奥多摩個人迷宮+   作:ぱちぱち

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誤字修正、244様ありがとうございます!


第三百九十話 専売

「アンチマジック発生装置は冒険者協会での専売って事になった」

「残念でもなければ当然って感じだよね!」

「正直、助かった。流石に販売までは責任取れんわ」

 

 アンチマジック発生装置が完成してから少し。冒険者協会との数回のやり取りの結果、アンチマジック発生装置の販売は各国の冒険者協会のみで行う事が決定した。ヤマギシは製造を担当ということだ。

 

 今の状況で各国での販売まで行うのは、いくら何でもヤマギシのキャパシティーをオーバーしてしまう。そのためこの決定がなされた時には各部門から安堵の吐息が出たそうだ。

 

『これは当然の判断でしょう。ヤマギシ一社にだけ責務を負わせて、万一ヤマギシが機能不全を起こせばそれこそ一大事ですから』

『それにこれはかなり美味しい話でもあるからね。アンチマジック発生装置の販売事業は魔石買取・販売と並ぶ、財政の柱に成り得る事業だよ。確かに今は危機的状況だが、これを乗り越えれば冒険者協会は更なる発展を迎えることが出来るだろうさ』

 

 この事を雑談がてら話していると、カミーユさんとファビアンさんがそう口にした。同じフランスの冒険者でも専業冒険者のカミーユさんと二足の草鞋で冒険者協会職員をしているファビアンさんとでは結構見方が変わるらしい。

 

 ヤマギシとしては販売時に起きるだろういざこざを考えると、販売を委託できるのは非常に助かる。会社前の座り込みがまた増えちゃうだろうし。

 

 会社前の座り込みもなぁ。前はあれだけ元気に騒いでたなんとか団体とかそういう人たちがいきなり居なくなってからはめっきり元気もなくなって、今じゃただの厄介ファンみたいな人ばかりだ。このまま自然消滅してくれるのが一番楽だから、変な刺激を与えたくないんだよね。

 

 そういえば座り込みで一番うるさく騒いでた人たちが完全に居なくなったの、九州沖で原潜が沈んだ辺りだっけ。流石にあの状況で冒険者関連に喧嘩を売るのは不味いって思ったのかな。

 

「まぁ、お兄ちゃんがそう思うんならそうなんじゃないかな!」

「一花。兄の心を読むのはやめてくれとあれほど」

「や、今の普通に口に出してたでしょ?」

 

 教官と書かれた腕章をつけた一花がそう口にすると、カミーユさんとファビアンさんが無言でうんうんと頷きを返した。あ、あれ? そんなつもりは欠片もなかったんだが。

 

「お兄ちゃんさ。ここ最近、たぶん内部の誰かと話してるんだろうなって感じで声が出てること結構あるよ?」

『事情を知らない人から見たら正直、ちょっと怖い絵面です』

「oh...」

 

 妹と教え子たちの視線が痛い。確かに内部の誰かと話してる時に外でも話をしてると混ざっちゃう時はあるけど、自分でコントロールできてるつもりだったんだがなぁ。

 

 

 

 妹と教え子の前で大きな恥をかいた翌日。

 

『口には出してなかったわよ?』

「なにそれ怖い……」

『今のは口に出してるけど』

 

 ここ最近日課にしている41層までの素潜りを終えた後、昨日の件を美琴に相談したら予想外の返答が返ってきた。あと今の言葉はちゃんと意識して話してるから流石に把握できてるからね?

 

『昨日、一花に言われて僕たちも気づいたんだけどさ。確かにここ最近、一郎と僕たちの会話に周りの人が反応してるってのはあったと思うんだ。一花が言及するまで気のせいかなと思ってたんだけど』

 

 美琴と入れ替わるように表に出てきたピーターがそう言葉にすると、内側の方から賛同の声が響いてくる。おかしいな、サトラレに変身した覚えはないんだが……あ、サイコメトラーには変身できるからそっちから変化したとか。

 

『エイジは相手から読み取る専門でしょ』

「もしかして能力が進化したとか可能性あるんじゃないか? たしか作中でパワーアップしてたろアイツ」

『それを言うなら変身元の能力進化じゃなくてあんたが進化したんじゃない? Bボタン押さなかったの?』

「人間からポケモンに変身した覚えもないんだよなぁ」

 

 とはいえ自分の体のびっくり人間加減には慣れてきているので、もしかしたらなにかの拍子にハイヒューマンとかなにか別人種に進化している可能性は否めない。ハイエルフもあり得るか。

 

『僕らも考えてみたんだけど、予想としては40層を攻略した辺りだと思うんだ。あの現象については未だに仮説しか出せてないしね』

『二葉と一郎が繋がったあの瞬間、鈴木一郎という体は確かに“組み変わった”んだ。今までよりもダンジョン、というよりは魔力と僕たちが呼ぶ力との結びつきを強める形で』

『俺たちの存在も含めて、ありとあらゆる事象は魔力って存在が元になってる。今回のコレもまず疑うべきはそこだろうな』

「つまり全部魔力って奴が悪いんですね、わかります」

 

 ピーターに結城さん、それにニーサンと俺の中でも“考える”ことに優れたキャラクターたちの出した結論を、俺は無条件で受け入れた。彼らの思考や判断は俺の記憶を元に行われるとはいえ、彼らと俺が同時に同じことを考えたとしても出てくる結論には天と地ほどの開きがある事は理解している。当然その言葉に対して、俺は全幅の信頼を置いている。

 

 あと、今のところ全部魔力のせいなんだって判断になるのは頷けるところしかないからね。俺と恭二は最初から最後までダンジョンと魔力に振り回されてここまで来たんだからさ。

 

「どうなってるかはともかく、何が出来るか、何をやってしまっているのかは早めに把握しとかないとな」

 

 流石に内心が全部駄々洩れってわけではなさそうだが、ふと考えたことが周囲の人間に漏れるとか場合によっては人生オワタってレベルの罰ゲームだからね。防げるなら防いどかないと……頭にアルミホイル巻く感じで魔鉄巻いたらイケるかな?

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