奥多摩個人迷宮+   作:ぱちぱち

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前回ウィルに連れ込まれた後の話。
書きたい事を書いたら作中時間が一日経ってなくてビビる。
皆様良いお年を。


誤字修正、日向@様、244様、アンヘル☆様ありがとうございます!


第六十五話 アメリカの馬鹿共(褒め言葉)

第六十五話 アメリカの馬鹿共(褒め言葉)

 

 

「ねっむ・・・」

 

昨日はあのまま撮影会と、そして何をとち狂ったのか『冒険者たちの夜明け』やら『新時代到来』やら色々と英語で書かれたプラカードを持って町を練り歩く羽目になった。

大丈夫なのかウィルに確認したらちゃんと許可は取っているとのこと。

実際、外に出るといつの間に行っていたのかコンベンションセンター前の道路が交通規制されており、空には取材ヘリがぱらぱらとその様子を撮影しているのが見える。

ウィルから渡された資料によればコンベンションセンターの周囲をぐるっと大回りして最後はセンターの隣にある公園に入り、そこで実際に参加している冒険者による決起会のような物を開くらしい。

そう。このレイヤーども全員、アメリカの協会に所属している冒険者らしい。

 

 

「ノリいいなお前ら」

 

『魔法の存在を知り、君の存在を知った瞬間にダンジョンに駆け込んだ同志たちさ。愛すべき馬鹿どもだよ!』

 

『お前もだろうが!ちくしょう!俺にも変身を教えてくれ!』

 

『俺が先だ!』

 

『すまないが予約制なんだ。頑張って次の日本研修枠に受かるよう努力してくれ!』

 

『おれも美少女にマスターって言いたおい馬鹿やm』

 

 

怪しいことを言い出した馬鹿に周囲が制裁を加え始めたので俺も加わっておく。

何と言うか。恭二と学校で馬鹿をしていた頃を思い出す馬鹿騒ぎだ。

ウィルやケイティという友人達のお陰で最初に感じていた胡散臭さというのは無くなっていたが、少なくとも所属している人間は好きかもしれん。

まぁ、今現在ここにいる連中が海の物とも山の物とも分からないダンジョンにロマンだけで突っ込む馬鹿どもだからそう感じているだけかもしれないがな。

 

 

『・・・で、私はこの格好で良いの?』

 

『ヒュー♪似合うじゃないかジェニファー嬢!』

 

『ジェイで良いわ。インヴィジブル・ウーマンね・・・大好き♪』

 

『君の場合はインヴィジブル・ガールだね。初期の名前なんだ』

 

 

青いスーツに輝く胸元の4の文字。宇宙忍者ゴームズのヒロイン、インヴィジブル・ウーマンだ。カートゥーンネットワークでよく見たなぁ。

ムッシュムラムラってたまに言いたくなるよね。

 

 

『いやファンタスティック・フォーだからね?』

 

『ゴームズだとスージーだっけ』

 

 

日本への輸出版はたまに意味分からん名前になるからなぁ。

さて、今回の変身は前々から練習していたハルクで行こう。ウィルはマイティ・ソーに変身しているしね。

そう。ソーとハルクが並ぶとなればまぁ、やることは一つだ。

ようウィル!ちょっと面貸せや!

 

という訳で『チキチキ!ヒーローだらけの鬼ごっこ!』が突如勃発。コースになっているルートを俺とウィルでチャンバラしながらその後ろから他の冒険者が行進するという前代未聞のパレードが始まった。

ウィルはバリアは勿論ストレングスもウェイトレスも使えるから殴ってぶっ飛ばすには最高なんだよね。俺も勿論同じ状態だから、兎に角ぽんぽん飛んでぽんぽん戻ってくる殴り合いが始まった。

右腕だけハルク状態で他の部分は通常サイズなんだが、まぁ変身で若干見た目は弄ってるしね。外からはスーパーサイズのハルクとウィルのガチの殴り合いに見えるだろう。

 

そうやって殴り合いをしながら、時たま肩を組んだり、右腕だけでウィルを持ち上げたりとパフォーマンスを行って居ると、何かバリア覚えたって連中がどんじゃん参戦してきてハルクVSマイティソーから大乱闘スマッシュブラザーズになったんだけど。

ジェイ、お前までか・・・バリア使えるんだね。透明化の魔法とか出来たら完全に持ちキャラになるかもな。

あとお前ら!物は壊すなよ?フリじゃないからな?・・・・・・理解したなら良し!かかってこいやぁ!

 

会場の公園についた頃には皆ボロボロになっていて、俺達は肩を組み、教えてもらったアメリカの国歌を歌いながら公園に入場した。

勿論ケイティにしこたま怒られた。

ただ、決起会は素晴らしい盛り上がりを見せたし、今回の行進は米国中で凄く反響が大きかったそうだ。

中にはこの時の経験を元にバリアの他にストレングスを身につけたという冒険者も居り、世界冒険者協会の冒険者の質を高める事にも繋がったから許して欲しい。

駄目?駄目かな?・・・・・・駄目かぁ。

 

正座してケイティに怒られる(ハルク)(変身したまま)とウィル(マイティソー)(変身したまま)の姿がシュールだと周りに笑われ、笑った奴らもケイティの逆鱗に触れて正座させられ、ついでに何故かジェイまで正座させられて、この瞬間世界冒険者協会におけるヒエラルキーが決定することになった。

まぁ、元々ケイティが代表みたいなもんだし変化なしか。

 

 

 

 

結局その後は汚した道の清掃を行わされ、夜になったらなったで今度は決起会に参加した馬鹿共の内輪騒ぎに連れ出され、部屋に戻れたのは結局深夜になってしまった。

 

 

「きのうはおたのしみでしたね」

 

「シバいたろか小娘」

 

 

いつの間にか部屋に帰ってぐっすり眠っていた一花のにやにや顔に若干殺意すら覚える。

寝不足気味の頭にヒールをかけて疲れを飛ばす。右腕が通常モードの時にヒールを使うと掌がぽぅっと白く光るので患部に手を当てる必要があるが、触っている部分が気持ちいいからよく使用している。

あと光る掌をかざすって如何にも『治療の魔法を使ってる』感があって好きなんだ。

今日はこの後に冒険者協会の設立宣言が行われる。それを見た後はコンベンションセンター各所でワークショップや何やらが開かれる予定だ。

なんでも俺達が使っている装備やグッズが多数出展され、モデルには全て俺達が使われているらしい。

普段は真一さんや俺が矢面に立ってるからクローズアップされない恭二を煽れるチャンスだ。気合を入れて行こう!

 

 

「流石にそれは引くわー」

 

「うん。俺もそう思う」

 

 

前言撤回。程ほどに頑張ろう。




ファンタスティック・フォー:スーパーヒーロー4人が主役の作品。日本だと『宇宙忍者ゴームズ』という題名で放送され、ガンロック(本来の名前はザ・シング)の「ムッシュムラムラ」という決め台詞が大流行したらしい。言いたくなる気持ちはわかる。

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