奥多摩個人迷宮+   作:ぱちぱち

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第三百五十話 41層偵察

 他人の金で食べるラーメンが美味いという事を思い出して数日後。

 

「とりあえず41層を攻略じゃなくて見に行こうか」

 

 国内ダンジョンすべてで40層を解放。結果、国内の全てのダンジョンがほぼ奥多摩と同じだというのが確認できたことを受け、今後の方針を決めるための会議で、最初に恭二はそう口にした

 

 限界だな。その場に居る人間すべての脳裏にその言葉が過る。

 

「偵察は大事だよな。41層は今の所サンプル採取くらいしかしてないから攻略していや違う。偵察だな、偵察は大事だ。新しい階層をまず確認しないとな。でも攻略は進めないといけないよな」

「全然本音が隠せてないぞ?」

 

 ここ数週間、延々と40層攻略をし続けていたせいで思考回路が……と沈痛な面持ちでそう口にすると恭二は何か言いたそうな表情を浮かべてこちらを見た後、会議室に居る面々に向かってこう口にした。

 

「そろそろダンジョン攻略したい」

「素直に言えてえらい」

「会議とはいったい。うごごごご……」

 

 己の欲求100%な恭二の言葉に鈴木兄妹はそれぞれの感想を述べた。実際、軽く偵察位はしておいた方が良いだろう。

 

 なにせ次の階層も、なかなか面白そうな場所だからな。

 

 

 

 さて、ダンジョンである。

 

「40層のエレベーターからすぐ来れるから、実を言うと何回か見てはいるんだよな」

「眺める程度で奥には進めてないけどな」

 

 風と共に鼻を掠める潮の香りと、ざあざあと砂浜に押し寄せる波の音。肌を焦がしそうなほどに熱い太陽の光に目を細めながら、目の前に広がるエメラルドブルーの砂浜を見る。

 

 海だ。まごうこと無く南国の海がそこには広がっていた。

 

「沖縄の海を思い出すねぇ」

「おきなわ? そこにもこのような水たまりがあるのか」

「あ、姫は海見るの初めてなんだ? 海ってのはねぇ」

 

 一花の言葉に姉を名乗るエルフ少女がそう尋ねると、一花は海と言う存在についてある事ない事を語り始めた。そのじゃれあう様子を横目に見ながら、海を眺めていた恭二に声をかける。

 

「バイクで偵察に出た結城さんから連絡きた。砂浜には果てがあるってよ」

「その分身、遠距離からでも連絡取れるのか?」

「外じゃ無理だけどな。ダンジョン内でも、別階層とかになると分からなくなるし」

「それでも十分便利だわ」

「無線機があれば出来る事だろ。ドローンでも良い」

 

 呆れたような恭二の言葉に首をすくめて返す。

 

「ドローンか。こういうフィールドだとあれも使えそうだよな。透明度が高いし、上空からでも海中が見える」

「陸地にない以上、海側に何かありそうだしな。次の時に用意する感じで……あれってどうやって使うんだ。ラジコンみたいなもんかな」

「米軍とか使ってるっぽいしベンさんならいけるんじゃないか?」

「恭ちゃん、砂浜は安全そうだし少し泳いでみる?」

「この海のサンプルは取ってるんだよな。入って安全なのか?」

「ああ、地球上の海とほぼ成分は変わらんそうだ。砂浜もな。とはいえモンスターの姿が見えなさ過ぎて逆に怖いから、少しずつ調査を進める方が良いだろ」

 

 生き生きとした表情であーでもない、こーでもないと恭二は呟きながら攻略について思考を巡らせている。ダンジョンがかかわる事になると途端に脳のスペックが上がってるというか、やたらと頭が回るように感じるのは気のせいではないだろう。

 

 まぁこの場にドローンが無い以上、今のタイミングで出来ることは限られている。

 

「という訳でちょっくら空の旅に行ってくる」

「おう、骨は拾ってやる」

「お前も飛べるだろうが」

「そこまで安定しないんだよ、あれ。結構動くから落ち着いて見れないし」

「あまり無理はするなよ、一郎」

 

 いまだに自身で変身する事しかできない木之本桜たんに変身し杖を使って空へ舞い上がる。戻って来た結城さんと入れ替わる形での偵察だ。

 

 本当なら同じライダーでも水中で活動可能なXさんかスーパー1さんが良いんだろうが、この二人はそこまで確たる人格を有することが出来ないというか、変身は出来るがキャラクターとして自分の中に落とし込めてないせいで彼のように独立で行動してもらうことができない。

 

 この点は多分、実際に先達として接している方々だからだと思う。心理的なブレーキが入っている気がする。

 

 ふわりと軽く上空で旋回し、「お、ちゃんと見せパン!」という妹からの声援を背に空を駆ける。スパイダーマンやカズマのような飛び方とは大分感覚が違うが、自在に飛べるというのは気持ちいいもんだな。

 

 延々と奥多摩の上空にカメラを向けるファンも居るらしいし、一度ファンサでもするべきかなと余計なことを考えながらの上空散歩。上空から見る限りこのフィールドはかなりの遠浅な海らしく、腰くらいまでの深さの海が1キロくらい続いているように見える。

 

 所々に見える魚影は普通の魚かモンスターなのか判断できないが、今までのダンジョン内部に普通の生き物はいなかったし恐らくはモンスターなのだろう。有害かどうかまでは上空からじゃ判断できない。

 

 そのまま速度を上げて遠浅の海を突っ切っていくと、エメラルドグリーンの海面の一部が青くコバルトブルーに変わっている部分が見えてきた。あそこだけ水深が深そうだなと辺りをつけて、上空へと杖を走らせる。

 

 エメラルドグリーンの海に丸く大穴を開けたその場所は上空から見るとコバルトブルーどころか濃藍色と呼ぶべき色合いで、かなり透明度の高い水なのに底が見えないくらいに深いらしい。

 

 多分、ここの奥に何かあるな、と考えながら浜で待機している結城さんに状況を説明し判断を仰ぐ。俺一人ならXさんに変身して潜って来るのも可能だが、それは流石に不用心すぎるだろう。

 

 しかしこれどのくらい深いんだろうな。案山島でも落として確認してもらおうかな、と大穴を見ると、大穴一杯に広がる巨大なサメの口がドアップで迫ってきていた。

 

 あ、この階層そういう感じ?

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