第六十三話 レベル30到達
3月。
ゼネコンの方々がクソ寒い中川向こうの山を整地しはじめたり、新ビル棟建設のための穴掘りなどをするためにやってきた。
お陰で2月に一時落ち込んでいたコンビニの売り上げがV字回復して店長の顔色が元に戻っていた。赤字になっても大して問題はないけど、やっぱり気分的にね。辛かったらしい。
新ビル棟一階には、冒険者たちのためのアンテナショップが出来る。
俺達が実際に使っている装備や武器、ダンジョン用の電気カーゴ車や、最近日本の会社が開発してくれたダンジョン仕様のSUVなんかも展示される予定だ。
このダンジョン仕様のSUVなのだが、実際に車検が通る形で作ってくれたそうでなんと街中でも乗ることが出来るらしい。
見せてもらったらサファリラリー車のようにデコレーションされており、俺達の装備を作ってくれている各社のスポンサーデカールが貼られていてやたらとかっこいい。
早くこれが運転できるようになりたい。街中でこれを乗り回したら気分良いだろうなぁ。
因みに建設会社の人たちにはダンジョン上の寮を借り上げてもらっている。空いてる物件は効率よく回さないとね。
さて、久々のダンジョンである。
3月の間、ゴーレムのインゴットを回収する以外のやる事がなくなった俺達はこの期間に一気にダンジョン攻略を進めた。
21層は石造りのダンジョンらしいダンジョンだ。道幅は狭く、時たま出る広間では敵が待ち構えている。
最初の21層では中学生ほどの大きさの狼が相手だった。コイツは接近戦主体だとかなりの難敵になるだろう。
まあ、フレイムインフェルノを進路に置いたら完封できるんですがね。
22層では3メートルちかい上背を持った熊が出てくる。
こいつらを突破した後に続くのはサソリ、でかいカニ、マンティコア、ケルベロス、ワーウルフ、ワータイガー・・・・・・そして30層のボスはキマイラだ。
人獣系のドロップは剣など。魔獣は牙やら甲羅やら。30層のボスのキマイラは毛皮をドロップした。
この毛皮なんだが、耐魔性に優れた素材ではある。あるのだが、今の防具にアンチマジックをかけた方が良いんだよね。
一応研究用に確保して使い道を探しているが・・・・・・いっそ貴重な毛皮のコートとして売り出した方が良いかもしれんな。
そして4月。
日本冒険者協会は銀座で売り出されてるオフィスビルを20億くらいで買って銀座支部を作った。むしろ本部じゃね?という位立派な建物なんだが、奥多摩の方を本部にしたいらしい。
全ての始まりの地だからってのもあるらしいから、まぁ気持ちは分かる。
まぁ、対外的な事務なんかは銀座でやって、奥多摩の方は完全に司令部って感じになるらしいんだがね。
このビル購入にはヤマギシも出資しており、「銀座にビル持っちまったぜぇ」と社長がにやついていた。協会所有なんでヤマギシがどうこう出来る物件じゃないんだけどね。
とりあえずビル購入の際の式典に出席した折、銀座の刀剣商の所に「近所にうちの支部が出来ました」と報告を入れたらお茶とサイン色紙をすっと出された。
手形でいいかな?あ、すんません真面目にやりますわ。
SUVの提供の条件が11層でのCM撮影だったので撮影隊を連れて11層へ。
俺達は御揃いの装備を着てやたら細かい絵コンテに従って数日、撮影につきあった。勿論運転手はシャーロットさんだ。美人は絵になるからね。
ただ、問題は隣に俺が座らされた事なんだが。知名度を生かせ?なら何か変身させろよ。素顔で有名人っぽく振舞うの苦手なんだから。
次の日、本当にマーブルに許可を貰ってきたらしく何故か1人だけ外を飛びまわらされた挙句、途中で疲れたような小芝居をして車の中に入れてもらおうとするスパイダーマンというなんとも言いづらいCMが出来てしまった。
完成した瞬間にデータを送られたらしいスタンさんからめっちゃ面白いってメールが来たけどあれでいいのか?いいのかなぁ・・・・・・
テレビでもオンエアされるらしいけど、ネットでは全編公開されてるんだそうだ。ヤマギシチーム全員がこんな形で動画に映るのは中々少ないから少し楽しみだぜ。
さて、次に法律でもちょっと進展があった。
対ゴーレム用の武装、RPG-7を冒険者免許持ちなら購入が出来るようになりそうなのだ。
自衛隊の調達に強い商社が、代理権を取得したそうなんだが。今現在はヤマギシ関係の人間しかそこまで進めていないから、暫くはウチがお世話になるんだろうな。
そしてこれは日本の話ではないのだが、ウィルとケイティのチームがついにゴーレムのマップに入ったらしい。
ウィルには事前にレクチャーをしていたので問題ないと思うが、ゴーレムには不用意に接近戦を仕掛けないよう注意と、おめでとうという祝辞を送っておく。
また、この事によりうちの法務部も動き出す必要があった。
「よし、じゃあペレットの特許を申請するか」
今現在のヤマギシの飯の種、ペレットの国際特許取得である。
予め、ヤマギシ以外の人間が11層に突入したらいつでも申請できるようにしていたのだが、まぁやはり最初はアメリカだったか。
ウィルとケイティはうちのチームでも少し磨けば通用しそうだしなぁ。
ヤマギシのペレットの燃料制御の仕組みは、メイジ系のドロップ品である魔法の杖を細かい爪楊枝のような枝に破砕して、ひとつに<フレイムインフェルノ>発動のエンチャントを、もう一つに<マジックキャンセル>の術を施して、それらをペレットに当てる事で燃やしたり消したりをしている。
ケイティなら、恐らく初見で見破るかもしれない。魔法に関して恭二がそう感じたなら恐らくそうなのだろう。
そんな彼女は自身に起こった奇跡を大々的に発表した。
不治の病を克服したこと。それが魔法によって行われたこと。
欧米には宗教的理由で「魔法」を嫌悪する感情があるらしい。そうした意識の改善と、迷宮や冒険者への恐怖感を払拭するための政治的な策らしい。
そして彼女達世界冒険者協会は、医師による回復魔法の習得への支援を打ち出している。
すでに数人の医師がキュアを習得しており、中々の滑り出しを見せているようだ。
彼女達が行っていることは魔法の右腕を持つ俺にとっても他人事ではない。早速応援のメッセージを動画で配信して少しでも追い風が吹くように応援しておく。
次の日、何故か恭二宛ではなく俺宛にケイティから連絡が来た。
「イチロー、ヤリすぎ!」
「ごめん意味分からん。なんで?」
たどたどしい日本語で俺に文句を言ってくるケイティに疑問符を投げると、途中で通訳のお姉さんに代わる。
言われたキーワードでネットを検索すると、『世界のヒーローが認めた!』『医療に新しい風を!』という文面で色々な国から世界冒険者協会への支援が開始されたらしい。
そっと画面を閉じ、通訳のお姉さんにケイティに代わってもらう。
「マジごめん」
「自分のエーキョーリョク、考エル大事!」
その後も延々愚痴られたので謝り倒す羽目になった。
は、はは・・・・・・はぁ・・・・・・
キャンセル:文字通り一度発動した魔法を打ち消す。アンチマジックの応用版