奥多摩個人迷宮+   作:ぱちぱち

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遅くなって申し訳ありません!

誤字修正、244様、kuzuchi様ありがとうございます!


第二百六十一話 テレビ会議

 ヤマギシ本社内に複数存在する会議室。その中でも冒険者部門が存在する階層の会議室は、全ての座席に固定型のPCとカメラ、マイクが設置されている。

 

 冒険者部門のトップである山岸恭二、彼の上役であり冒険者部門の総取締を行っている山岸真一、実質的な冒険者の顔とも言える鈴木一郎のスリートップが海外に出ることが多く、彼らが出先でも会議に参加できるようにデザインされているからだ。

 

『報告は受け取った。参加者である冒険者部門の全職員は臨時ボーナスに期待してほしい』

「『「「イェアァ!!!」」』」

 

 例えばこのように、フランスに出張中の真一に先の深層攻略についての報告を行ったり――

 

『そして合わせて追加オーダーだ。需要に供給が全く足りてない。どんどん魔樹を取ってきてくれ』

「『「「Oh......」」』」

 

 合わせてお仕事をぶん投げられたりもする。会社勤めは世知辛いなぁ!

 

「兄貴。イギリスの方はやっぱり難しそうなのか?」

『難しいだろうな。あそこまで潜れる人間は限られているし、うちもお前の収納がなければこれだけの数は持ち出せん。ああ、炭になった魔樹ならそこそこ持ち出してるそうだが』

 

 森までついたらファイヤーしてるんですね、わかります。

 

 実際木人や妖精相手の場合、火炎放射器で一斉に燃やしまくって森を進むのが一番簡単で確実な攻略法だからな。木人のドロップは炭だけになるし、妖精相手だと視覚的な問題で厳しいけど。

 

 森で木人を見極めてそれ以外を木こりするのは、正直恭二の目がないと厳しいしそれを持ち帰るにも恭二の収納が必要。ゴーレムの時みたいに車で移動して車に載せて帰りはエレベーターってのも難しいしな。階層的に。

 

『という訳で実質的に魔樹を安定供給できるのはウチだけだ。喜べ恭二、世界冒険者協会直々に暫く専念してくれって連絡が来てる。これで諸外国めぐりは一旦ストップだ』

「全然うれしくないんだが???」

「……お、おめでとう」

「肩震わせながら言われても嬉しくないぞ?」

 

 親指を立てて祝いの言葉をかけるも、恭二の心には届かないようだ。こんなにも真心でおめでとうと言っているのに、解せぬ。

 

「イチローさんにもご依頼がありますよ。次の映画の番宣が何本か」

「38層の攻略は色々問題がありそうだしな。俺も本腰を入れないと」

「間に合ってるからしっかり番宣してきてくれ!」

 

 にやにやといい気分だった所にシャーリーさんからの冷水。テメェ恭二! さっきお祝いしてやった恩を忘れやがって!

 

「お兄ちゃんが嫌がるなら本数を減らせるかもだけど! 流石に主演作の宣伝はしっかりしないといけないんじゃないかな!」

「一花、お前もか!」

 

 ついに妹にまで裏切られた鬱だ、とムンクの叫びを体現していると、コホン、と画面越しに真一さんが咳払いを一つ。

 

『久しぶりの漫才も見てて楽しいんだが、こっちも時間が押してるんでな』

「すんませんっした!」

「罰はこのアホにオナシャス!」

『お前ら日本に帰ったら説教な』

 

 久しぶりに見る凄惨な笑顔を浮かべて真一さんとの通信がOFFになる。会議前から長い時間は難しい、と言ってたし本当に忙しいのだろう。

 

「土下座何発で許してもらえるかなぁ」

「やらなきゃ良いのに毎回この駄兄どもは……」

 

 最後の笑顔に戦々恐々としながら呟くと、一花がハァッ、とため息をつく。とはいえ恭二とのやり取りはなんというかライフワークみたいなものだから早々変えるのも難しいんだよな。

 

 さて。真一さんが通信を切った事で会議の進行はシャーリーさんが行い始める。ここまでの会議では基本的に真一さんの都合に合わせて、現状報告と真一さんからの指示を受けるだけだったからな。

 

 むしろここからが本格的なヤマギシ冒険者部の会議と言えるんだが……

 

「それでは次の議題は魔樹伐採のローテーションですが――」

「魔樹を利用しタ新装備案が出てマス。広く意見ヲ取り入れるタメにツブヤイターや顔本で募集してミタところ、予想よりも良い案ガ集まって来ましタ」

「日本各地へのヤマギシ支社の進出は順調です。各ダンジョンオーナーとも懇意に出来たのがやはり大きく――」

「世界冒険者協会からも魔樹の輸出について問い合わせ来てるんでしょ? とりあえず一週間は伐採をしてみて、伐採量の平均値を作ろうよ! それ投げたらケイティならうまくやるでしょ!」

 

 名目上のトップである恭二、一応副部長なる役職の俺、部長補佐の沙織ちゃんに彼らの会話に入り込める訳もなく。肩書上は上に連なる3名が置物となり、ヤマギシ頭脳班が主導となって会議は進み、そして終わっていく。

 

 上司は責任を取るのが仕事だからね! 仕方ないね!

 

「シャーリーさんもベンさんも別部門の長なんだけどね! ついでにお兄ちゃんは子会社の社長だったよね!!」

「やめろください」

 

 警備会社の方の会議だと、置物通り越して完全なお飾り状態なんだ。思い出させるな恥ずかしい(ガチ)。

 

 流石にある程度実務も知らんとなぁ、とベンさんには折を見てどういう仕事をすれば良いのか尋ねたりしているんだが……

 

「イチローさんが社長ってダケで信頼はバツグンデスヨ!」

 

 というベンさんの言葉とサムズアップで毎回「あ、うん」とすごすご社長用の椅子に座り直すことになるんだ。有名人が経営者ってお店とかよくテレビで見るけど、だいたいこんな感じなんだろうか。

 

「有名人といえばお兄ちゃん、番宣でさ! 珍しくバラエティ番組の依頼があるんだけどさ! メンバーに面白い人が居るよ!」

「え……バラエティとか出たくな」

「ほらコレ!」

 

 仕事をしたくないでゴザる、と口に出す前に勘のいい妹のインターセプトが俺に襲いかかる。なんて妹だ、これは訴訟も辞さない。

 

 まぁ目の前に出された以上は読むけどバラエティなんてどれも……と思いながらも書類の内容に目を通し――

 

「これは出るっきゃねぇわ」

「なにぃ!?」

「い、一郎くんがバラエティに!!」

 

 即落ちとも言える手のひらスクリューをした俺を見て、恭二と沙織ちゃんが驚愕の声を上げる。言いたいことは分かる。バラエティ番組とかスタンさんに首根っこ引きずられた時くらいしか出ないし出たくもないからな。公言もしてるし。

 

 それでも誘ってきたという事はテレビ局側もそれだけ勝算があったって事で……

「ええと……ああ、寄生獣のスタッフじゃんこれ」

「それにライダー関係の俳優さんも」

「こっちのプロ野球選手はキョー兄も知ってるんじゃない?」

「覚えてる覚えてる。結局勝てなかったなぁ、懐かしい」

 

 なにせ司会以外の出演メンバーが、全員知り合いや友人なんだから。ここまで気を遣って貰って、実際にこのメンツが来てくれるなら俺としても否やとは言いにくいよなぁ。まぁ、知り合いに会いに行くって気持ちで頑張ってみるか。

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