奥多摩個人迷宮+   作:ぱちぱち

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日曜日は忙しくなったので土曜日更新

誤字修正、244様ありがとうございます!


第三百七十八話 俺、なにかやっちゃいました?

 手をのせた瞬間に魔力測定器は爆発した。

 

 ドガン、と勢いよく爆発した。

 

 先に魔力検査を受けて『くー、ついに10万Bに到達したぜぇ!』『クソッ! 最近仕事続きで伸びがイマイチだ!』と楽しそうに前を歩いていた雷神さんと鉄男さんが驚愕の表情で後ろを振り向いて次の瞬間『『おお、神よ……』』と十字を切るくらいに爆発した。

 

 検査に立ち会う係の人や後ろに並ぶセレブの皆様、会場を見に来た観衆やメディアの皆様が一斉に押し黙り視線を俺に集めている。

 

「俺、なにかやっちゃいました?」

 

 そんな状況だったんだ。ついこんな言葉が俺の口から出てきても、それは仕方のない事だと思うんだ。

 

 

 

 もちろん怒られました。

 

「そういえばこの体(ショタ)になってから魔力測定したの初めてだったなぁ。失敗した」

『結構な値段の機械だったんですがね?』

「スンマセンッシタ」

 

 若干半ギレになってる警備責任者さんとの話し合いの結果、不可抗力であったとの言い分が通り俺は晴れて無罪放免――とはいかなかった。流石に冒険者協会が保有する最新型には劣るものの運営さんが用意していた魔力測定器は民間が手に入れられる最高品で、お値段なんとうん千万という代物だ。わざとじゃないんです、でぶっ壊した責任を免れるなんて流石に無理だろう。

 

 それにこれは相手に伝えていないが、今回の測定器が俺や二葉クラスの魔力を図り切れないかもしれないってのは分かっていたことだ。事前に危険性を運営側に伝えておけば回避できたかもしれない事態。それを考えれば俺の方に落ち度があるし、粛々と運営側の要望を受け入れることになった。とはいえ流石に爆発するのは予想外だったんだがね(震え声)

 

『お会いできて光栄だよMS! 握手も一緒にいいかい?』

「もちろんです。“バリア!”」

『こっちも頼むよMS! どうだい、今度共演でも』

「仕事の話は事務所経由でオナシャス」

 

 という事で、責任を取る形で俺は全手動バリア・アンチマジック付与機として会場の前に立つことになったのだ。自慢じゃないが俺のバリア強度は冒険者でも5指に入るし、アンチマジックだってかけることが出来る。

 

 そう、この姿(エルフ)ならね!

 

 本来の姿だと魔法全般は右手から出てくる、とか縛りが色々あったんだが、ショタエルフフォームだとこれがなくなりほかの冒険者たちと同じような魔法の使い方が出来るようになる。わざわざロックマン(メガマン)に変身して魔法チャージしてブッパなんてやらなくてもいいのだ!

 

『世界一高給取りな警備員だね』

「今日の勤務だけで機材の弁償費をカバーしてもらえるらしいですからね。あれ多分、結構なお値段するでしょ」

『君を雇用できる値段って考えれば格安だと思うけどね?』

 

 そうして一日警備員の仕事をこなしていると復讐者たちのスタッフが会場にやってきた。彼らと一緒にやってきたスタンさんは会場入り口で警備員のタスキをかけた俺を見て爆笑した後、俺の姿をまじまじと眺めながらこう口にする。

 

『それで会場にはいつ入るんだい? ずっとここに立ってるわけにもいかないだろ』

「俺としてはずっとここでも良いんですが」

『もしそうなったら流石に運営に抗議するよ。君「MAGIC SPIDER」で主演男優賞にノミネートされてるんだから』

「なにかの間違いですよね?」

『再三言ったけど本当の事だからね?』

 

 死刑を被告に伝える裁判官のようにスタンさんが言った言葉が、俺の精神を引き裂いていく。両手で顔を覆って天を仰ぎたくなる気持ちだ。MAGIC SPIDERは確かに良い出来栄えの映画だったが、これは監督や演出スタッフが俺の芋演技でも映えるような撮り方をしてくれていたからのことで、主演である俺はろくに演技の勉強も稽古もせずに本番に臨み、周囲に言われたままに場面をこなすので精いっぱいだった。

 

 そんな体たらくで完成した作品で、作品賞をもらうならともかく演技を評価されて賞を貰うなんていくらなんでも恥ずかしすぎる。

 

『いや、あれ以上のハジメの演技はほかの誰にもできないと思うけどね?』

「そりゃそうですよあれ演技なんてしてないんですから。ほぼ素の俺でカメラの前に立ってましたもん」

『そこなんだけどなぁ?』

 

 復讐者たちと同じくMAGIC SPIDERの撮影も務めた監督さんがぼやくようにそう呟いた。

 

 やめてくれよ、そういうこと言われるとなんだか嫌な予感がぷんぷんしてくるんだよ。

 

 

 

 例えばきらびやかな会場の中、米国でも最上位に位置する俳優や映画関係者たちの視線を一斉に向けられ、金ぴかに光る裸の男性の立像を渡されるとかな!

 

『今の気持ちはどうですか?』

「現実感がありません。ぼくはついさっきまで会場の入り口で警備員をしていた20代の男なんですがなぜこの場に立っているのでしょうか? 今から会場に入る人にバリアを付与しないと」

 

 司会を務めるコメディアンの言葉にそう答えると、会場中からドッと笑い声が溢れる。ついさっきまで会場入り口でバリアとアンチマジックを連打していたのは事実なんだが、それを踏まえて彼らは俺の発言をジョークだと思ったらしい。一切合切本音である。

 

『この受賞を伝えたい方はいらっしゃいますか? 例えば一緒に来場されている素敵なご婦人とか』

「二葉は物見遊山でやってきただけのエルフなんで多分この受賞がどれくらいの事なのかは理解してません」

 

 またドッと笑い声が上がった。米国人の沸点はどこにあるのか疑問だ。

 

「強いて誰かに伝えたいと言えば、親友で同僚の山岸恭二に『次はお前だブタ出てこぉい!』(日本語)と伝えたいですね」

『今のは日本のことわざかなにかですか?』

大体あってます(ジブリです)

 

 どうせ画面の向こうでは大笑いしながら俺は休暇だとでも言ってるんだろう。いつか絶対にこっちにも引きずり込んでやるからな。

 

 そういえばケイティが魔法に出会うまでを主題にしたドキュメンタリー映画もノミネートされていたな。今日は顔を合わせてないが会場内にはいるだろうしケイティを巻き込めばワンチャン恭二をこの道に引きずり込めないだろうか。

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