『いやー、壮観だねぇ』
『全くでおじゃるなぁ。所でマスター、何故この車に』
『やー、一番事故ってそうだったからさ! 内部的な意味で!』
『アリガトゴザイマシュ』
『タスカリマシタ』
大音量でBGMを流しながら目の前を横切るバイクの姿にんふーっと満足げなため息をもらす一花と、それに答えて相槌を打つ一条麻呂。死屍累々のダンプとエセライダーをアクセントに1カメが設置された車両では、二人の軽快な会話とお茶目な舌戦が繰り広げられていた。
『いやーでも今回はホントいい企画だと思うよ! 日本の技術力を世界に示すって意味でもさ!』
『で、おじゃるな。麻呂達も画面ごしでしか見たことが無かった故、良い機会でおじゃった』
『まさかこの目で拝める日が来るとは思わんかったすねー』
『『『『発明王ヤマザキのパッソル改』』』』
紹介テロップと共に画面が各自のバイクに備え付けられたカメラの画像が表示される。ヘルメットの上に金メッキの王冠を取り付け、小さなマントをなびかせる人物、発明王ヤマザキはバイク横に取り付けられたラジカセから<ヤマザキ一番!>をエンドレス再生させながら、1カメ車と2カメ車の周りをグルグルと回っている。
『い、イチロー先輩のライダーマンマシン2号が私は良いかなぁって』
『いや、そりゃイッチのライダーマンマシン2号と昭夫スペシャルが並んで走ってるのは特撮ファンとしてはもうご飯3杯はイケる組み合わせですがね!? あの軽車両に異常にデカい魔力エンジンのフォルムはちょっとこれ見とかなきゃいかんでしょっていうか! まさに魔法大国ニッポンというかね!?』
『まー言いたいことはわかるかな! それにあの人、どのカメラでも<ヤマザキ一番!>がBGMになるよう狙って走ってるよね! 若干洗脳されそうかな!』
『涙ぐましいを通り越して狂気すら感じるでおじゃ』
【愛なら仕方ない】と流れるテロップと共に画面が切り替わる。今度はみちのくニンジャの運転する2号車――ではなく。全体の映像が撮影できるように用意されたスタッフがカメラを持つ先頭車両からの映像である。
『あら。全体画像に切り替わりましたわ』
『という事は、会話はこっちか』
『あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!! テメェヤマザキぃ!! 昭夫ライダーとイッチの2ショットが!!! 見えんちゃろうがっ!!』
『落ち着けタカバット!』
『荒ぶられてますねぇ。あら、現場犬さんが手を振ってきてますわ』
ただしこの車両には配信冒険者は乗り込んでいない。この為、会話は画面右下に用意されたサブカメ映像に映し出された車両の物が使われ、今回は2号車の会話を耳にしながらの全体映像になる。
『テロップさんキレッキレだな!』
『今も入っとーとよ』
『その、お恥ずかしい画像は見せないよう、その……』
流れるテロップとコメント欄に配信冒険者達が三者三様の反応を見せる中、「おっ」とみちのくニンジャが声を上げる。鈴木一郎と昭夫、それにバイク組の配信冒険者、現場犬とロッカー劇女が戯れるようにバイクを走らせるツーリング映像が切り替わり、2カメ映像がメインになった為だ。
『最初のSAについたみたいだな!』
『意外と早かとね』
『まだ東京を出てすぐのような気がします』
『体感時間だと数十分だったな。実は1時間以上経ってたんだが! ああ、視聴者の皆に報告だ。SAではドライバーの変更が行われるぞ。出来る限り色々な組み合わせの会話が見れるよう工夫したつもりだ!』
『エセライダーさん以外は、ですけどね』
『……なんであいつバイク免許持ってないんだろうな』
『……次のSAでは車組とバイク組で車両を交換する予定だったんだが、実は誰がどのバイクに乗るかは決まっていないんだよな』
流れるコメント欄がイッチや昭夫君の色に染め上がる中。ハンドルを握るみちのくニンジャは、SAに消えていく先頭車両を見ながらボソリ、と呟いた一言に、車内とコメント欄の空気が凍り付く。
『……え、ほんなこつ?』
『それは……その。大丈夫なんですか?』
『最初は大丈夫だと思ってたんだけどな』
戦争だよなぁ、とSAに入っていく鈴木一郎を見ながら呟かれたみちのくニンジャの一言に、くの一とタカバットは小さく頷きを返した。
次回、戦争勃発。デュエルスタンバイ!