奥多摩個人迷宮+   作:ぱちぱち

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第三百九十七話 師匠の技術はァァァ! 世界イチィィィィィィィ!!!

 40層の街並みは、攻略当初から比べると大きく様変わりしている。ヤマギシが主導で整備を行い道路や宿泊施設を増設しているからだ。

 

 もちろんただ利便性を向上させただけではない。有名なデザイナーに依頼をしてツリーハウスが並ぶ風景を壊さないよう配慮し、道路は自然土舗装材を使ったり足りない宿泊施設も木造で建てたりしているため利便性と景観を両立させた出来栄えに仕上がっている。

 

 ブートキャンプ参加者や月1で来る畜産関係者にも好評。ケイティ曰く気温もほぼ一定という観光地として非常に優れた利点も加味すると、バージン諸島以上の観光地にすることも可能なのだとか。

 

 まぁここを観光地にするのは良いのだが、人が多くなりすぎるとダンジョン攻略以外のやることがまた増えてしまうのと、冒険者関連の施設が使いにくくなるかもしれないという懸念が出てくる。この辺をクリアー出来ないとヤマギシ冒険者部としてはOKは出せない。

 

 さて少し話がそれてしまったが、40層の街並みは様変わりこそしているが、そこに元からあった建物は昔と変わらない場所に置かれている。城からメインストリートを歩き、牧場のある郊外へと抜ける道沿いで一か所だけ、樹木の上ではなく樹木を囲むように建てられた煙突のある家がある。

 

 40層に在住するエルフの一人、親方と呼ばれる鍛冶師が住まう鍛冶屋だ。

 

『…………』

『親方は言っている。なぜ最初に来なかったのか、と』

「うす……」

 

 いつも煙突から煙を吐き出しているその家で、俺は今地面に膝をついて正座している。対面するのは腕を組み、むっつりとした表情で俺を睨むガタイの良いエルフ――親方と、その彼の隣で口を動かさない彼の代わりにぺらぺらと口を回す少年のような体躯のエルフ――狩人の二人だ。

 

『…………』

『親方は言っている。モンスター素材を扱うなら俺以上の奴は居ない。科学だなんだと言ってるが魔法も魔物の知識も碌にない素人が手を出して簡単にやっつけられる問題じゃないんだ、ええ? 今回の件で分かっただろうが今後はモンスターの素材や面白そうな鉱物が見つかったら全部俺の所に持ってこい。ついでに矢じりが足りなくなってきたから魔鉄をもうちっと卸してくれ。“外”だとそんなやっつけ仕事につかえるくらい余ってんだろ? 俺の所も生徒が増えて色々大変なのよ教習受けさせるにも道具は用意してやらないかんからね』

「後半は狩人さんの要望だな??? 道具が必要なら俺か玉座に座ってるカカシ(横島忠夫)に言ってくれ」

 

 もはや玉座が定位置になりつつあるカカシ(横島忠夫)だが、定期的な18禁ご用達()さえ欠かさなければ真面目に働くし気配りも上手いから、こういう雑事なんかを頼んでもちゃんとこなしてくれるありがたいキャラクターなんだよね。18禁ご用達()さえ欠かさなければ。

 

 ヤマギシ職員と40層住人との橋渡しも卒なくやってくれるし、これで女性陣の圧倒的受けの悪ささえなければ、と思ってしまうくらいに頼りになる奴ではあるんだ。その一点が天元突破してるせいでたびたび40層に放り込まれてるけど。

 

『矢じりに関しては了解したが、まぁ親方が言いたいのはだ。俺に任せてくれ、最高の仕事をしてやるって事なんだな……』

「おっと、そうは問屋が卸さない。一路、だまされてはいけないぞ!」

 

 親方の言葉を代弁してペラを回す狩人の言葉を遮るように、女性が鍛冶屋のドアをバン! と音を立てて開いた。

 

 扉の先から現れたのは体躯のわりに大きな所謂魔女帽と呼ばれる帽子をかぶり白衣を身に着けたアガーテさんと、彼女に手を引っ張られる形で鍛冶屋の中に連れ込まれた、緑色のブカッとした、ポケットが沢山ついた作業衣に身を包んだ女性――彼女が師と仰ぐエルフの錬金術師さんだ。

 

『……!』

「師匠はこう言っている。モンスターの素材を扱うなら錬金術師に決まってるじゃないか、と」

『…………!!?』

「更にこう仰っている。『えっ!? たった一日で新素材からツルハシを作る!? 出来らぁ!!』と」

『!!!!???』

 

 アガーテさんはドイツ冒険者協会の会長であり、またヨーロッパ有数の錬金術師として知られている。そんな彼女が師匠と呼ぶこの錬金術師さんはアガーテさん曰く“現代の”錬金術師が目標とするべき、本物の神秘と化学を業として身に着けた錬金術師、らしい。

 

 錬金術とはその名前のように金や銀などの貴金属を人為的に生み出す事を目的とする技術だ。それは錬金術師さん達が住んでいたエルフの国家でもそうだったらしいが、彼女たちにとっての錬金術とは“存在するものをより価値あるものへ”作り変える技術の総称で、最初にそれを志した人物が金を生成したことから錬金術と名付けられたそうだ。

 

 そう。現代の錬金術と違い彼女たちの場合、素材が揃っていれば本当に出来てしまうのだ。金。実際に金を生成しようとするとドラゴンの心臓とか世界樹の雫とかなんかファンタジー世界に出てきそうなアイテムを山ほど使うので俺たちの世界ではまず再現不可能らしいけども。

 

 そんな本物の錬金術師と現代の錬金術師に崇められる存在は、言っても居ないセリフを弟子が勝手に代弁して仲間に喧嘩を売り始めたせいでゆさゆさと弟子の体を揺さぶっている。

 

『!!!?!!??……!!!?』

「わかってますわかってます。私は全てわかっておりますよ師匠。師匠の技術はァァァ! 世界イチィィィィィィィ!!!」

『!!!??』

 

 揺さぶられながら妄言を垂れる弟子に『んなこと言ってないわよ!!!?』と思念波をまき散らす錬金術師さん。アガーテさんはたまに現実と自分の脳内妄想を取り違える事があるから彼女の思念を別の言葉に解釈しているのかもしれない。

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