奥多摩個人迷宮+   作:ぱちぱち

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誤字修正。げんまいちゃーはん様、kuzuchi様、アンヘル☆様ありがとうございます!


第二百六十八話 米国の技術力はァ!

「キョーちゃーーーん!!」

「うわ、ケイティ!?」

「むー!」

 

 身の丈ほどもある大きな斧を持った男にゴスロリ衣装を身に着けた少女が抱きつき、彼のそばに立つ女性がぷくーっと頬を膨らませる。ここ一年見なかった光景にうんうんと笑顔を浮かべて頷いていると、合法金髪ゴスロリ娘と鉄板黒髪巨乳幼馴染に挟まれたハーレム野郎からの恨みがましい視線がこちらに向いている。

 

「カーッ! 大口顧客相手だからなー! 意向には沿わないとなー! カーッ!」

「きさまぁあぁぁぁ!!」

「全然悪いと思ってる口調じゃないね、お兄ちゃん! そこに呆れる憧れるぅ!」

 

 両腕を華に専有され、ムキーッという擬音が聞こえそうなほどにむくれる恭二を指差し、一頻り笑い転げた後。ふぅ、と一息呼吸を挟み、気持ちを切り替える。

 

 ――ダンジョンである。

 

 

 

「そのドレスそんなに凄いんだ」

「ハイ! 米国技術の最先端デス」

 

 ケイティがヒラリと身を翻すと、風に舞うようにドレスの裾がふわりと宙を舞う。防刃や防弾、なんなら防火という機能まで持つ、ボディアーマーにも匹敵する防御力の装備品だというのだが見た目はごくごくオシャレなゴシックロリィタにしか見えない。

 

「複数の素材ヲ何重にもして用いていマス。重量のある繊維にはウェイトロスを付与してマスので、実は見た目ヨリ重いんデスよ?」

「手間ひまかけてんだなぁ」

 

 右目だけを赤く染めて恭二がうんうん、とケイティの言葉に頷きを返す。鑑定眼で見てるんだろうが、否定する感じもないし言った通りの性能なんだろうか。魔力の測定器なんかも米国産だし、あっちはあっちで色々新しい試みをしているんだな。

 

「ボディアーマーと変わらナイ強度のドレスアーマー、バリアを付与シたサークレット。どちらモ試験的ニ運用シてる最中デス」

「うーん……性能は兎も角見た目……うーん。ヘッドカメラは?」

「このサークレット、カメラ付いてマス」

 

 性能に関しては自身の目で見て確認したからか納得した様子だが、どうにも軽装に見えるケイティの姿に恭二は難色を示すように唸り声を上げる。

 

 俺たちが付けているプロテクターは随所に様々な合金製のプレートが入っており、衝撃緩衝材なども使用されている。その分ゴテゴテとした見た目でほとんどボディアーマーといった代物だが、このボディアーマーを付けていれば、仮に非冒険者がバリアが切れている状態でオークの一発を貰ってもそう簡単に死ぬことはない、という優れものなんだ。

 

 初期に米軍から払い下げられたプロテクターに改良を重ね、現在では魔鉄等も随所に使用しているため、付与のノリも段違いに良くなっている。下層から上層までどこでも使える万能防具、というのがヤマギシでの評価なのだが。

 

「ヤマギシチームの様ナ冒険者、少ないデス。他のチーム、もっと役割分けマス」

 

 ケイティの言葉にはなんとも言いづらい、と言わんばかりの端切れの悪さが感じられる。ヤマギシチームの面々は誰しもが大体の魔法を扱えて、接近戦も熟せる。基本はアウトレンジから断続的に高威力の魔法をブッパなして、それでも駄目なときは魔剣や魔槍を振るってとどめを刺す、という超脳筋戦法だ。

 

 少し前に混ざっていた新人冒険者達は、基本前衛と後衛に分かれて役割を徹底していた。役割を分けないとどちらも中途半端になって逆に危ない、という意図があったりする。実際新人冒険者の前衛、武藤くんは武器を振るう時に魔法を使おうとして失敗した事がある。魔法の行使が体に染み付いて居なければ、戦いながら魔法を放つってのはそれなりに難しいんだ。

 

「つまり全員が全員ゴチャゴチャした防具をつけるんじゃなくて、色々な防具や武器を用意してそれぞれにあった装備をって事か」

「そう! そうデス!」

 

 武藤くん達元気かなー。奥多摩ダンジョン入り口(冒険者の酒場)の受付さんは相変わらず元気だったけど。軽く話そうかな、と思ったけどこっちを見る視線が怖すぎて諦めたんだ。

 

「装備を良いものにするのは私も賛成かなー。もう慣れちゃったけど、可愛い鎧とかも着てみたいし。ファンタジー的なの」

「さお姉がビキニアーマーを……ゴクリ」

「ゴクリじゃないが???」

 

 コツン、とヘルメット越しに一花の頭を叩くと、周囲の面々が苦笑を零す。一人、沙織ちゃんだけはビキニアーマーの意味を分かってないようだったが。これ後で内容を知って一花が折檻されるまでが流れ(・・)だな。俺は詳しいんだ。

 

「皆さん、そろそろ新層なんで」

「あ、すみません」

 

 苦笑しながらのジュリアさんの苦言に軽く頭を下げ、見えてきた階段の出口前で一度立ち止まる。ここを抜けると例の緑色の美人さん達がわんさかと押し寄せるある意味魔の領域、38層へと入ることが出来るのだが。

 

「キョーちゃんはお留守番デス」

「きょーちゃん、おとなしく待っててね?」

「あ、はい」

 

 目からハイライトが消えた二人に挟まれた恭二の声は震えていた。ジッサイ・コワイ。

 

「あれ、じゃあ俺も残ったほうが良い?」

「んー」

 

 現在、38層入り口に居るメンバーは俺と恭二を除くと一花にケイティ、沙織ちゃんにジュリアさんの6名だ。木こり場には他にも数人女性スタッフが居たはずだが、今から呼んでくるのも面倒だし彼女達だと新層に入るには実力が足らないだろう。

 

 まぁ今回は新層を見るだけの予定の筈だから、入口付近を軽く回って何か有れば戻ってくれば良いだけだろうが。最悪俺と恭二が駆けつければなんとかなる、とは思う、んだが。

 

「初見殺しの可能性もあるし、何が起きても対処できそうな恭二兄とお兄ちゃんは居てほしいんだけどね。まぁお兄ちゃんはお姉ちゃんになればいいだけだし入っても良いんじゃない!?」

「(お姉ちゃんにはなら)ないです。隙あらば俺をお姉ちゃんにしようとするのを止めなさい」

「えー」

 

 えー、じゃない。こらそこの恭二! お前はお前でハーレムのヘイト管理をちゃんとしておけ! 笑ってる場合じゃないでしょ!?

 

「あ、イエ。そこまで入り込むつもりはないデス」

 

 俺と一花のやり取りを微笑ましそうに見ながら、ケイティはふるふると首を横にふる。じゃあやっぱり軽く見てみるだけ、か。それならまぁ、入り口から離れなければいいし問題ないだろう。さすがはケイティ、安全マージンをきっちりとってくれる辺り、どっかの許されるならいつまでもどこまでも潜り続けようとするヤマギシチームメンバーとは違うな。

 

 彼女の言葉に納得した、と頷きを返すと、ケイティはにこっと笑顔を浮かべて口を開く。

 

「ちょっとアルラウネと、お話できナイかと思いまシテ」

 

 …………訂正。この娘もやっぱりどこかおかしいわ。

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