奥多摩個人迷宮+   作:ぱちぱち

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第六十四話 世界冒険者協会・始動

第六十四話 世界冒険者協会・始動

 

 

「世界冒険者協会の正式発足の発表会とレセプションがあるそうだ。イチロー、キャサリン嬢から絶対に来いだと」

 

「あっ、ハイ」

 

 

すっごい嫌な予感がするが流石にこれは断れん。良かれと思ってとはいえ、結構な迷惑をかけちまったしな。

結果自体は良かったんだろうが、支援を貰いすぎてハードルがガン上げされてしまったらしいし・・・・・・うん。俺もようやくリザレクションっぽい魔法を使えるようになったし、医師の教育も手伝える所は手伝おう。

そうそう。ヤマギシチームはついに全員がリザレクションに相当する魔法を覚えることが出来た。

相当するってのはまぁ、俺の魔法が例によってバスターから出たりネットに付与されたりと明らかに腕によって効果や出方が変わるから何だが。回復力的な意味合いだと相当といえるのでこう表現している。

このリザレクションの取得だが、一つ驚いたことがあった。

なんといつもならそのズバ抜けたセンスでさっさと魔法を覚えてしまう真一さんが苦戦する中、恭二、沙織ちゃんに続いて一花が先にリザレクションを覚えたのだ。

 

 

「私が何べんバンシーに凸したと思ってんの?」

 

 

周囲の驚きと祝いの言葉に対し無表情でそう応えた一花に、その場に居た一同が沈黙した。

その後、一花式の【痛くなければ覚えませぬ】教育法により全員リザレクションを扱えるようになったが、覚えが悪ければその分自身のメンタルにダメージが蓄積されるこの教育法はかなり人を選ぶという事で一時封印。

リザレクションについては基本的に他者のリザレクションを受けてイメージを持ち、キュアやヒールを習熟していって発展させるという形式で教えていくことになった。

こっちは沙織ちゃんが覚えた形式だし、とっても穏便な方法だ。

 

 

「まぁ、正気で人が救えるんならそれがいいよね!手っ取り早くブラックジャックになれる機会を貰って、その人が正気で居られるんならね」

 

「気合の入った奴しか来ないだろうしなぁ・・・・・・」

 

 

封印解除はそれほど遠くないかもしれない。

 

 

 

さて、話を世界冒険者協会の正式発足について戻す。

この会合には現在ヤマギシで中核に居る人間皆に招待状が届いているが、流石に大工事を行っている最中に責任者が誰も国内に居ないのはちと困る。

という訳で国内の営業を担当している下原のおじさんが責任者として残る事になった。

勿論経理をしているおばさんも一緒だ。

 

という訳で社長とヤマギシチーム、父さん母さんという面子で俺達は数ヶ月ぶりにアメリカの地を踏むことになった。

会場はテキサス州東部の町、ヒューストンのヒューストン・コンベンションセンター。

成田空港にウィルが手配してくれたプライベートジェットでの渡米である。

 

 

『やぁ、よく来てくれたね!』

 

『よっすウィル。二ヶ月ぶり?』

 

 

空港に到着した俺達をウィルが出迎えてくれた。それは良いんだが背後の撮影陣は何だ?

フラッシュで眩しくて目が開けられんのだが。

 

 

『まぁ、有名税って奴だよ。ニューヨークの件、あの後凄い反響だったんだ。あれを許可した市長の再選は固いだろうね。選挙前にまた呼ばれるかも?』

 

『あれ疲れるから嫌だ』

 

『疲れるで済むだけ凄いよ。僕なんか終わった後暫く歩けなかったし・・・・・・ただ、人生最高の瞬間だった』

 

 

俺とウィルが握手を交わす瞬間、狙ったように一斉にフラッシュが焚かれる。

ウィルも米国では注目の人物だし、美味しい絵なんだろうな。それは良いんだが俺達はどこから外に出ればいいんだ?

この撮影陣の中突っ切るの?ボディーガードつけて?・・・ええっと、はい。

 

 

 

 

会場に隣接しているヒルトンを用意してもらい、一先ず俺達は旅の疲れを癒す。

そして次の日、前夜祭のパーティーに出席することになった。

 

 

『やぁ、ヤマギシの皆さん!お久しぶりですな!』

 

 

会場にはブラス家の面々がいた。相変わらず恭二が抱きつかれてる。

以前お世話になった時と全然・・・・・・いや、なんか妙に若くなってるな。これは相当数ダンジョンに行ってそうだ。

 

 

『イチロー!お久しぶり!』

 

『やぁジェイお久しぶり。元気だった?』

 

 

綺麗なブロンドに映える赤いドレスを着たジェイと挨拶を交わす。俺は以前仕立ててもらったスーツに着られている状態で役落ち感が半端ない。

もうちょっとおしゃれも磨いた方が良いんだろうか・・・いや、目立つのは変身しているときで十分だろう。

 

 

『ジェイ姉ちゃんお久しぶり!すっごい綺麗だね!』

 

『ありがとうイチカ。イチカもその着物、とっても素敵よ!』

 

 

ブラス家のご婦人方に挨拶をしてきた一花が会話に加わり、ジェイが応える。

一花は今日、何故か1人だけ着物を着けてきた。しかも割りと渋めの色合いの物をだ。

キャラ付けがどうとか言ってたが正直こいつが何を考えているのかたまに分からなくなる。まぁ、何かしらの意味はあるんだろうが・・・

 

 

『あー、すまないジェニファー嬢、マスターイチカ。イチローをお借りしても?』

 

『ジャクソンさん、お久しぶりです。イチローに何か?』

 

『・・・あ、おけおけ』

 

 

会場に入るまでは一緒に居たが、その後挨拶回りに回っていたウィルが笑顔で声をかけてくる。

怪訝そうなジェイに対して、一花は何かを察したのかすすっと離れていった。

 

 

『イチロー、君と是非話したいって人が列を成してるんだ。僕の友人達でね。ちょっと来てくれないか?』

 

『あ、ああ。構わないけど』

 

『ごめん、今日中に終わるとは思うから』

 

『・・・・・・ん?』

 

 

言われた言葉が理解できずにウィルに付いて行くと、会場を出て大会議室と書かれた部屋に案内された。

部屋に入った瞬間、すぐそれと分かる熱気を感じる。

埋め尽くす人、人、人。100名近い人間が会議室に犇き、それぞれが思い思いに自分の最愛のヒーローの姿をしている。

 

 

『皆!カメラの準備は万全か!』

 

『てめぇウィル!』

 

 

ちょっ、おまっ!ストレングスまで使って肩を掴むな!あ、おいばかやめあーっ!

 

 

 

結局日付を回るまでバカ騒ぎに付き合わされることになり、翌月には写真集を発表することになりました。

後半は俺も楽しかったけどさ。楽しかったけどさぁ!




一花式教育法:バンシーの泣き声を無防備に聞く、リザレクションで復活の繰り返し。普通に病む。

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