奥多摩個人迷宮+   作:ぱちぱち

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誤字修正、ドッペルドッペル様、244様ありがとうございます!


第三百五十七話 5倍役満

「うちが絡んでるのはお前が原因なんだが」

「いきなりっすね」

 

 前置きのように一言置いて、真一さんは事の経緯を話し始めた。

 

 某世界一有名なネズミの企業がマーブルと合併したのは互いに求めていたものを補い合える関係だったからだ。青少年部門を強化したいネズミーさん所と基本的に資金難で配給に問題があったマーブルが手を組んで現在の復讐者たちという一大コンテンツが生まれた。これは両社の目論見以上の結果と言えるだろう。

 

 だからこそ今回その一大コンテンツを、しかもその集大成ともいえる作品が来年出る段階でマーブル社をネズミーさんの所が手放すというのはかなりおかしな話だったんだが、実のところマーブル作品の映像化についてはこれまで通りネズミーさんの所が配給も含めて担当してくれる予定だという。

 

「まぁヤマギシブラスコはエネルギー事業が主力だからな。畑違いの分野に関しては専門家に任せる方針なんだ」

「じゃあなんで買収なんかかけたんですか? 結構大きな金額だったんでしょ」

「ブラスコの、というよりは世界冒険者協会絡みでな。冒険者のイメージ戦略に扱ううえで、マーブルとそれに付随する形でネズミーさんの力を借りたいらしい」

「な、なるほど……」

「ブラスコ側ではなくヤマギシブラスコが絡んでる理由もわかるだろ。お前がどう思いこもうが冒険者の顔役はお前で、ヤマギシチームだ。ヤマギシの名前が出せるヤマギシブラスコがマーブルの親会社なら通せる話も幾らかあるんだと」

 

 冒険者のイメージアップに関しては、俺たちヤマギシも様々な取り組みを行っている。なんせ一般人から見た冒険者は道端に人間サイズのホッキョクグマが歩いてる、くらいの脅威度があるんだ。一度悪いイメージを持たれてしまえば一気に排斥されかねない。解剖されかけた記憶は今も俺の脳内にしっかり残っている。

 

「で、ここまでが表向きの理由だ」

 

 ケイティやウィルの奴が頑張ってるんだな。そう思おうとした矢先に真一さんはちゃぶ台を返すように言葉を放った。

 

「なんでもネズミーさんの会社内で結構大きな動きがあるらしくてな。きな臭くなってるからそれらしい理由をでっち上げてネズミーさんの所とマーブルの距離を開けておきたいらしい」

「……あの、それ俺が聞いてもいい内容です? 右から左に受け流しちゃいたいんですが」

「モロにお前が理由だから聞いても良いぞ。ブラスコ側、というか世界冒険者協会としては、お前をモチーフにしたキャラクターを使った映画を今の流れでネズミーさんの所に作られるのが嫌なんだと」

「俺マジでそれ聞いていいんですか!?」

 

 悲鳴のような声を上げて尋ねると、真一さんはケラケラと笑って手を振った。どちらかが分からない反応は止めてくれ。

 

 

 

「ネズミーというか、米国の映画界自体がちょっとおかしい流れなんだよね。多様性を表現するとかなんとかって」

「少し待て。言葉の意味を思い出す……多様性、か。人が複数居るなら違いが出る。当たり前のことだと思うんだがそれが弟とどう関わりあうんだ?」

「その当たり前の事を大真面目に主張しないと駄目な国なんだよね、米国って。で、お兄ちゃんは色んな意味でそっちの主張に使われそうなのが問題! アジア人でしょ、女装するでしょ、ショタにもなったし魔法も使えて親しい女性の影も形もない! 5倍役満だよ!」

「なんの役満なんですかねぇ」

 

 あとさらっと魔法が使えるをその枠組みに入れるんじゃない。女装に関しては、まぁ、うん。そこ言われると震え声で変身だから、としか答えることが出来ないんだが。

 

 それと親しい女性ってなんだよ。俺のSNSや通話アプリには100名を超える女性の連絡先が登録されてるんだぞ。

 

「大体冒険者か仕事先の人でしょ」

「はい」

「……お兄ちゃん、身内以外の女の人とさ。二人きりで出かけたことってある? あ、ごめんやっぱいいわ」

 

 そう口にする一花の表情は優しかった。

 

 馬鹿にするなよ、そのくらい。二葉……は家族だし、シャーリーさんと各地のダンジョンに……は仕事か。アガーテさんとは二人きりで研究室に……あれも仕事だ。

 

 あれ。もしかして俺、齢20を超えて異性とデェトをしたことがない……?

 

「というわけで冒険者の看板的な存在だから、お兄ちゃんには変な政治色を持ってほしくないってのが冒険者協会の要望なのね。イメージは大事って事」

「ふむ。政治はどこもややこしい事ばかりだな……どうしたイチロー、わなわなと震えて。ポンポン痛いのか?」

 

 衝撃の事実に気付き震えていると、二葉が心配そうに声をかけてくる。ありがとう。お腹は痛くないんだが心がちょっと風邪をひきそうなんだ。

 

 異性と出かけた経験を指折り数えてみるが、どれもこれも複数人でのお出かけか仕事上のやり取りしか思い至るものがない。一番それらしいやり取りをしたのが二葉との奥多摩散策ツアーってなんだよ。

 

「お兄ちゃん」

「なんだいシスター」

 

 そんな俺の内心をくみ取ってくれたのか。一花はポン、と俺の方に手を置いた。

 

「姫子貸したげるから、原宿あたり一緒にブラついてきなよ。朝帰りでもいいぞ!」

「お前の中では姫子ちゃんをどう扱ってるんだ???」

 

 にやりと頬を歪ませて勝手に親友を投げ渡してきた妹とは一度腹を割って話さないといけない気がする。

 

 あ、こら二葉。朝帰りなんて言葉はラーニングしないでよろしい。教育に悪いから! ぺっしなさい!




朝に更新する余裕がないんで今更新
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