奥多摩個人迷宮+   作:ぱちぱち

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遅くなって申し訳ありません。
時間が取れ次第その他作品も更新していきます!

誤字修正。灰汁人様、Hanna様ありがとうございます!


第二百五十九話 遠距離物理はやっぱり強い

 結論から言うと、こいつは(デカ妖精)準備さえしっかりしてればそれほど強い相手じゃない。

 

ドンッ!

 

『YEAH!』

「おー、ナイスショット」

「お兄ちゃん、こういう場合はビューティフォー! だよ!」

「HAHAHA! 久しぶりですが鈍ってなくて良かったデース!」

 

 恭二の収納から取り出した大型ライフルを手に、射手を務めたベンさんが得意げに鼻頭を指でこする。

 

 広場の手前。デカ妖精の感知範囲外の木々を伐採し、丁度いい大きさの切り株に二脚を乗せて固定させたライフル銃が吐き出した弾丸は、デカ妖精の胴体中央を撃ち抜き消滅させた。

 

 対物ライフルだかなんだかいう名前の筈だがすごい威力だ。確かゴーレムにも効果がある奴だったか

 

「耐久力は無さそうですね」

「近づいて斬れれば手っ取り早そうだけどなぁ」

 

 遠目でその光景を眺めながらシャーリーさんがそう感想を述べると、不承不承とした様子で恭二が首を縦に振る。モンスターが寄ってくるから恭二は銃とか騒々しい装備が嫌いなんだよな。

 

 まぁ、今現在は対策を……森中に張り巡らせている蜘蛛の巣を対策と読んで良いのか分からんが行っているから、その問題点はなんとかなる。

 

「お兄ちゃんが居ればって条件付きならものすごく楽な階層だね! ね、お姉ちゃん!」

「性別は変わってないって言ってるだろうが!!」

「その条件、満たせるのヤマギシチームだけなんですがねぇ」

「他のチームだとちょっと危なすぎるな。準備してる間に妖精や悪妖精に纏わりつかれて邪魔される」

 

 隙き有らば胸元をペシペシと叩く妹の頭をはたき、一花のお守りをしてくれていた御神苗さんと言葉を交わす。個人としては一つ前の木人階層に比べたら大分楽に感じるんだが、あくまでそれはウェブを際限なく張り巡らせることが出来るからの話。

 

 他の変身でこの階層を抜けるとなると、それこそ森を焼き払って「妖精は消毒だァ~!」スタイルで行くか、森の上を飛んで妖精を無視してデカ妖精に速攻をかけるか。まぁまともな攻略法と呼べるものは思いつかない。

 

「アンチマジックでゴリ押しもあると思うけど、それはそれでいつ効果が切れるかわかんないし怖いよね!」

「かけ直す前に魔法連打食らったら流石に死人が出るだろうからなぁ」

「所で名前は御坂真琴がいいと思わない?」

「……」

「いでででで!!」

 

 両手を固く握りしめ、妹の頭を万力のようにグリグリと押さえつける。某国民的アニメでおなじみのグリグリこうげき。やらかした悪ガキへの最終手段に俺は手を出した。

 

 御坂美琴への変身後からやたらとテンションが上がってる一花も、頭に衝撃を加えれば収まるだろう。収まってくれ。

 

「良いじゃねぇか別に性別の一つや二つ。減るもんじゃなし」

「減るわ! 尊厳とか色々な物が減るわ!!!」

 

 ゲラゲラと笑う恭二にそう怒鳴り返しておく。恭二の右手には先程のデカ妖精がつけていた大きな羽のような飾りがあった。どうやらドロップ品を回収してきたらしい。

 

 あのデカ妖精を最初に倒してからリポップするまでが約6時間。恭二の収納からキャンピングカーや撮影器具を取り出し、広場の様子を撮影していたシャーリーさん達も機材の片付けを始めている。

 

 今回の冒険はここまで、か。いや、一応38層はチラ見していくって言ってたしそれが終わったら撤収かな?

 

「ま、焦らず行こうぜ」

「お前の口からそんな言葉が出るとはなぁ」

 

 デカ妖精の居た辺り。地下へと続く階段がある広場を眺めていると、キャンピングカーや機材を収納しながら恭二がそう声をかけてくる。

 

 居られるならずっとダンジョンに居たがるコイツが珍しいことを言うもんだ。

 

「38層。何が居ると思う?」

「木人、妖精と来たし次は獣とか?」

「ありえる。デッカイ剣咥えた狼とか」

「やっべめちゃ見たい」

 

 そう口にし合った後、ケラケラと笑い合い。すぅっと恭二の顔から笑顔が消える。

 

「36層からこっち。今までとパターンが変わったのは気づいてるか?」

「今まではその階のボスが次のエリアの雑魚って感じだったな」

「ああ。それが木人以降はそのエリアの雑魚の強化版みたいな奴がボスになってる」

 

 大木人にデカ妖精。ステルスもクソもなかった大木人は兎も角、デカ妖精は単純に大きさを増しただけじゃなく、明らかに強力な魔法を使うようになっていた。あの強風はアンチマジックで弾けるか試す気にもならないレベルの魔法だ。

 

 次の階層。森エリアが続くようなおそらくそこも森を連想させるモンスターだろう。森の魔物と言えば後は獣系統と、キノコのバケモノなんかも考えられる。木人が居た以上、草花の魔物ってのもありえるだろう。

 

「あとは虫」

「ああ、そういえば虫も見たことなかったな」

「それにドラゴン」

「ドラゴン、それも……」

 

 うんうん、と頷きを返そうとして、言葉に詰まり恭二に視線を向ける。恭二の顔に笑顔はない。

 

「……あり得るのか?」

「もう一度対戦しただろう。20層がドラゴンゾンビだったんだ。なら、40層は。そう考えてもおかしくはないだろ」

 

 そう語る恭二の表情は真剣で、あり得ると考えてこの話を俺に振ってきているのがよく分かる。そうだ。ドラゴンゾンビはすでに倒している。すでに俺たちは、死して躯となっていたとはいえドラゴンと戦っているのだ。

 

「……死んで操られていた奴であんだけ圧力を感じたんだ。弱点をついてあの時は圧勝できたが、生きていて聖属性みたいなわかりやすい弱点のないドラゴンが相手ならどうなる?」

「ロケラン祭り……も効果があるか分からんしなぁ」

「こっから先は常に万全の状態で行きたい。38層のチェックは最低限。作戦はいのちだいじに、で」

「りょーかい」

 

 恭二の差し出した右手に左手をこつん、とぶつけて恭二の言葉に頷きを返す。

 

 命がけの冒険ってのは本当に必要な時に必要なだけ行うべきだ。そして、今はそのタイミングじゃない。その見解は、俺も恭二も一致している。

 

 まずは38層の調査。今日は軽く見て回って、明日以降はその傾向のチェックと行こう。

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