奥多摩個人迷宮+   作:ぱちぱち

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新年明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。


誤字修正、日向@様、244様、ふがふがふがしす様ありがとうございます!


第六十六話 レセプションパーティー

第六十六話 レセプションパーティー

 

 

「こんな事は許されざるよ」

 

「ざまぁ」

 

 

無表情でワークショップ前に佇む恭二に俺は満面の笑みで親指を立てる。

ワークショップの中の一つに魔法を使った技術や燃料ペレットについて取り扱う場所があり、ここにこれまでに開発された魔法の公開されている物の一覧表があったのだが。

開発者の項目が俺が一つ、ケイティが一つ、残り全て山岸恭二という名前で埋め尽くされておりご丁寧にファイヤーボールを5つ空中に浮かべている恭二の写真が添えられているのだ。

今現在一つの魔法を同時に5個も多重展開できる化け物は恭二しか居ないため、実質オリジナル魔法扱いで『フィンガー・フレア・ボムズ』と書かれているがこれ作った奴の悪意というか情熱が透けて見える気がする。

因みに俺の名前が入っている項目は『魔法の右腕』となっており、形態変化後の魔法はそれぞれ魔法の右腕の一形態とされている。ケイティの物はリザレクションだな。

 

で、こんだけ名前が堂々と目立つ所にあるのを、注目されるのが大嫌いな恭二が嫌がらないわけがない。

というかあからさまに恭二に擦り寄る奴が増えてきている。さっきまで社長の方にバンバン行ってたんだが社長、まだ翻訳つかえないからなぁ。

ワークショップで大いに名前を売ったヤマギシチームはその後の夕方のレセプションパーティーでも引っ張りだこになった。社長以外。

 

あんまりこういう場が得意じゃない恭二と沙織ちゃんにはジェイとジョシュさん(呼び捨てでも良いと言われたが真一さんより年上だし・・・)がついて周囲を抑えてくれているから、真一さんとシャーロットさんに偉そうな人たちが集中してて大変そうだ。

 

俺?昨日の馬鹿ども関係で周りを埋め尽くされてて騒がしいけどとても楽しんでます。

流石に昨日のメンバーが全員居るわけではないが、ダンジョンに継続的に挑戦できる余裕のある奴はやっぱり生活に余裕がないと厳しいからな。

そこそこ金のある親を動かしてこの冒険者協会に協力させているって連中も結構居るんだ。

 

 

『最初は道楽にちょっと金を出すかって感じだったのに、急に掌返されたのは面白くなかったけどな』

 

『俺もだ!最初は「この金額はくれてやるから好きに使え」って感じだったのに、イチローが話題になれば成る程変に力入れてきてよ。何が「次の日本行きには必ず参加しろ!」だ!行けたら行きてぇよ!そしてマスターイチカにグボッ』

 

 

あほな事を抜かそうとした金髪のガリを周囲が蹴りまくって制裁を加える。

俺?勿論参加してる。というか蹴倒したのは俺だ。バリア張ってるし怪我はないだろう。

しかしまぁ。世知辛い話だな。現場はロマンを求め上は結果を求めるのはどこも一緒だけど、どうやらウィルの仲間達はこの会場に参加しているのだろう親たちにはあんまりいい感情を持っていないようだ。

まぁ、ロマンだけでは皆食っていけないからな。ヤマギシも安定して黒字が出せるようになるまでは結構苦労したし。

ゴーレム様々って所だ。

 

 

『ケイティも可愛そうに。キョージにアプローチしたいのに小父様方が離してくれないみたいだ』

 

『お前の方はいいのか?全米ナンバーワン冒険者のウィル君?』

 

『僕はイチロー達のおこぼれで最初にレベル10になっただけだからね。話題性とリーダーシップのあるケイティに話が行くのは当然の事だよ。あとめんどくさい』

 

 

最後が間違いなく本音なんだろうなぁ・・・

ただ、ウィルとケイティでは冒険者としての質がまるで違うし、魔法センスの差はあるけどウィルがそんなに劣っているとは感じないんだよな。

むしろ事接近戦では下手すると俺でも不覚を取りそうな位ガンガン上達してるから、現時点ではウィルの方が総合的に優れているんじゃないかと思ってる。

まぁ、ケイティが忙しくて纏まった時間ダンジョンに挑戦できてないのもあるとは思うが。

 

 

『ま、辛気臭い話はよしておこう。皆、料理をたっぷり食べて体力を養ってくれ。夜は長いぞ?』

 

『イエェイ!今夜こそ帰さないぞイチロー!』

 

『俺未成年なんでそこら辺配慮頼むぞ?ほんとに』

 

 

昨日あんだけ騒いだのになんでこいつらこんなに元気なんだ?

堅苦しい話からスタコラサッサするのは同意だが、こいつらに付き合ってると何時寝れるか分からんしとっとと隙を見て抜け出すとするか。

昨日のジェイを見て思いついたんだが、変身って上手い事調整すれば恐らく透明になれるからな。

探知が使えるウィルにだけこそっと伝えておけば抜け出すのは簡単だろう。

 

 

 

 

 

「お前らひでぇよ。俺だけあんなおっさん達に囲まれてヒーコラ言ってたのに」

 

「お勤めご苦労様でした!」

 

「助かりました!」

 

「あーもー。今日はもう寝る・・・・・・」

 

 

パーティーが終わる直前まで捕まっていた真一さんがへとへとの顔で部屋に引き上げてきた。

サクッと抜け出して部屋でアメリカのTVを見ていた俺と恭二が腰を90度まげて頭を下げると、何か言いたそうにしながらも真一さんは上着を脱いでどかっとソファに座った。

まぁ、ヤマギシのフロントマンは真一さんだからな。どうしても真一さんに集中するのは避けられないし。

 

 

「明日はもう予定もないしこのまま帰るのか?」

 

「親父はな。俺達は一度ブラス家に寄っていく。是非来て欲しいそうだ」

 

「ふーん」

 

 

明日の予定を恭二が確認すると、眠そうな声で真一さんがそう返事を返した。

時差ボケでずっと眠気が取れないんだよなぁ。気持ちは分かる。

今日はもうゆっくりとくつろいで疲れを残さないようにしよう。

 

 

『やぁイチロー!迎えに来たよ!やっぱり皆君と一緒に出かけたいんだって!』

 

 

ウィルェ・・・・・・

結局逃げ切れずその日も朝帰りになりイチカに同じ台詞を言われる羽目になる。今度は無言でアイアンクローしたよ。当然だろ。

まさかアメリカの地で天丼を食らう羽目になるとはこの海の(ry


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