奥多摩個人迷宮+   作:ぱちぱち

342 / 406
投稿したつもりになってた()
皆様メリークリスマス。今夜はポケットの中の戦争を見る作業がありますね。心穏やかに聖夜を乗り切りましょう


誤字修正、244様ありがとうございます!


第三百五十四話 全ての起源は隣国にあるらしい

「お隣の国の世論調査だとお兄ちゃんと姫はあっち起源らしいよ!」

「あれ、去年は俺だけだった覚えあるけど」

「お兄ちゃんの起源があっちだから派生して姫もって事じゃない? 起源ってどういう意味なんだろうね?」

 

 日本民族は大陸から渡ってきたから起源はこちらにある! とかいう主張だろうか。それだと自称姉はダンジョン生まれだから……あ、ダンジョンが隣の国起源って言いたいのか? あれ、でもあそこの国ってたしか管理してるダンジョンがなかった覚えがあるんだが。

 

「首都のそばにあるよ! 北の国との国境だけど」

「ほー。それはまた色々難しそうな……首都のそばに国境あるの?」

「うん。たしか国境から40キロくらい!」

 

 何度かこっちのダンジョンも管理するべきだって日本冒険者協会が言われてるらしいんだが、毎回突っぱねてるとは聞いてる。そらそんな厄介そうな場所の管理、やりたくはないわな。外交問題になりそうだし。

 

「ヤマギシにも依頼が入ってるんだけどね。技術供与と教官だけでって言われたから断ったんだって」

「ふーん。まぁ、現状何もかも手が足りてないのに余計な仕事は抱えられんわな」

「まぁこれ受けてもウチにはなんの得もないしね。周辺施設の運営権くらいは寄越すかなって思ったけどこれもなかったみたいだし」

 

 半官営の冒険者協会とずぶずぶなヤマギシだが、一応営利企業であるから基本的には自社の利益のために活動をしている。数百名の社員を抱えている以上、彼らの生活のためにも利益を得る必要がある。

 

 日本国内の各ダンジョン周辺を格安で開発しているのも、それが後々利益につながるから投資しているだけであり別に慈善事業ではないのだ。

 

 世界冒険者協会や日本冒険者協会に便宜を図っているのは単純にそちらにはいろいろな意味で世話になっているからで、特にこれまでつきあいのない……どころか余計な茶々ばかり入れてくる相手にいい顔をする理由はない。

 

 

 

 画面の中ではベッドに座った自称姉が膝の上で組んだ両手をもじもじと動かしている。初めてのシチュエーションに面食らっているのだろう、少し不安げに見える。

 

――お名前はなんですか?

 

「まだ決まっておらぬ」

 

――年齢はおいくつで

 

「さて……かつての自身と今の私は一緒に出来ないからな。今のこの身で語るなら生まれたばかりの赤ん坊ではないか――」

「はい、しゅうりょー!」

 

 カメラを手に自称姉に様々な質問を投げていた一花が高らかに声を張り上げる。危ない発言が出てくる前に引く。わが妹ながら素晴らしい危機管理能力だ。今の構図で実年齢が0歳は色々不味いからな。色々。

 

 というか自称姉の外見的にそもそも今の構図は不味いだろう。だって今の流れ、中学の頃川沿いで拾ったDVDの――

 

「……ところで一花。今のやり取りとよく似た内容のものを過去に俺も見たことあるんだがお前はそれをどこで知ったのかな。怒らないから正直に言ってごらん?」

「実家のお兄ちゃんの部屋の机の引き出」

「ストップ。それ以上いくない」

 

 兄のデリケートゾーンを踏みにじるなんてとんでもない妹だ。訴訟も辞さないし必ず勝利する確信がある。

 

 それはそれとして今日は、久しぶりに実家に戻るか。

 

「ところでこれは何をしているんだ? 弟がたまに喋っている?機械とよく似ているが」

「んー、姫がこういう人なんだよって紹介をね、みんなにしようと思うんだ!」

「紹介……はて。誰もいないように見えるが。ふぅむ」

 

 不思議そうに首をかしげる自称姉をしり目に一花はあーでもないこーでもないと頭を悩ませ始める。今やろうとしているのは延び延びになっていた自称姉の動画デビューだ。

 

「本当はもうちょっと早くお披露目したかったんだけどね! お兄ちゃんも元の姿に戻れないし! あ、姫そうそう。ベッドの上でこう、漫画を読む感じ」

「40層フィーバーは予期できなかったからなぁ。なぁ一花、アングルおかしくないか?」

「大丈夫! 絶対領域の魅せ方はわかるから! 夏コミでカメ子に学んだ私の撮影技術は完ぺきだよ!」

 

 あーいいねーかわいいよーと自称姉をおだてながらカメラを回し続ける一花になにが大丈夫なのか疑問に思うが、こんだけ自信満々ならまぁ大丈夫なんだろう。多分。

 

「それで、撮影したらどこに投稿するんだ?」

「んー、お兄ちゃんのチャンネルに投稿する予定。姫とお兄ちゃんの関連性を強化したいしね!」

「おかのした。結構久しぶりに動画投稿するな」

「そうだね。前が動画配信者旅行の時だったかな? もう少し投稿したいけど今はみんな忙しいからね!」

 

 配信者の皆で旅行。懐かしいな、最初はバイクや車で移動してたのに途中で高速が高速じゃなくなったんだったか。結局ダンジョン間を移動する魔導ヘリに乗って北海道に渡ったんだよな。40層の改修工事を請け負ってくれている現場犬さんとはあそこで初めて会ったんだったか。結構長く付き合ってるように感じたが、まだ会ってから1年も経ってないんだな。

 

 あの時のメンバーといえば、そういえば最近姫子ちゃんを見ないな。同じ大学に通っている一花からは元気に頑張ってると聞いているんだが、夏休み前は結構な頻度で顔を見せに来ていたのに最近は全然遊びに来なくなったのだ。エルフ化してすぐの頃にお見舞いにきてくれてはいたんだが……

 

 カチャカチャとパソコンを動かして動画配信サイトを開く。大丈夫だとは思うが、少し心配になってしまったのだ。サイト内を確認すると、ちょうどライブ配信を行っているらしい。近況確認ついでに久しぶりに姫子ちゃんのチャンネルにお邪魔させてもらおうかな。

 

 カチリと動画のサムネを選択し動画を開く。画面にはここ最近顔を見なかった姫子ちゃんがダンジョンプリンセスの格好でゲーミングチェアに座り、目を真っ赤に充血させながら小学生くらいの少年が出るアニメにかぶりついている姿が映っていた。

 

――うん。元気そうだな!

 

 妹分の成長を噛みしめながらそっとブラウザを閉じる。成長、なんだろう。多分きっとメイビー。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。