奥多摩個人迷宮+   作:ぱちぱち

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遅くなった上に全然話が進んでない申し訳ありません(白目)

誤字修正、garaasaa様ありがとうございます!


第二百八十四話 宴のあと

「す、すみません。鈴木さんたちにご足労頂いてしまって。副社長も山岸部長もまだいらっしゃっていなくて……」

「ああいえ、お気になさらず」

「まー、生き残ってるの私らだけだろうしねぇ」

 

 申し訳無さそうな受付嬢の言葉に苦笑いを浮かべて首を横に振る。現在時刻は朝7時。昨日……というかついさっきまでどんちゃん騒ぎだったからなぁ。一徹二徹は平気の平左な冒険者でも、あんだけ酒をかっ喰らえばこの時間に起きてこれる訳がない。

 

 俺? 勿論寝ていない。というかお酒をどんだけ飲んでも全部魔力に変換されるのか少しも酔えなかったせいでひたすら酔いつぶれた友人上司先輩後輩の介護をさせられていた。年齢的に飲めない一花と一緒に。

 

 まぁその御蔭で件の人物のやらかし?に対処できると考えれば良かっ……いや、良くない。まったくもって良くはない。

 

「……まぁ、その。気持ちはわかるけどさぁ」

 

 どんどん下に降りていくエレベーターの内部で、一花がポツリとつぶやいた。

 

 気持ちは、確かにわかる。飛行機の関係でどうしても昨夜のうちに奥多摩に戻れず、飲み会に参加できなかった件の人物の気持ちはよく分かる。直撃世代ではない俺ですら胸に来るものがあったんだ。見る人が見れば、あの場は初代様に呼ばれたスピリッツ先生のようにその場でストン、と腰を落として滝のような涙を流してもおかしくはない場所だったのだ。

 

 せめてもの慰めに、と2店舗目くらいから一花に撮影してもらって一部を動画配信していたのだが……

 

「火に油を注いじゃったかもね」

「ぽいなぁ」

 

 昨日の動画に関しては特性が強化された件についても触れており、やらないという選択肢は無かったのだがな。

 

 元々俺の特性については知られていたし、強化された現象も誤解を招きやすい形ではあるが俺の特性の発展としてはまぁなくはない代物だ。流石に人格っぽいのが生えたのはびっくりしたが。

 

 変な勘違いが生まれる前にどういった物かを懇切丁寧に結城さんの口から語ってもらったから、少なくとも昨日の俺の動画を見た人々からは神の奇跡だとかそういった類の発言が飛ぶことはないだろう。多分、ないだろう(大事なry)

 

 うだうだと考え込んでいると、1階に到着したのか軽い振動と共にエレベーターが止まる。ふぅ、と深呼吸を一つ。どういう情景が広がっているかを想像し、覚悟を決めているとエレベーターのドアがゆっくりと開いていき――

 

 

 

 

 

 スーツ姿でプラトーンのポーズをキメている山岸社長の姿に「おうふ」と情けない声を漏らす。想像の数倍キツかった。

 

「いやぁ……これはキツイ」

「かれころ30分近くあの姿勢のままで……他の社員も遠巻きに」

「誰も声かけられないわね、ありゃ」

 

 心底困り果てた、という受付嬢に同意の言葉で応えて、ポリポリと頭をかく。社長がプラトーンのポーズをキメている、おそらくはその視線の先にあっただろう額縁に視線を合わせる。なるほど、アレを見てああなったのか。

 

「社長。山岸社長」

「ァァァァァァァァァ」

「駄目だ。一花、足持ってくれ」

「アイサー!」

 

 これ、社長は今日一日動けんかもしれんな。そこまで衝撃を受けたのか。受けたんだろうなぁ、アレに。

 

 視線を額縁に、そこに飾られた、できたてほやほやの一枚の描き下ろしイラストに向け苦笑いを浮かべる。スピリッツ先生が昨夜、泣きながら一晩で完成させた三枚のイラスト。そのうち一枚を社長のために寄贈してもらったのだが、まさかここまで効果が出るとは。

 

 いや……意外ではない、か。

 

「あ、受付のお姉さん。あの額縁の絵、社長室に持ってきてもらって良いですか。今日一日だけで良いんで」

「え、あ、はい」

 

 昭和ライダー全員に、俺を含めた関東圏にいた平成ライダーほぼ全員。それに部外者ではあるが一花や恭二、沙織ちゃんにウィルとケイティという世界有数の冒険者達の姿がスピリッツ先生の絵柄で写し出されたその一枚のイラストは、実物をついさっきまで見ていた俺ですら魂を持っていかれそうになる魅力を感じる逸品だ。

 

 ファンを公言して憚らない社長がこんな物を見たら、こうなってもおかしくはないのだろう。とはいえ毎日これをやられていたらたまらない。

 

「社長室の壁に飾っとこうか。一日も見続ければ慣れるだろ」

「一日で慣れるかな?」

「慣れるんじゃないの、いくらなんでも」

 

 えっさ、ほいさと社長を抱えて移動しながら一花と会話を交わす。まぁ最悪慣れなかったらどこかの部屋に展示物として飾る手もあるだろう。

 

 なお社長が絵に慣れるまで本当に1日かかったらしくその間主に迷惑を被った真一さんから小言を言われたが、流石にこれは俺に言われても、その、困る。




寄贈されたもの以外のイラスト

2枚目
構図は寄贈されたものと同じで昭和・平成ライダー全員が変身している1枚

3枚目
誘われた地獄大使さん等の関係者が飲み会に参加するために暖簾をくぐり、それを歓迎するライダーズの姿が描かれている。ウィルはヒーロースーツに、他の冒険者も装備を着込んだ姿で描かれており飲み会の描写というより冒険者の酒場といった風情の1枚。
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