奥多摩個人迷宮+   作:ぱちぱち

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誤字修正。244様、椦紋様、アンヘル☆様、見習い様、kuzuchi様、マグロノーム様ありがとうございました!


第五十五話 冬期休暇

第五十五話 冬期休暇

 

 

ヤマギシのコンビニは近隣の住人や日米の訓練生で賑わっている。

現在は元々バイトリーダーだった人を店長に、他のバイトを正社員にして回しているらしい。俺もよく利用させて貰っているのだが昔からの知り合いのフリーターの兄ちゃんがいつの間にか店長なんて呼ばれてて驚いた。

ボーナスも出るらしく、貰いすぎたのかと経理に相談して笑われてしまったらしい。

 

 

「預金通帳の数字が見たこともない金額になってて怖い。両親に親孝行の名目で海外旅行プレゼントしたけどまだあるわ」

 

「素直に貯金してくださいよ」

 

「いや、貯金用にも口座作ってそっちにも入れてあるんだよ!どうしよう、感覚が麻痺しそう・・・」

 

 

一応、うちのコンビニ部門の責任者なのでそこそこ渡してるだけだと思うんだけど。根が小市民なんだろうなぁ。

とりあえず冒険者部門のように纏まった休みが取れない彼等コンビニ部門は、年末年始の休みの間ヤマギシで唯一可動する部署になる。

何かあったときの対策等や連絡先は伝えてあるので、ひとまず問題はないだろう。

 

さて、人生二度目の海外渡航は南国の国でのバカンスになった。

行先は勿論日本人の憧れの地ハワイ!ではなく、西カリブ海のバージン諸島という場所らしい。

何でもこの地にブラス家が保有する別荘があるとの事だ。

 

 

『ハワイなんて寒くて駄目だよ。やっぱりバカンスといったらこれくらい暖かい所じゃないと!』

 

『さっすがガチモンのセレブは言う事が違うね!』

 

 

今冬、そのままヤマギシビルに宿泊していたウィルが慣れた様子で荷造りを手伝ってくれる。

大学は大丈夫なのか聞いたら、すでに単位は取得しているし急いで出ないといけない講義も無いとの事。どうせすぐに冬期休暇に入るし、どうせなら一緒に行こう、と海外に不慣れな俺達の講師兼案内役を買って出てくれたのだ。

今回、俺達はパスポートしか用意していない。なんとジャクソンが所有しているプライベートジェットに一緒に乗せて行ってくれるらしい。

 

 

『この格好で大丈夫なのか?Tシャツに短パンって』

 

『大丈夫だよ。むしろフォーマルなんかで行ったら暑くて大変だからね!』

 

 

恭二の質問にウィルがそう答える。最近は他のメンバーにも慣れてきたのかドモったりする事も無く普通に話が出来ている。

友人が仲間を受け入れてくれた気がして少し嬉しい。

そして俺達はクリスマスの準備で忙しい東京を離れて一路、常夏のカリブへと旅立ったのだ。

 

 

 

 

『うわー、すごいね。半そででも暑いや!』

 

『クーラーが欲しくなるな、これは』

 

 

空港を出た瞬間に真夏の空気が俺達を包み込む。気温は何と28度だ。

そして空港に迎えに来ていたブラス家のリムジンに乗り込み、ブラス家の別荘へと向かう。ガンガンに効いたクーラーが心地いい。

別荘に到着するとまずはと部屋に通される。さすがに世界的企業のオーナー所有物件だけあり、一人一部屋ずつもらえたりしている。

ドレスコードもなくラフな格好で楽しんで欲しいとの事なので、ありがたくお言葉に甘えさせてもらおう。

 

 

『ようこそ皆さん。ウィルも良く来てくれました』

 

 

ブラス嬢は相変わらずボディガードと通訳を連れてにこやかに俺達の部屋に入ってきた。

心なしか日本であった時より顔色がいい気がする。本当に病気が治ったのかな?

 

 

『やぁ、ケイティ。話は聞いたよ。本当に、本当に良かった』

 

『ありがとう、ございます。貴方が私を日本に連れ出してくれたお陰で』

 

『言いっこなしさ。同じ協会の仲間じゃないか。さ、御礼を言うのは僕じゃないだろう?』

 

 

ウィルはそう言ってブラス嬢の手を取り、恭二の前に誘った。

ブラス嬢は大人しくウィルに従って恭二の前に立つ。

 

 

『恭二さん・・・・・・・本当に、ありがとうございました』

 

『・・・いや、こちらこそ勝手にやっただけで。その、本当に良かった』

 

 

ブラス嬢が涙ながらにお礼の言葉を口にすると、恭二は照れくさそうに頭をかいて、そう応えた。

恭二の言葉を聴いて、ブラス嬢は何も言わずに恭二に抱きつき、恭二もそれを受け入れた。邪魔をするのも気が引けたので、他の人間は皆押し黙ってその様子を見ている。

沙織ちゃんだけはちょっとぐぬぬ、ってしてるけどな。まぁ、今日は彼女に譲ってやってくれ。

 

 

 

 

 

『すみません、お恥ずかしい所を見せてしまいました』

 

『いやぁ、何か見ました?ウィルさん』

 

『さぁ?僕のROMには何も無いよ』

 

 

暫く恭二の胸で泣いた後、落ち着いたのか恥ずかしそうにそう言うブラス嬢に俺とウィルはそう言って肩をすくめる。

健康に生まれ育った俺達には彼女の本当の気持ちなんて分かるはずもないが、女性の涙を軽々しく扱っちゃいけないという事だけは万国共通だからな。

俺とウィルがおどけてそう言うと、真一さん達も笑顔で頷いた。

 

 

『さて、ブラスさん。再会を喜び合うのも良いですがそろそろ今日の予定を聞かせてもらっても良いですか?折角の良い天気なのに日が暮れてはもったいない』

 

『ふふっ。ブラスさん、ではなく是非ケイティとお呼びください。この後はシャーロット・アマリーでショッピングはいかがでしょう?』

 

『勿論ですよケイティ。俺の事はイチローと呼んでください』

 

『あ、じゃあ私はイチカで!ケイティお姉ちゃんよろしくね!』

 

『わ。私も、サオリって呼んでねケイティちゃん』

 

 

湿っぽい空気のままでは折角の南国も楽しめない。そのまま皆でがやがやと騒ぎながら俺達はリムジンに乗り込んで街に繰り出した。

一度場が明るくなるとそこは南国の空気か。大変楽しいショッピングだった。

しかし、沙織ちゃん。一花と同じ位の体躯だからだろうが、なんかいつの間にかケイティを妹扱いしてない?

その子多分恋敵になる上に君より年上なんだけど。良いのかな?本人達が良いならいいんだけど・・・・・・

 




コンビニの店長:大学生の頃からヤマギシのコンビニで働いている。一度は他所への就職を考えていたが両親の年齢や田畑をどうするか考えた結果地元に居ついている。多分以後出てこない。

キャサリン・C・ブラス:ずっと病院のベッドに縛り付けられる日々を過ごしていた。ある日、テレビで流れた恭二が始めて魔法を使った瞬間を見て、キュアを理解。動かない体を無理に動かしてダンジョンへ行き、自身にキュアをかけてまともに動ける体を得た。彼女にとって山岸恭二は唯一無二のヒーローであり、リザレクションを受けて長年の持病を克服した今は命の恩人でもある。

ウィリアム・トーマス・ジャクソン:自身のヒーローに認められるというある種人生最大の転機を迎えて自信をつけ、周囲に眼が配れるようになった。
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