誤字修正、名無しの通りすがり様、ドッペルドッペル様、244様ありがとうございます!
その場所は森に飲まれてしまった廃墟群の中でもひと際目立つ建造物だった。
木々に阻まれて全体像は確認できないが、ツタに覆われた石材で出来た柱や壁の名残など枝葉の間から見える範囲だけでもこれまで見かけたツリーハウスとは根本的に造りが違うのが見て取れる。単純に他と比べても桁違いにデカいというのもある。
「ここがボス部屋だろうな」
「だろうな……とはいえこれ、中に入れるのか?」
「また燃やす?」
「そんなエルフの森みたいに簡単に焼こうって……ここエルフの森かもしれないんだったわ」
嬉々としてカメラを扱う御神苗さんを尻目に、緑に覆われた2本の石柱の前で相談を交わす。恐らくここが出入り口だったんだろな、と当たりはつけているのだが中に入れそうな場所は見当たらない。
「ここで行き止まりってわけはないんだ。38,9層を考えればさ。何かを俺たちが満たしてないって事なんだろうけど」
「お兄ちゃん、蛇かなんかに変身してあの中偵察とかできない?」
「ちょっと人型以外は難しいかなって」
「いっそ入口吹っ飛ばしてみるか?」
「最終手段として考えるのは良いですが初手破壊はやめてください。貴重な、貴重な地球外文明の痕跡かもしれないんです……」
懇願するように御神苗さんが口にするが俺としてもこういう建造物をぶっ壊すのは崩落などの二次災害が怖いし、流石に初手から選びたくはない。
「あの。実は気づいたことがあるんですが」
では、どうするかと話し合っていると、それまで会話に参加せずにメモ帳に何かを書き込んでいたケイティが声を上げた。
「これ。この階層に入ってからここに来るまでの地図というか道筋をメモしていたんですが」
「マッパーだね!」
「そうなれれば良いんですが」
一花の言葉にはにかんだ笑みを浮かべた後、ケイティは手元のメモ帳を俺たちの前で広げた。
何ページかに分けられたその地図は思っていた以上に詳細に森の形状を書き記されていて、特に数字が打たれた目印――廃墟になったツリーハウスについては簡単な外観まで書き込まれている。御神苗さんが周辺を探索していたので多少は時間があったとはいえ、ほとんど数分で書き込まれたとは思えない出来栄えのスケッチだ。
「この数字と位置を確認してください。便宜上、ただ廃屋とするのも味気ないのでナンバリングしていたんですが」
そう言ってケイティは1と走り書きされた廃屋を指さし、そこからつぅっとメモ帳の上で指を走らせ、2番の廃屋を指さす。そしてそのまま3番、4番と指を進めていき、最後に12番目となるこのボス部屋の前へとたどり着いたところでメモ帳から指を離す。
12、12か。それは、なんとも覚えのある数字だな?
「さっきの39層で手に入れたドロップアイテムの数だね!」
一花の言葉におぉ、と沙織ちゃんと恭二が両手をポン、と叩き合わせた。
「まって。さお姉と恭二兄まさか気づか」
「おっし! そうと決まれば逆走だな!」
「なにか分かるかもね、きょーちゃん!」
「お前ら……」
「いや、流石に分かってるって。アイテムの番号について言ったの俺だぞ?」
幼馴染たちの白々しい言葉に言葉を失っていると、苦笑しながら恭二がそう答えた。まぁ、それは良いんだがお前の横で裏切られたような顔をしている沙織ちゃんは、あ、うん。
「とりあえずアイテムを全部出してみた」
「ツリーハウスはほぼ直線上に存在していました。位置を考えると、ナンバー1かナンバー12のアイテムが怪しいですね」
一番最初に見つけたツリーハウスまで戻った後、恭二は収納魔法から39層で手に入れたドロップアイテムのうち、これだろうという二つのアイテムを取り出した。一つはエルフ兄ちゃんの折れた剣で、もう一つは木と皮を組み合わせて作られた弓だ。恐らくはこれが1/12番なんだろう。
そしてどうやらコイツが当たりだったらしい。
「ギンギンに輝いてるね。弓。このまま照明替わりに使えそうなくらいだ。弓」
「収納に入れてたせいで気づかなかったなぁ。眩しっ」
ツリーハウスの前で野球場の照明のごとく眩しい光を放つ弓に、一花と恭二が感想を口にする。これ、収納持ちじゃなかったらこの段階で光り輝く弓に気づいてたんだろうな。
あ、いや。収納持ちじゃなかったらアイテムを回収しなかった可能性もあるか。それに39層のモンスターを倒さずに進んでたらそもそも気づかない可能性もあったかな?
「それはないと思いますよ。39層は森が広がるエリアでしたが、実質通れる道はほぼ一本でしたし」
「ドロップアイテムが落ちてる場所もほぼ一直線だったしね! 全部のモンスターと遭遇してたと思うよ!」
「ああ、そうなるか」
御神苗さんと一花の言葉に頷きを返して、恭二に視線を向ける。光り輝く木の弓をもってツリーハウスの前に立つ恭二は、どうすればいいか、と首を傾げながら木の弓をツリーハウスが立っている大木に立てかけるように置いた。
恭二としてはとりあえずの行動だったんだろうが、結果は劇的だった。眩い光を放ちながら木の弓が溶けるように大木に吸い込まれて消える。そして数秒ほどの間をおいて大木が、ツリーハウスが揺れ始め、大木を覆っていた緑のツタや植物がどんどん枯れ、そして粉々に砕けて消えていった。
その動きはツリーハウスだけではなく周辺にも伝搬していく。最初はツリーハウス、そしてその周囲にもその流れは伝わっていき、急速に俺たちが立っていた森は姿を消していく。
「うお、木の根が消えっ」
「あいたっ」
「フロートを使え!」
足元を覆っていた木の根もどんどん枯れてしまい、足元が不安定を通り越して消失するという異常事態。なんとか立つ場所を確保しようと俺たちが四苦八苦していると、始まりと同じような唐突さで森の変化は終わりを告げた。
実質10秒ほどの騒動。たったその程度の時間でヤマギシチーム全体を混乱させた一連の事態は。
「ええぇ……」
「なるほど。なるほど……もしかしたら位には考えてたけど、そうくるかぁ!」
目の前に広がるよく手入れされた土の道路にある程度の間隔で管理されていると分かる木々、そしてたった数十秒前まで明らかな廃屋であったはずなのに、新品同様になっているツリーハウスという謎の存在により、更なる混乱をチームにもたらすこととなる。
これ、中も入れるのかな。ツリーハウスって一度入ってみたいんだけど入ってみても良いんだろうか。怪しいからお預け? そっか。そっか……