた麻呂は小さく頷いて口上をあげはじめる。

 

『さて、各人の紹介も終わった所で』

『麻呂さん、もっと喋らせて~!』

『黙りゃ! 先程から巻いてコールがバンバンこっちに来てるでおじゃ!』

 

 参加者の一人の言葉を切って捨てる麻呂。そのやり取りに再び室内が笑いに包まれる中、麻呂は今回の企画について話し始めた。

 

『それではこれより『冒険者協会主催! 配信冒険者集合オフ』を始めるでおじゃ。今回の企画内容は……』

 

 そこで麻呂が言葉を切ると、カメラの映像が途切れパワーポイントのような資料作成ソフトで作ったのだろう【ダンジョン配信ぶらり旅~北海道はでっかいどう~】と書かれたスライド画面が現れる。

 

 

なぜそこでダジャレなのか

コレガワカラナイ

 

 

『その辺は初っ端プロ○ェクトXパロの段階でお察しでおじゃるな』

『TVとかでたまにやってる車の中やバイクにカメラつけて旅する奴だな! あれを夕張ダンジョンまでやるわけだ』

『勿論麻呂たちは冒険者じゃからの。到着後はこのメンバーで一潜りするでおじゃるが……まぁたまにはダンジョン外部でのオフも、という企画でおじゃる』

 

 麻呂とニンジャの言葉に合わせて、画面は再び彼らを移す1カメ映像に切り替わる。

 

え、どっから夕張まで行くん?

仙台からでも日をまたぎそうなんですがそれは

24時間耐久配信かな?

生放送耐久配信か……ふふっ怖い()

 

 麻呂達の話すスケジュールに戦々恐々とした様子で流れていくメッセージ。それらを見ながら、口元に悪い笑みを浮かべて麻呂は言葉を続けた。

 

『勿論耐久配信でおじゃ』

 

 

ですよねー

ですよねー

試されているのは俺達だった?

ですよねー

ですよねー

冒険者の体力を基準にするのいくない

ですよねー

 

 

『ひょひょひょ。それでは早速、我らが数日お世話になるマスィーンの元へ移動するでおじゃ』

『免許を持ってないメンバーの為にバイク4、車2の編成だぜ! なんでお前が持ってないんだエセライダー……』

『フヒヒ、サーセン! マイマシンはバイシクルでして』

 

 ガヤガヤと席を立ち移動を始める参加者たちの中、ツッコミを入れられた仮面の男に一瞬スポットが向き、【なんでやねん】とテロップがつけられる。

 

 数分程度の移動時間だが、狭い廊下を歩いていくという事もあり1カメにほぼ全員が映り込む状況。各々がそれぞれ僅かな隙間にアピールをしようと麻呂やニンジャに絡んでいく中、先程から言葉少なだったダンジョン・プリンセスと元々アピールが苦手な痩せぎす太郎はどんどん先行していき、やがて駐車場のドアの中へ消えていった。

 

 その姿に麻呂やニンジャ、それに目ざとい配信者は違和感を持っていたが、たった十数秒の差でありただ先に歩いていっただけ。声を上げることもない、と彼らの後に続き駐車場のドアを開け――

 

『ごめん、麻呂おじさん』

『ひょ? ひょ…………なんで?』

 

 ドアを開けてすぐ目に入った光景。ドア脇でぷるぷると震えながらそう言うダンプの声も耳に届かず、思わず素の声でそう尋ねる麻呂の姿を映し、慌てたようにカメラが急旋回される。

 

 急な画面回転に視聴者達が阿鼻叫喚の声を上げ。

 

『ども、皆さん。今日はよろしくおねがいします』

『片道だけどね!』

『俺達も一応配信者やけん』

 

 

くぁwせdrftgyふじこlp

なんで?

くぁwせdrftgyふじこlp

くぁwせdrftgyふじこlp

ヒョエー

麻呂が戻ってこないぞwww

イッチだあああああああ

くぁwせdrftgyふじこlp

昭夫ライダーフル装備じゃねーかw

 

 

 スペシャルゲストと手書きで書かれた手看板を持った鈴木兄妹と昭夫の姿に、参加者と視聴者。そしてスマイル動画のサーバーは絶叫する事になった。


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