奥多摩個人迷宮+   作:ぱちぱち

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クリスマスパーティ回

誤字修正。244様、KUKA様、kubiwatuki様ありがとうございました!


第五十六話 クリスマスパーティー

第五十六話 クリスマスパーティー

 

 

ショッピングで夏用のフォーマルスーツを仕立ててもらった。

何でも今度パーティーを行うため、それ用の服が必要だ、との事だ。

流石にオーダーメイドは時間が無いとの事なので、高級仕立て服を専用に調整してもらって揃える事になった。

 

 

『こちらの都合にお付き合い頂く訳ですから、料金は気にしないで下さい』

 

 

というお言葉も頂いた為、甘えさせてもらうことにする。

数日をビーチで遊んだりして過ごし、全員のフォーマルのお直しが終わった頃。

俺達は観光用のクルージング船に乗って、東の突端部分にあるホテルに向かうことになった。

 

船から見る町並みが凄く綺麗だ・・・ここ数日は日本のように不躾にカメラを向けられることもなく、落ち着いた日々を過ごすことができた。

サインを求められることが多いのは変わらなかったけどな。向こうもオフなのか映画とかで見たことがあるようなないような人が結構居たりして映画に誘ってくるのはちょっと勘弁して欲しい。

まぁ、その辺りはウィルやケイティが上手い事あしらってくれたから助かった。二人が結構けん制になっていたらしい。ボディガードが居るとやっぱり違うね。

 

ホテルに着いたらベルボーイ達が飛んで出てくる。俺たちの荷物を聞いてるが、俺たちに荷物があるはずない。全部恭二が収納しているからね。

と言っても流石に何もなしでは彼らもチップを貰い損ねることになる。

部屋まで案内してもらったお礼に何か渡そうかとすると、それよりも是非、握手をして欲しいといわれたので了承。少しでも気持ちよく仕事をしてもらいたいしね。

ホテルの部屋も、俺たちが今まで泊まったことがないような良質の部屋を用意してもらえた。

ベランダで夕日を眺めていたり、たわいも無い話に興じる事暫し。夕日が隠れた頃にパーティへのお呼びがかかった。

 

そして会場に案内されて、絶句。

身内のクリスマスパーティだろうと思っていたら欧州各地の冒険者協会の幹部が集まっていました。

困惑気味な俺達を他所に社長と真一さんはいそいそと案内されたテーブルへ向かう。

これは、知っている反応だ。俺達に黙っていたんだな・・・・・・

裏切り者への糾弾は後で行うこととして、一先ず会場内へ入る。

とりあえず先に入った真一さんや社長より皆俺を見てくるんですが。めっちゃ見られてるんですが。

 

 

『世界で一番の冒険者はわからないが、君は間違いなく現在世界で一番有名な冒険者だからね』

 

『嬉しそうに言わないでくれよウィル。あんまり悪目立ちするのは好きじゃないんだ・・・』

 

 

ウィルと談笑していると、周りからひそひそ話されてるんですが大丈夫なんですかねぇ。大丈夫?あ、はい。

超一流ホテルのパーティルーム貸し切りで行われた世界冒険者協会のクリスマスパーティは盛大だった。

メリークリスマスの乾杯後、クリスマスキャロルが流れてきたのだが・・・季節感が全然一致してなくて不思議な感覚だ。

その後は自由歓談になったのだが、その瞬間俺と真一さん、シャーロットさんの周りに人垣が出来る。

 

 

『やぁ、スパイディ。お会いできて光栄だよ。いつも動画で活躍を見させてもらっている』

 

『ああ、ありがとうございます。ええと』

 

『ああ、イチロー、彼はイギリスの富豪で・・・』

 

 

ウィルの助けを借りながら各地の協会の有力者と顔を合わせて言葉を交わす。

俺は本来こういった政治的な駆け引き等の能力はないのだが、事前にウィルがある程度のあしらい方やマナー等を教えてくれたので何とか取り繕うことは出来たみたいだ。

今回、俺が絶対にしてはいけない事は「別の土地にあるダンジョンへ入る約束」を取り付けられる事らしい。

 

 

『君の知名度は抜群だ。その君が入ったことがあるってだけで一定の宣伝にはなるからね』

 

『そんなものかねぇ』

 

『勿論、アメリカや日本ならそんなに制限はかけないよ。でも、きっちりと国内の法律を整備している国はまだまだ少ない。用心に越した事はないだろう?』

 

『面倒だな。そういった諸々から影響を受けたくないから動画を撮ってたのに』

 

『人気が出すぎるのも考えものだね。でも、立場のせいで自由に動けないってのは、僕も少し気持ちが分かるよ』

 

 

明らかなお偉いさんの波が引いていき、のんびりとウィルと料理を楽しみながら雑談に興じる。

ようやく落ち着いてきたかなという時に、今度は明らかに今までとは質の違う連中が寄ってきた。

明らかにオタク気質の奴らだ。

こういう連中の方が正直話していて気が楽になるのは、俺もオタク気質だからかねぇ。

ウィルに話すような口調で彼らと応対すると何故か喜んでくれたのでそのままグループを作って会話を弾ませる。

偉い人とのコネ作りは真一さんや社長が引き継いでくれるだろうし、俺もそろそろパーティを楽しませてもらうとしよう。

 

お酒こそ飲めないがひたすら食べて、美味しい果物のジュースを飲んで。是非見たいといわれたので一応ホテル側に許可を貰ってスパイダーマンに変身。

調度品を壊さないように飛び回るのは骨が折れたが、ウェブを使った移動をして見せたときの盛り上がりは最高だった。

ショーを終えた後にケイティに一言場を乱したと謝罪をするが、むしろ最高の催しだったとお礼を言われた。

 

 

『魔法を使えばヒーローになれる、というのは、若者にとってある種最高の夢に、希望になります。貴方は、貴方のままダンジョンに挑んで下さい』

 

『あー、うん。難しいことは分からんが、出来る限り頑張るよ』

 

『はい!あ、後すみません。そのままの格好でちょっとこちらに来て下さい』

 

『うん?』

 

 

そのままケイティに連れられて壇上に上がり、同じく上がってきた各協会のお偉方と、何故か社長を含めた十数人で記念撮影。

天井からウェブで釣り下がる感じで、と言われたため1人だけさかさまに移ったこの写真が後に世界冒険者協会のHPのトップを飾ることになる。

と言っても、その時の俺は頭に血が上るからさっさと終わって欲しいとしか思って居なかったが。知ってればもう少しポーズも気にしたのに・・・・・・

 


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