「ヤマギシストアーは全国11か所に存在するダンジョン傍に中核店とし、今回加入したおたふくショップ加盟店を改装した店舗が一般店という形になります」
「中核店というと大規模な店舗を用意するという事でしょうか」
「その中核店がないエリアはどういう扱いに――」
ヤマギシビルの会議室ではここ数日、毎日のようにヤマギシ・おたふくショップ双方の代表者たちが顔を合わせ今後の経営戦略について話し合いが行われている。ヤマギシ側は実務担当としてリーダーさん、それに営業担当の下村さんと部門代表を二人も出しており、今回のヤマギシストアー計画への本気度が伺える体制だ。
「中核店ではヤマギシが開発・生産している冒険者向けの装備の販売も手掛けます。これらは今までダンジョン傍に設けられていたヤマギシ直売店での販売でしたが、今回のヤマギシストアー拡大に伴い直売店の業務であった装備品の販売及び魔石やドロップアイテムの買取業務も統合運営していく予定です」
「それらの物品は一般店での取り扱いを行わない、ということでしょうか?」
「行わない、ではなく免許の都合で行えない、ですね。冒険者の装備品はダンジョン近郊の専門店でなければ取り扱いできません。刀や槍などの武器もありますので」
ダンジョン前の受付とかだとロケットランチャー持ったフル武装の連中がたむろしてたり銃刀法? なにそれ美味しいの? みたいな状態だからな。基本的に装備品は購入した後はホームのダンジョンで預かってもらうのが冒険者の基本だ。
「一般店で装備品の販売は出来ませんが、ヤマギシだからこそという商品の取り扱いはもちろん計画しています」
とはいえ、ヤマギシといえば冒険者。冒険者といえばヤマギシというくらいには知名度がある以上、ヤマギシの名を関したコンビニでダンジョン由来の物品がなければ片手落ちというものだろう。
「ヤマギシが一般市民向けに開発した商品、例えば
「
「安定供給が出来ないものを強みとするのは難しいのではないでしょうか?」
「流通に乗せられる数があるなら……しかしこれだと通常の商品などとの需要の落差が大きくなるのでは」
「目当ての商品がいつも売り切れている、ではせっかく来店いただいたお客様にも迷惑をかけてしまいますからね」
ヤマギシ側が提案する新機軸に対して、おたふくショップ側の代表がコンビニチェーン経営者としての視点から意見を口にして、ヤマギシ側とのすり合わせを行っていく。一番問題になるのはやはりヤマギシのブランド力を生かした商品だ。ヤマギシの名を関する店舗である以上、ダンジョンに関連した商品はどの店舗にも置きたい。
だが
「なぁイチロー」
「どうした二葉。お腹がすいたのか?」
「食事は食べたばかりだろう。そうではなくてだな」
高級そうな生地で作られたオーダーメイドらしきスーツに身を包んだ二葉は、目の前で喧々諤々と踊る会議を眺めながら、端的に心情を吐露するようにつぶやいた。
「我らは何のためにここにいるのだ?」
「椅子を温めるためさ」
なにせヤマギシ側もおたふくショップ側も実務を俺たちに求めてはいないんだからな。上座に用意された椅子の前で会議前に挨拶をして、それ以降は両陣営の会話を聞いて「あー、なるほど完ぺきに理解した」って体で頷いていればミッションコンプリートである。
なんなら着ぐるみでも身代わりにしてしまってもそれほど困らんだろうが、一応とはいえ代表取締役を受けてしまった以上は最低限の責務として会社の今後を決める会議には居なければいけないだろう。
世のこども経営者はみんなこういう風景を見ていたのかなぁ、大変だねぇとぼんやり考えながらお茶をすすっていると、リーダーさんがこちらに視線を向けて口を開いた。
「もちろんヤマギシ側でも需要を満たせるかという点は考慮しています。弊社役員である鈴木一郎は代表取締役に就任すると共に副社長に就任する鈴木二葉と鈴木エルフ兄妹としてヤマギシストアーのマスコットを兼任します」
「ブホッ!」
「わっ!?」
いきなり飛び込んできたリーダーさんの言葉に思わずお茶を吹き出すと、隣に座る二葉が驚いたように椅子から飛び上がった。
「鈴木エルフ兄妹のグッズ商品は魔力抽出後の屑魔石など現状使い道が少ないダンジョン産物を使用! 現在開発中のものも含めて十数点が開業までに用意できるでしょう」
「おおっ!?」
「げほっ、げほっ!」
「どうした一郎、背中さするか?」
「さらに少年飛翔を擁する出版社と契約を交わし、今月からインターネット上で鈴木エルフ兄妹を主人公とした漫画がWEBサイトの週刊少年飛翔+で連載開始します! この漫画作品は一話更新事に小冊子として全国のヤマギシショップに配布し販売。単行本が出るまでヤマギシストアーに行かなければ紙媒体では読めないためプレミア感を演出することも可能です」
待ってなにそれ聞いてない。
リーダーさんの言葉におたふくショップ側の代表者たちがわいわいと盛り上がっている中、気管に入ったお茶のせいでそう声を上げることもできない。
せき込む俺の視線に気づいたのかリーダーさんはこちらに視線を向けると、にっと白い歯を見せて笑顔を浮かべぐっと親指を立てた。ウィンクまでついている。
リーダーさん、もしかして俺が喜んでるとでも思ったのだろうか。思ってそうだな。うん。
献本として送られてきたという漫画はその場で見ることが出来たが非常に出来が良かった。というかこれ週刊少年飛翔で連載してるヒーロー学園物の作者やんめちゃめちゃ面白いと思ったわなんでこんなの書いてんだ。え、むしろ向こうからやりたいと言われた……?
こんなの絶対おかしいよ(錯乱)