ちょっとリアルが忙しすぎて暫くこんな更新速度になりそうです(白目)
誤字修正。見習い様、名無しの通りすがり様、げんまいちゃーはん様ありがとうございます!
「で、こうなってると」
呆れたような恭二の声に無言で頷き、ズルズルとラーメンを啜る。やっぱ下のラーメン屋美味いわ。豚骨がなぁ、いい味出してるんだよなぁ!
そのまま麺をすべて啜り終えた後。器の縁に口をつけて、スープを飲み干す。意外とあっさりとしたその喉越しをゆっくり楽しんだ後に器を置くと、すっと隣に座った一花がその器をどけ新しい料理と入れ替えてくれる。
ステーキ、しかも少し置かれていた筈なのにどう見てもアツアツだ。油が弾けてやがるぜ。これは魔法で保温……いや、温め直したのか?
「パーフェクトだ、イチカー」
「感謝の極み」
「何やってんだこの兄妹」
ヘルシングごっこに決まってんだろ。
「お前な……ぶっ倒れたって聞いて急いで駆けつけたんだぞこっちは」
「ああ……心配掛けたのは、正直すまんかった」
脱力したように開いたスペースに座る恭二に、本心から頭を下げる。ダンジョン38層で木こりをしていた恭二は、急報を聞いてすぐに帰還してきたらしい。肩で息をする沙織ちゃんが言うには。
沙織ちゃんが息切れするって、こいつどんな強行軍で戻ってきたんだ。沙織ちゃんレベルの冒険者ならフルマラソンをジョギング感覚でこなせる体力がある筈だぞ。
「まぁ、ヤマギシ記念病院に移っててくれたのは助かった。ここから隣県まで走るのも面倒だしな」
「もう問題ないんだけどな、体調は」
そう何度も主張しているんだが、担当医の間という先生もこの病院の理事長も、果ては山岸社長に真一さんまでもがしっかり検査しろ、と口を酸っぱくして言ってくる。この病院に移されてから半日。死にかけてから未だに1日も経っていないのはそうなんだが、流石に延々病室で飯を食べ続けるのも飽きてきたんだよな。
「いやぁ、むしろ食べ続けないといけないから一箇所に居て欲しいんじゃないかな! 延々作ってるのに更に配達場所がバラけるとか悪夢だよ!」
「そうかな……そうかも」
ぎゅっと俺の左手に抱きついてそう口にする一花に、そう言われれば、と思い直して右手のフォークをステーキ肉に突き立てる。妹との仲が良いアピールじゃないぞ。これ俺が動こうとしたら力尽くで押さえつけるムーヴだからな。
トイレ以外でこの場所から動けないように、という真一さんのお達しを、この妹は物理的に押さえつける方面で実行してきたのだ。男女七歳にして席を同じゅうせず、という有名な言葉を知らないのかと尋ねたら鼻で笑われました。妹の対応がセメントで辛いです。
「なんて軽口叩きながら1キロはありそうなステーキが2,3分で消えたんだが。お前の胃と食欲どうなってんだ。ル○ィか?」
「胃に落ちる前に大体消化してるっぽいんだよなぁ」
「……どういうこと?」
なんなら口で咀嚼している間に粗方消えてるっぽいんだが、まぁそこまでは言わなくても良いだろう。
怪訝そうな表情を浮かべる恭二に、右腕から伸びる白い線のようなものをツンツンと指差して、その線が続く扉の外を顎で指す。
俺もまだ良く分かっていないから言語化が難しいんだが。取り敢えず俺が食べた分は今、その線の先に吸い取られる形になっている。詳しいことは、その先にいる人のほうが丁寧に教えてくれるだろ……多分。
山岸社長はオタクだ。
ダンジョンが出現した際、諸々落ち着いた辺りで息子のダンジョン話を聞いた瞬間「俺は、初代Wizardryも日本に入った瞬間プレイしてたんだ!」とか叫んじゃうくらいにちょっと痛い方面のオタクだ。趣味に理解の在る嫁さんと二人で好きなライダーについて口論を交わすくらいにはオタクだ。家業の雑貨屋をコンビニチェーンにしたり、早世した嫁さんの分も愛情を注いで息子二人を育て上げたりと忙しい日々を送る中でも、ニチアサを店舗に置いてあるTVでチェックしてるくらいにはオタクだ。
そんな古き良きオタクと言っても過言ではない男の前に。
「つまり魔力に指向性を持たせることができれば」
「ええ。現状でも我々のように思考し、意思のようなものを持つ存在を創り出す事は可能です。神話にある意志を持つ道具類や、日本でも付喪神などは実在していても」
生前の、それこそ放映当時の姿をした結城丈二……と思われる彼が、自慢の長男と会話をしている姿を見せればどうなるか。
「あ……」
「恭二のやつが見たという……親父?」
「彼の眼にはどう見えているのか興味……山岸社長、どうされました?」
真一と彼からの視線。瞬きもせず、彼が現れた瞬間から同じ姿勢、同じ表情のまま推移を見守り続けていた山岸社長はそれらを受け、ついに。
「あばばばばばばばばばばば」
「親父!?」
「山岸社長!!?」
壊れた。
手に持ったサインペンとメモ帳を、狂ったように震えながら彼に差し出して、壊れた。
喧々囂々とし始めた病院の会議室を、ドアの外側から眺めていた一郎と恭二は、その光景を目にした後。中に続いているぼんやりと光った線を潰さないように気をつけながら、そっと扉を締める。
ふぅ、と一つ息を吐き、恭二は一郎から手渡された肉まんを頬張る。温かい。一花の魔法操作どうなってんだと思いながらモムモムとそれを咀嚼した後、飲み干し。空いた手に持っていた水で口を潤して。
「お前の右手どうなってんの???」
「出てきちゃったんだよなぁ……」
燃費悪いし早く戻って欲しいんだが、とガツガツとハンバーガーをどか食いしながら口にする一郎に、やっぱこいつの体が一番おかしいんじゃないだろうか、と確信に近い疑問を抱いて。まぁ面白いしいいか、と山岸恭二は肉まんの残りを頬張った。