奥多摩個人迷宮+   作:ぱちぱち

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つまり金曜日に更新すればいいんだな!!!()


第三百七十七話 ハリウッドに来てほしいんですけどおぉぉ!!?

『今年こそアカデミー賞に来てくださいねぇぇぇ!?』

「いや俺、選考対象に入ってないでしょう。本編の方は一瞬だけしか出てないし」

『前回も復讐者本編でノミネートされてましたしぃい!!? MAGIC SPIDERがぁぁぁ!!? 興行収入記録とか色々塗り替えたんですがぁぁぁ!!???』

 

 映画の番宣のためにNYのスタジオに足を運ぶと、そこで出待ちしていた某ネズミで有名な映画会社のお偉いさんにバチクソキレられた。

 

 何を言っているか分からないって? その意見は正しい。なぜなら体験した俺も分かってないからだ。余りにも唐突な名刺渡しに挨拶からのブチギレ金剛で頭がフリーズしていたと言うべきか。

 

ヤマギシ(そちら)さんには再三授賞式に来てくれって言ってるんですけどぉぉぉ!!!? なんでライダーの方は映画祭に出てぇ!!? 復讐者(こっち)だと会場にすら出てくれないんですかねぇぇぇ!!!?』

「あ、はい。その、すみません」

『すみませんじゃなくてぇぇぇ!!!? 来週ハリウッドに来てほしいんですけどおおぉぉぉぉ!!?』

 

 詰め寄るというよりはもう密着するというレベルで迫ってくるお偉いさんは、異変に気付いたスタッフさん達に取り押さえられてどこかへと引きずられていった。最後の最後まで『ハリウッドに絶対来てくださいねぇぇ!!!?』と叫び続ける姿は怖いを通り越して畏怖すら覚えてしまいそうだった。

 

『はい、ハンカチ』

「……見てないで助けてくださいよスタンさん」

 

 その様子をいつも通りのスマイルで見ていたスタンさんは、俺の言葉に肩をすくめる。

 

『僕も同じ意見だからね。去年のアカデミー賞でせっかく作品賞を取ったのに君が居なくて寂しかったんだよ?』

「いやぁ、そのぉ」

『来週は一緒にレッドカーペット歩こうね?』

「はい」

 

 有無を言わさぬスタンさんの言葉に即座に首を縦に振る。弱腰だって? はいかイエスしか答えられない雰囲気だったんだ。仕方ないんだ。

 

 

 

 この鈴木一郎には苦手なものが山ほどある。例えば出来立てのはずなのに生ぬるくてなんか臭いラーメンやDMで延々自撮りを送り付けてくる人なんかは出来ればもう遭遇したくないくらいに苦手だ。

 

『まぁ、本当にエルフなのね。妖精みたいだわ』

『とても可愛らしいわ。うちに持って帰りたいくらい』

「それは駄目だ。私はもう鈴木の家の娘なのでな」

 

 そんな苦手なもののなかでもこういう社交的な場というのは、特に苦手な部類だ。

 

 世界的に有名なふかふかの赤い絨毯の上を二葉と一緒に歩いていると、様々な人に声を掛けられる。誰しもが知っている著名な俳優や監督といった所謂セレブと言われる人種だ。中には一緒に仕事をした人も、初めて出会った人もいる。

 

 そういう人たちに囲まれて、数多のカメラを向けられて、その中心に自分が居るというのがどうにも違和感を覚えてならない。自分が行ってきたことが今の自分を形作っている。それは理解しているのだが、とはいえこの環境にいつまで経っても慣れることが出来ていないあたり、俺は根っこが庶民のままなんだろうな。

 

 そんな俺とは違って、今回パートナー役という体で連れてきた二葉は見事なまでに環境に適応している。元々生まれが良いからだろうか。二葉はこういった社交的な場所にも苦手意識がないらしく、一度専門の講師にマナーについてを教わった後は、ほぼ完ぺきと言っても良い所作で周囲に溶け込んでいる。いや、むしろ適応しきったせいで二葉を中心に人の輪が出来ているというべきか。

 

 二葉はすごいなぁ。二葉は社交界の王女様だ。ぼくにはとてもできない。

 

『それでどうだい。メジャーリーグの最新作、出てくれる決心は。リックの奴もユニフォームに袖を通しても良いって言ってくれてるんだ』

「いやーキツいっす」

『あんな破産野郎なんてどうだっていいさ。なぁイッチ、ドラマシリーズに興味はないか? きっと君の経歴にもプラスになるよ』

 

 ふたばはすごいなぁ。こんなのどうやってさばくんだよ。ぼくにはとてもできない。

 

『おいおい、うちの若いのに手を出してんじゃないぞ』

『しっしっ。あっちいけ』

 

 愛想笑いと魔法の一言「事務所通して」で嵐の中を必死にやり過ごしていると、心強すぎる援軍がやってくる。ビシッとしたタキシードに身を包んだ鉄男さんと雷神さんだ。今を時めくハリウッドスターの登場に周囲の観衆やメディアが湧きたつ中、二人は俺の両隣に立つと俺に近寄ってきていた人々をどんどん追い払っていく。

 

「なんて頼りになるんだ(とぅんく)」

『お前、もうちょい人の裁き方覚えろって』

『イッチがダメすぎるだけだぞ?』

 

 呆れたような二人の言葉に口笛を吹いて誤魔化すと、周囲の観衆がワァッとなぜか盛り上がる。今のやり取りでなんか盛り上がりポイントあったか……?

 

 そのまま二人にガードしてもらう形で会場へ向かうと、会場の入り口にはダンジョンに入る際によく見る物体、魔力測定器が置かれていた。なんでこんなところに? と首をかしげていると、隣を歩く鉄男さんがため息交じりに口を開く。

 

『今年からは魔力持ちかどうか測定しないと入場すら出来ないらしい。ほら、去年冒険者がデカいテロやらかしただろ』

「ああ……アレですか」

『そういやイッチはあの現場に居たんだっけか。動画で見たけど、酷い事件だったな』

 

 労わるような口調でそう言って、鉄男さんはポンっと俺の肩を叩く。確かにひどい事件だった。あの事件以降、米国では魔法の取り扱いについての法整備が急速に進み始めたくらいには、ひどい事件だった。

 

 冒険者は強い。魔力を十分に吸収した冒険者の身体能力は一般人の数倍以上だし、魔法だって使える。上位冒険者ともなれば銃器で武装した軍人でも太刀打ちできないほどの強さになる。それこそ戦車や戦闘機と比較するレベルの戦力だ。

 

 そんな冒険者が一切の枷もなく市街地でテロ行為を行えばどうなるか。ニューヨークで起きたアレは、世界中にその事を知らしめてしまった。

 

『ま、銃と違って魔法は使えるかどうかが見た目じゃ分からんからな。ああいうのも必要だろ』

「ですね。誰が魔力を持ってるか、運営側も把握しておきたいんでしょう」

『おい、イッチ! 鉄男! これ魔力数値も出るタイプだ、勝負しようぜ! お嬢ちゃんもやるだろ?』

「勝負事と聞いては黙っていられんな。イチロー、鈴木家の誉れを見せつけてくるんだ」

『いや、お嬢ちゃんもやらないと中に入れんぞ』

「あ、はい。鉄男さん、行きましょうか」

『……そうだな』

 

 先行していた雷神さんと二葉の呼び声に、俺たちは暗くなりそうな話題を打ち切った。法整備だとかそういう話はケイティたち上層部の頭のいい人たちが頑張ってくれるだろう。俺たちみたいな現場の人間は決められた事を粛々とこなしていくのが一番だ。

 

 所でこの魔力測定器、少し前の型で1千万Bまでしか測定できないタイプで俺が測定すると壊れる可能性があるんだが大丈夫だろうか。たぶん二葉も。

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