奥多摩個人迷宮+   作:ぱちぱち

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先週は更新が一日遅れてしまったので今週は一日早くしました(妄言)

誤字修正、見習い様ありがとうございます


第三百五十九話 なんで現実が創作物超えるんだ

 ダンジョンが現れた。

 

 自分で言っておいてなんだが、もし5年前の俺にこの事を伝えてもアニメの見過ぎか漫画の読みすぎだとでも返していただろう。その結果として俺や恭二が巻き込まれ、魔法の力に目覚めてダンジョンを攻略し始める、なんて続けたらなろう小説かなにかかと鼻で笑うに違いない。

 

 だが現実としてそれは起きて、俺と恭二はダンジョンに足を踏み入れ、魔法が発見され、それらとダンジョンから産出されるアイテムは世界の構造を一気に変革させていった。ダンジョンが出現して3年が経つ現在ですら40層の発見のようにまだ新たな発見は多くあり、これから先もどんどん世界の価値観はダンジョンによって書き換えられていくだろう。

 

 つまりどういうことかというと、3年前と現在では社会常識そのものが大きく変わっているという事だ。

 

「一番大きいのはやっぱり魔法でしょうね。ダンジョンに入る人間はやっぱり限られているわけで、当然その内実なんてのはイメージしにくかったりします。でも魔法、それに魔力に関しては臨時冒険者のお姉様方って実例が近くにいるでしょ」

 

 ピン、と一本指を立ててダンプちゃんが語り始める。俺たちに語りかけながらカメラワークも意識している、まさに業界人と言うべき姿勢だ。

 

「臨時冒険者ってのは大した制度ですわ。お試しダンジョンって感じで。1から5層までのモンスターならバリアとアンチマジックが使えれば危険もありませんし、一度の冒険でもある程度魔力が実感できるくらいに成長できる。なんならお肌に影響が出るレベルで効果が期待できる。そして一度ダンジョンに潜ったお姉様方は二度目、三度目を希望して冒険者の道に。日本の冒険者が女性多めなのは間違いなくこの制度があるからだと思いますわ」

「なるほど、わかりやすい」

「日本国の元首は探窟者を求めているということか」

「……あの、フタバちゃんはともかく先輩が感心するのはどうかと思うんですが」

「お兄ちゃんも恭二兄ちゃんも利害でダンジョン潜ってるわけじゃないからね! 趣味でやってるからそういうのあんまり興味ないんだよ」

 

 いや、会社に利益をもたらすくらいの感覚は持ってるから流石にそこまで断言されるほど趣味でダンジョン潜ってるわけじゃないんだが。

 

 恭二は知らんけど。

 

「信じられん速度でコメント欄動いてるな。読めない読めない」

「趣味でダンジョン冒険は衝撃的だったようだね。ふんすふんす」

「なんでお前が偉そうなんだよ」

「コホン。あー、続きいいっすか?」

「あ、ごめん。いいよ、お願い」

 

 偉そうに控えめな胸を張る一花に呆れていると、姫子ちゃんがわざとらしく咳ばらいをしてそう訊ねてくる。もちろん邪魔するつもりはないので先を促すと、姫子ちゃんはしからば、と前置きを置いてから少し間を開け、チラリとノーパソの画面に視線を送ってからゆっくりとした口調で話し始めた。

 

 多分、視聴者が聞く態勢になってるかを確認したのかな。プロの配信者の心構え、というやつなんだろうが参考になるな。

 

「さっきの続きに戻りますが、魔法という実例が身近に存在するのが大きい。臨時冒険者も含めて、簡単なものも含めて魔法が使える人間は日本全体でももう数百万ほどに増えてます。来年には1千万の大台に乗るって言われてるんで10数人に1人は魔法が使えるんですね、日本人って」

「あ、もうそんなに増えてるんだ?」

「年がら年中ダンジョンは盛況ですからね。臨時ではなく職業として冒険者登録している人も1万人以上居ますし、誕生してわずか3年足らずで冒険者って職業は急速に日本社会に根付いていってます。小学生の将来なりたいものランキングでは動画配信者と並んで冒険者が上位に来ていますし、この流れは一過性のものではないでしょうね」

 

 そこで一度言葉を切って、姫子ちゃんは「つまりは」と一つ言葉を置いて呼吸を整えた。

 

「現代ものや現代ファンタジーといった名称の、現実(リアル)を扱って世界観を構築する作品は軒並み究極の選択肢を迫られたんですわ。ダンジョンに関して作品内で扱うか、完全に無視するか」

「……あ、ああ。そうなるのか」

「スポーツものや恋愛もの、学園ものといったまだ影響が少なそうなものでも結構な激変があったんですが、バトルものなんかは悲惨です。とある御仁のせいで『まぁ、これくらい現実でも出来るんじゃね?』なんて無理やり陳腐化させられて、なんで現実が創作物超えるんだと一部界隈では話題になってます」

「割とそれはよく言われてる気がするけどね。将棋とか野球とか」

「そっちの二つはマジでなんなんでしょうね(素)」

 

 とある御仁……おそらく恭二のことだろうな。俺は関係ないとして、事実は小説より奇なりなんてことわざもあるくらいだ。創作物を現実が追い越すなんてそれほど珍しい事じゃないだろう。多分、おそらくきっとメイビー。

 

「そういった先達の混乱を見てきたからでしょうかね。ここ2年ほどで連載が始まった漫画は最初からダンジョンありきの設定で始まるものが多いんですが、ヤマギシから新発見の報道が発されるたびに新展開がよく起こってて見てて面白いですよ」

「現実に創作物が合わせていくスタイルか」

「まぁ中には『並行世界設定があるからセーフ!!!』って現実ガン無視してストーリー進めてる作品もありますけどね。FG○とか」

「あの作品は仕方ない。というかF○Oって現代ファンタジーだよね。世の中自体がファンタジーになったらジャンルってどうなるんだろ!」

「もうファンタジーじゃなくなっちゃったからなぁ。現代ものになるんじゃないか?」

 

 現実世界の動きで一つのジャンルが消えたのか。改めて考えると凄い時代を生きてるんだな、俺たち。

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