奥多摩個人迷宮+   作:ぱちぱち

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説明回です

誤字修正、244様ありがとうございます!


第二百八十三話 にらめっこ

 結論から言うと、俺はどこまでも衣装劇演者(コスプレイヤー)だった。

 

 俺の右手を軸にした変身は、自身の思い描く“キャラクター”を右手という媒介を用いて、全身を魔力で覆う事で再現している。

 

 これは実際に演じている“キャラクター”たちから直接聞いた話で、“キャラクター”を演じれば演じるほど熟練度が上がっていくと俺は考えていたが、実際の所は変身する際の、変身先の魔力パターンのようなものが体に馴染んで、思い描く“キャラクター”との誤差が少なくなっていただけだった、らしい。

 

 つまり魔力で作った“キャラクター”という衣装を着替えてその“キャラクター”になりきる(を演じる)というのが俺の特性で、社長が壊れかけのラジオのように同じ言葉を繰り返す羽目になった“結城丈二”の存在も、実を言うとその特性の延長線上に在る。

 

「……それガ、倒れた事トなにか関係を?」

「ああ。まぁ、俺の体って変身してる時明らかに質量が変わってると思うんだけど。あれも魔力が原因というかなんというか」

『君、明らかに大きくなったり小さくなったりしてるからね。ハルクとか』

 

 ケイティの言葉にそう答えると、納得した、とばかりに思い当たる節を口にしてウィルが頷いた。アメリカに俺が倒れたという連絡を入れてわずか半日。例のテロ騒動で半端なく忙しい筈の彼らがここに居る事が、とても嬉しい反面申し訳なくてたまらないんだが。

 

『申し訳無い、なんて思わないで良いのに。友人を見舞うなんて当たり前の話だろ?』

「イチローには色々頼りっぱなしデスが。ウィルも、勿論私も貴方を友人だと思ってマス」

「友人だけど組織人としてはいひゃいいひゃい」

 

 隣に座っていた一花がケイティに突っかかる前に頬を引っ張って黙らせる。何度も蒸し返すんじゃないとは言ってあるんだが、一度こじれちまった関係はやっぱり簡単に元には戻せない。

 

 とはいえそんな関係をいつまでも引っ張るわけにもいかない。ってのも理解はしてる筈なんだがな。

 

 それに。

 

「心配して来てくれた相手にその態度は、駄目だろ」

「……そだね。ごめんケイティ、ウィル」

「いえ……構いません、イチカ」

『マスターのお言葉は全て受け入れるけど、それはそれとして。気にしないで良いですよ』

 

 俺の言葉に少し間を置いて頭を下げた一花に、ケイティが首を振って答える。ウィルは…………うん、俺の特性とぶっ倒れた原因についての話に戻そう。

 

 変身という特性は、言ってみれば右手を軸にした衣装替えである。しかも、魔力によって肉体を変質させ、質量すらもイジってしまうレベルでの衣装替えだ。

 

 これはつまり、俺の肉体はその大部分が魔力に対して非常に親和性の高い、魔力の影響で簡単に変質してしまう代物に成り代わっているという事で。

 

「そんな状態の俺が常に魔力を吸われる代物を装備してたらどうなるかっていうのがね」

「……魔力が、血肉のようなモノになっているのだと解釈するト。常に出血、デスか?」

「大体合ってる」

 

 それに+して肉体に馴染んでる残留魔力みたいなものも搾り取られてたからガリッガリのミイラみたいになってたんだが……まぁそこまでは言わなくても良いだろう。詳細な情報はヤマギシからブラスコやジャクソンに送られるだろうし、わざわざ今このタイミングで言っても空気が悪くなるだけだしね。

 

『君がミイラになった理由は分かったけど、あの光景が生まれた原因は結局どういう理屈なんだい? 君がコスプレ趣味なのと彼が現世に出てくるのは流石に理屈が違う気がするけど』

「ああ……」

 

 チラと魔力線の先の現状を眺めた後、そっと目をそらして口をもごもごと動かす。

 

「演じるってのは、外面だけの話じゃないんだ。俺は変身する際、内面も模倣して自分の脳内の“キャラクター”を再現するようにしててな」

 

 そう考えたほうが変身した際のしっくりくる度合いが違ったから、という理由で始めたことだったんだが……その内面の模倣という部分と魔力による肉体の変質が噛み合ってしまったのが、一番の原因だった。

 

 変身している時、俺はその“キャラクター”になりきっていた。彼ならばこうする。彼女ならばああする。外身と中身が合うように、そう考えて変身先を演じていた。そうして何度も変身をし、そしてその変身先に体が馴染めば馴染むほどに、同じく俺の“キャラクター”を模倣した思考も残留思念のように積もっていき。

 

 やがて積もりに積もった残留思念は、自我を持つに至った。

 

「そうやって自我を得た彼ら彼女らは、オレの内部で魔力を糧に成長して、そして遂に俺が変身する要領で魔力を編んで、自身の体を再現した。起こったことをそのまま言葉にすると、そうなる」

 

 これが結城丈二が俺の内部から外部へ出てこれた理由と、その絡繰りだ。

 

「つまり普段お兄ちゃんがコスプレする要領で体を構成してるわけだね。あそこでにらめっこしてる人は」

「にらめっこ言うな」

 

 1時間近く立ち尽くしてるんだから、あれはもうにらめっことかいうレベルじゃない。

 

 険悪なムードというわけではない。わけではないのだが……無言で見つめ合うV3さんと結城さんという、他人が入りこむ余地がないシチュエーションは勘弁してほしい。有線の距離があるから下手に動けないんだ。

 

 いつまでも魔石齧ってるわけにもいかないし、初代様に来てもらって収拾つけてもらうべきだろうか……余計ひどくなりそうだな。うん。

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