奥多摩個人迷宮+   作:ぱちぱち

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遅くなってすみません!

誤字修正。244様、shark様ありがとうございます!


第二百六十話 バーベキュー

「肉を食べる時はね、誰にも邪魔されず自由で……なんというか、救われてなきゃあダメなんだ。独りで静かで豊かで……」

「五郎ちゃん乙」

「次のお肉、焼けましたよー」

 

 つい口から出てしまった迷言に一花からの一言が入るが、そんな事気にもならないほどにこのお肉は美味い。確かカビか何かを使って濃厚熟成させた赤身肉だったか。霜降りとはまた違った趣でこれもまたヨシ!

 

 俺たちが居を構えるヤマギシビルからほど近く。奥多摩キャンプ場と捻りのない名前のキャンプ場の一角で、ミディアムに焼かれたお肉を頬張る。これぞ至福。なぜ肉はこれほどまでに俺たちの心を捉えるのか。

 

 打ち上げに行こう、という話に迷わずバーベキューと叫んだ一時間前の俺、よくやった!

 

「多分これ、世界一高級なバーベキューだよねぇ」

「ああ……この肉にはそれだけの価値がある」

「いや、このお肉も高いけど燃料がね。魔樹って今、時価じゃん?」

「あんなに景気よく燃やして良いんですかねぇ、お嬢さん」

「うん、気にしないでいいよ! 供給元はウチだからね!」

 

 調理を担当してくれているキャンプ場の管理人さん夫婦の奥さんが、恐る恐るといった具合に一花にそう声をかけてくる。英国の方がどうなってるかは分からんが、あっちから魔樹が市場に供給されたって話も聞かない。ウチがつけた値段がこの魔樹の値段になる状態だな。

 

 まぁそこまで詳しい話をしたら更に管理人さん達を萎縮させてしまう。一花もそのへん分かっているのか、それ以上詳しい話はせずに親指を立てて「ダイジョブダイジョブ、イチカをシンジテー」と笑いかけた。

 

 それ全然大丈夫そうじゃないんだが、長年の付き合いからか笑って流してくれた奥さんマジ奥さん。

 

「ここでバーベキューしてると、なんだか昔を思い出すな」

「夏休みの度に半分は手伝いに駆り出されてたからねぇ!」

「自分が持ち込んだテントの設営くらい覚えてこいや! ってお客さんにどうオブラートに伝えるか頭を捻ったなぁ」

「説明書も持ってきてない奴困ったよねぇ」

 

 ヤマギシに就職する際、確か土地もろともヤマギシに売却したんだったか。中学生の頃は、将来はこのキャンプ場を継ぐかじいちゃんのように猟師になるか。自分の将来はどっちかになると思ってたんだが。

 

 気づいたらなんか変なことになってるな。俺の人生。まぁ楽しいことは間違いないんだが。

 

「ヘイ一郎! あっちで御神苗さんがマニーさん達の飲み比べに巻き込まれてるぜ!」

「マジで!? 絶対近づかねー!」

「「HAHAHAHAHA!!!」」

「笑う要素どこ……? ここ……?」

 

 妹よ。そこは俺の胸板だ。というか今はライダーマンモードなんだから胸に変化があるわけがないんだが。つんつん突くのは止めなさい。兄妹でもセクハラは適用されるんだぞ? 知らんけど。

 

「きょーちゃん、なんだか懐かしいね! ここでみんなでワイワイしてると子供の頃みたい!」

「鈴木のおじさん、手伝ったらお駄賃くれたからなぁ。それでウチのコンビニでアイス買って家計に貢献してたんだ。懐かしい」

「私が言いたいのはそんな世知辛いことじゃないよぉ」

 

 しみじみとした恭二の言葉に沙織ちゃんがブー、と口を膨らませる。ウチからも恭二の家からもいい距離でそこそこの広さがあるこのキャンプ場は、良い遊び場だったんだ。

 

 沙織ちゃんとしてはその辺りの過去の思い出に話を咲かせたかったんだろうが、そういう情緒を恭二に求めるのは難問にすぎるだろう。

 

「しかしまぁ、あれだな」

「あん?」

「ほら。木、妖精と来て何が来るかと身構えてたら」

「……ああ」

 

 肉に齧り付くことしばし。唐突に話を切り出してきた恭二の言葉に38層の様子を思い返し、うん、と一つ頷きを返す。

 

「妖精とは別の意味でやりづらいよな」

「やりづらい」

「肌の色が緑じゃなくて色んな所が葉っぱで隠れてなかったらヤバいよな」

「ヤバい」

 

 ぽわんぽわんと頭に思い浮かぶその光景に、男二人が思わず箸を止める。あれはヤバかった。作品の年齢制限がR指定になっちゃいそうなノリだった。

 

「もー! きょーちゃんったら!」

「男は悲しいのう、悲しいのう!」

「いてっ」

「いやあれは仕方ないだろう」

 

 更にブー垂れる幼馴染の怒りの矛先を恭二に任せて、ニヤニヤ笑う妹の言葉にそう返す。

 

 38層。出現したモンスター。とりあえずの仮称として恭二が名付けたのは「アルラウネ」。緑の肌をした少女……女草?である。

 

 獣か虫が来ると思ってた所に再びの植物系モンスターの登場に恭二と二人で「そうきたかー」と頷き合い。わさわさと根っこの生えた足を動かしながらこちらに向かってくる彼女たちの姿と、色々危ない葉っぱの動きに「そうなるかー」と、今度は一花も混ざって口にして、その場での即撤退を決め込んだ。

 

 ……一当てくらいはしとくべきだったかもしれんけど、それやると沙織ちゃんの機嫌がもっと悪くなったろうしなぁ。沙織ちゃん、彼女たち見た瞬間恭二の目を押さえに行ったから。

 

 目を押さえる沙織ちゃん背負ったまま恭二が階段駆け上ってたのは正直面白かった。また38層に潜る時は是非このPTでやりたいね(愉悦)。

 

「次回のアタックの時は連中の脅威度を図るのと、問題なければボスまで見に行こうか」

「ボス……か」

 

 沙織ちゃんを宥めながらそう口にする恭二の言葉に、ふむ、と頷きながらふと思った事を口にする。

 

「デカイのかな」

「デカイだろう」

 

 36層からの流れ的にはそうなるはずなんだが。何がデカイとは言わず、俺と恭二は二人頷きあった。

 

 勿論沙織ちゃんは不機嫌になったし一花は爆笑した。解せぬ。

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