奥多摩個人迷宮+   作:ぱちぱち

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誤字修正。ルナリア様ありがとうございます!


第二百五十八話 見た目に問題のあるボス戦

「あれは犯罪だな」

「あれは犯罪だね!」

『あれは犯罪だ』

「蜘蛛らしさを感じますよ!」

「やっかましいわ!!!」

 

 口々に好き勝手な事を言うヤマギシチームの面々に怒声で返し、森の中に蜘蛛の巣トラップを張り巡らせる。妖精や悪妖精は人間を探知するとワラワラと集まってくるからな。そいつらが一定範囲に近づけないよう、ウェブを使って森の中に蜘蛛の巣を設置しているのだ。

 

 効果は上々。蜘蛛の糸越しの振動でどんどん妖精たちが蜘蛛の巣にダイブしているのが感じられる。発見したボスの周囲はただの広場だからな。連中が突っ込んでくるとめんどくさい事になりそうだったし、個人的には良い判断だと思う。

 

「とはいえ絵面がヤバすぎるからね!」

「悪の方はともかく、普通の妖精はサイズの小さな少年少女にしか見えんからなぁ……」

 

 しかもどいつも美形の、が頭につく。そんな容姿の存在が蜘蛛の巣に絡め取られる姿はこう、なんというかヤバい。無言でその姿を撮影し続けるシャーリーさんもヤバい。真顔がこんなに怖いと思ったことは初めてだ。

 

 まぁ、姿がどうあれモンスター。あいつらがちょっかいをかけてくる可能性を考えるとこのトラップを設置しない選択肢はないんだが。

 

「で、肝心の相手はアレか」

「うーん、これまでとはまた別の意味で犯罪チック」

「やりにくい外見だなぁ」

 

 そう言って恭二が視線を向けた先にいる、おそらくこの階層のボスだろう存在。ボス部屋だろう開けた広場の中央で、ふわふわと小さな妖精に囲まれながらキャッキャと笑う幼児の姿に、男二人が並んでげんなりとした表情を浮かべる。

 

 サイズが大きいせいでどっからどう見ても羽の生えた幼児にしか見えない。あれを喜んで攻撃できる奴はどっかおかしいだろう。

 

 

 

「でっかい妖精だし大妖精って名付けようか」

「おい馬鹿やめろ」

 

 軽口を叩きあい、恭二と二人で広場に足を踏み入れる。その瞬間、こちらに視線を向けるボス、仮称デカ妖精に向かって、牽制のウェブ連射を放つ。

 

 牽制とは言え決まれば動きをほぼ封じられるし、こいつで決まってほしいのだが。

 

【キャハッ♪】

 

 そいつはやっぱり砂糖水のように甘かった!

 

 巻き起こる暴風。周囲の妖精たちすら巻き込んだそれに散らされるウェブ。その暴風は竜巻の形に纏まり、ポイっと投げつけるようなデカ妖精の動作と共にまっすぐ俺と恭二、そしてその背後にいる仲間たちに向かって放たれる。

 

「キョジさん、いきます!」

「了解!」

「【フレイムインフェルノ!】」

 

 その竜巻に対処しようと身構えた恭二に、背後からかかる声。前衛二人を補佐するために中衛に回っていたベンさんが、魔法を発動させる。

 

 一定範囲内を炎の柱で焼き尽くすフレイムインフェルノは竜巻を真っ向から迎え撃ち、暴風に散らされながらも壁となり、数瞬後に竜巻を巻き込んで消滅する。

 

 範囲外にはほぼ影響が出ない魔法だと思っていたが、なるほど。そういう使い方もできるのか。

 

「ナイスベン! 【サンダーボルト!】」

「いっくよー!」

「【サンダーボルト!】」

 

 竜巻と炎のぶつかり合いが終わり、それを避けた俺と恭二が左右に散会した後。開けた射線に、沙織ちゃん、シャーリーさん、浩二さんの後衛3名による雷撃3連弾が放たれる。

 

 サンダーボルトは威力もあり、射程も長く、その上効果範囲が直線に限定される。援護射撃には最適の魔法である。

 

【ブー!】

 

 しかし、対魔法障壁とでも言うのか。魔法が直撃した瞬間、デカ妖精の周囲を淡い光の膜が包みこむ。こっちが使うアンチマジックと同じようなものだろう。

 

 と、いうことはだ。

 

「恭二」

「あいよ」

「決めちまうぞ?」

「構わんよ」

 

 直接攻撃、つまり物理以外は通りが悪い、と。さっきの暴風を思い返すにロケラン祭りも弾かれそうだし、近づきすぎても風にやられかねない。

 

 このレベルのモンスターに普通の銃器が通るかも分からない。それこそ対物ライフルレベルを持ってこないといけないかもしれないし、流石に今回の冒険でそこまでの装備は恭二のアイテムボックスにも入っていない。

 

 物質化した魔力が通るか分からん以上、ミギーやシェルブリットといった俺の変身も効果があるかは分からない。何より初見だ、ある程度の情報を抜く必要はあれどあまり長引かせたくはない。

 

 まぁ、あの暴風は見れたし今回は十分だろう。

 

「つまり」

 

 スパイディからの変更。髪の色が金から茶色に変わり、ぶわり、と音を立てて髪が伸びていくのを感じながら足を止める。ポケットに入れいていた魔鉄製のコインを取り出し、右手でピンと弾く。

 

 全身から迸る電流を右腕に集め、電磁のレールを作り出し――真っ直ぐ標的に銃口(右手)を向ける。

 

【アイー!】

超電磁砲(コイツ)の出番ってわけね」

 

 まずいと感じたのか。俺に向かって再び暴風を放とうとするデカ妖精にニヤリと笑顔を向け、俺はそう口にする。

 

 落ちてくるコインが電磁のレールに落ち、急激に加速。超高速でデカ妖精に向かって放たれたコインは与えられた空気抵抗による熱により発光しながら飛び、暴風を突き破りデカ妖精の体の中央から上を吹き飛ばす。

 

 背後から起きる歓声の声。ピュー、と恭二が下手くそな口笛を吹いたので、へらへらと笑顔でサムズアップを向けておく。

 

 魔鉄のコインはよく魔力を通す。通常の金属製のコインよりも持ちも良いし、こういう物理弱点みたいな奴にはやっぱりこれが一番だろう。

 

「お兄ちゃん!」

「ん?」

 

 とりあえずこの階層の特徴である妖精の群れとセットでこいつの暴風を食らうとまずいなぁ、と次回以降の攻略方法を考えていると、背後から一花に呼びかけられたので振り返ると。

 

「……ヨシッ」

「ヨシじゃないが」

 

 いつの間にか近くまで来ていた一花が、俺の胸元に視線を向けて一言。大きく頷きながらそう口にした。

 

 性別までは変わってないぞ? いや、本当に。

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