皆様、夏風邪?には気を付けて……
誤字修正、日向@様ありがとうございます!
一週間も続いた開封配信が終わった翌日。
「米軍基地で爆破事故が起きたらしいね。物騒な世の中だ」
「あ、おはようございます。昨日までは大変だったな……朝起きたらニュースは見るようにしてるよ。冒険者関連の奴は特に」
大きなイベントの後は振り返り雑談が大事、という一花の謎の助言に従って今まで使ったことのなかった生配信という機能を使ってみている……んだが、これ予想よりも大変だな。
今まで経験したことだとラジオで話すのに近いのかもしれないが、これはラジオと違って台本がない。その場その場で自分の言葉で画面の向こうに居る何万もの人々に語り掛けるわけだから、話し手の負担はラジオの数倍に近いかもしれない。
一人で延々壁に向かってしゃべり続けられる人なら何とかなりそうだが、俺にはそんな特殊技能はない。そして困ったときの時事ネタも使ってしまった以上残された手段はただ一つだ。
「という訳で今回は話し相手にニーサンこと鋼の錬金術師のエドワード・エルリックくんを呼んでみました」
『ドーモドーモ』
「すみません、ウチ課金制じゃないんで」
『変わるかどうかは俺と一郎の気分次第だぞぉ。ほーら媚びろ媚びろ。あと今、豆粒ドチビっつったやつ名前覚えたからな?』
スパチャさせてくれ、という声に俺が答えている間にニーサンが観衆を煽ると一斉に様々な言語の謝罪の言葉が画面のコメント欄を流れていく。早すぎてコメントが追えないよニーサン!
スパチャというのは配信している相手に対して使えるもので、言ってみれば配信者へお金を投げ銭するシステムの事だ。俺たちヤマギシが利用している動画配信サービスは視聴者数に合わせての広告料とスパチャによって金銭を得ることが出来る仕組みで、配信者と呼ばれる人々はこれで生活をしている人も多い。俺は現在、配信者としてはそれほど熱心に活動してないのでこのシステムはオフにしてあるのだ。どちらかというと動画配信は広報用に行っているものだから、ここで収益を上げても……という意識もある。
あと、ヤマギシは本業の方の儲けが大きすぎて税金がちょっとシャレにならないので自重するようにとも言われているのだ。設備投資にガンガン回してもそれ以上に利益が出ているから大変らしい。動画の収益まで入れたらちょっと儲けすぎてしまう、なんて営利企業としておかしな経営判断が下されるくらいには。
それくらい立派な収益源である動画配信だが、姫子ちゃん辺りは自身のダンプちゃんねるにて学校の費用と生活費を稼げているそうだ。彼女の場合はこれにダンジョンでの収益もあるから恐ろしいくらいに利益があるらしく、最近は通帳を見ずに買い物をするようになったと『おほほ』笑いで言っていた。
その笑いは修羅場っていて機嫌が悪い一花が自身の通帳をバンッと姫子ちゃんの顔面に叩きつけることですぐ引っ込んでしまったが。
一花の場合、長い事教官訓練の訓練官として仕事をしていたのだがその給料が凄いんだと。
『あ、それだよそれ。ヤマギシの給料体系。たぶん皆聞きたいんじゃないか?』
「え。成果給というか歩合給だけどそんなの知りたいの?」
『知りたいに決まってんだろ! お前は冒険者の天辺みたいなもんなんだからお前の稼ぎがイコールで後輩の夢に繋がるんだぜ?』
ニーサンの言葉に賛同するようにコメント欄が加速する。だから早すぎて全部読めないんだって。
だがまぁ、一部読み取れた文章を見るにその辺を知りたい人は割と多そうなのだろうか。それなら公開するのもやぶさかではないのだが、こういう時に通帳とかを見せびらかすのもなんか詐欺の広告っぽくて嫌だ。
そこら辺の考えを読み取ってくれたのか、ニーサンはコホン、と咳ばらいを一つしてアナウンサーがマイクを向けるかのように俺に右手を向けてくる。こういうアドリブを利かせてくれるからニーサンは便利なんだ(本音)
『それで今年は……映画が売れそうだしこれくらい?』
「あ、野球形式で聞いてくるんだ? 復讐者たちの出演料だと最初が一千万ドルでMAGICSPIDERが3000万ドルかな」
『おいおい、ここはもっとオブラートに包んで推定年俸をだなぁ』
ピンッと指を3本立てたニーサンに思わずそう零すと、コメント欄がまたすごい勢いで動いていく。確かに凄い金額だから、驚く気持ちはわかる。だが、今回の話はあくまでも冒険者としての立場での収入がメインの話。
「副業の収入としては多いと思う。でもこれが本業じゃないからね」
後輩に夢を見せる。なるほど、確かにそれは重要なことだ。冒険者なんて命がけの仕事に就くのなら当然、対価がどうなるのか。そこは気になってしかるべき所だろう。
「まず、これは永続的にそうじゃないと前置きしておくんだけど、40層までアタックする場合、最低で億は超えるんだよね。ヤマギシチームだと」
『それはメンバーで収入を割っての話か?』
「いや、ヤマギシからの手当てだけで1億以上かな。そこから途中で取得した魔石やドロップ品を売るともっと増える」
俺の言葉に反応するようにコメント欄が読めない速度で流れていく。一度のアタックで手取りが億、という言葉が衝撃的だったのだろう。実際、魔石の値段はその魔力保有量で変わるから、ゴーレム以上の魔石なら一個で一千万とかいう値段になったりする。トレントや大妖精辺りの魔石なら、それこそ一つで数億を超えてしまうだろう。
この値段で本当に売れるのかと思われるかもしれないが、これは冒険者協会の最低買取価格だから必ず買い取ってもらえるし、なんなら民間のオークションなんかに流れればこの数倍の値段になったりすることもあるらしい。
ただ、これやると税金的な意味で大変なことになるらしいので推奨はされていない。協会で買い取ってもらった場合は税金とかがかなり優遇されるらしいし30層以上にアタックする冒険者はほぼ協会に買い取ってもらっているそうだ。
「30層より下に進む冒険者は皆、大体これくらいは一度のアタックで稼いでると思う。流石に今は落ち着いてきたけど、10層より下に潜れる冒険者ならゴーレム狩りで一体倒して一千万、なんて言われてるんだ。億って数字は冒険者ならそれほど遠い数字じゃないよ」
『10層より下に潜れる冒険者なら、だぞ。そこらへん勘違いして無理にダンジョン突っ込むなよ! 一から冒険者を志すならまずは臨時冒険者に申し込んで、イケると思ったら予備校なり上級冒険者に弟子入りするなり準備を怠るな!』
俺の言葉にフォローを入れるようにニーサンがそう言葉を続ける。こういうアドリブを(ry
「あとは魔樹みたいなダンジョンでだけ取れる資源なんかもあるからね。より深くに潜れるようになれば潜れるようになるだけ利益を上げる手段は増えていく。それが今の冒険者だね」
『そうそう。今の話みたいなのが聞きたかったんだよ。そうだよな?』
ニーサンが問いかけるも、もうコメント欄は読むことも出来ないくらいの速度でずっと流れ続けている。いや、読むこと自体は出来るんだけど言葉を理解する前に次の言葉が飛んできてしまうというかね?
まぁ、こんな話ではあるが好評なら良かった、って所だろうか。
『ところで実際、去年の年収っていくらくらいだったん?』
「百回以上はダンジョンに潜ってるからそれで想像してほしいかな」
ちなみにヤマギシチームの手当てが高額なのはヤマギシの税金対策も兼ねてある、という言う必要もない情報はもちろん言わない。ヤマギシはまだまだ規模が小さくて社員全員に年3回ボーナスを支給したりしている。それでも魔力発電業だけで大幅黒字らしいので、今年の年度末は税務署がわざわざ職員を送り込んできて会計とやりあっていたとかなんとか。
俺としては三食満足できるくらい食べられる額貰えればそれで良いんだけどね。
とはいえお金はないより合った方が困らない代物。内部の人々にもお金で苦労したエピソードの人が結構いるから、溜まっているお金は無駄にしないように全会一致で決まり、現在はミギーとかの一部の人格が運用をしてくれている。俺はその辺気にしない方が良いとも言われてるから、正直いまの年収がいくらなのか実は知らないんだよね。
ミギーが「0が増えるのは楽しいな、イチロー」とか言ってたから多分増えてはいるんだろう。たぶん、きっとメイビー。
結城「利益が出た分はマスメディアの株を集めよう」
御坂「売らない? 売りたくなるような話のネタは色々あるけどどれから聞きたいのかしら」
横島「まぁまぁ落ち着いて。ウチらもメディアの皆さんとは仲良くやらせて頂きたいと思っとりましてな、どうですこの後ザギンでシースーでも食いながら。払いは任せてもらって構いまへん」