奥多摩個人迷宮+   作:ぱちぱち

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今回は短め。
まさかのケイティとの会話だけで終わりました。。。

誤字修正、244様、ぼんじん様ありがとうございます!


第六十七話 日本の役割

第六十七話 日本の役割

 

 

数カ月ぶりに訪れたブラス家は相変わらずの大きさだった。わざわざ手配してくれたヘリから降り立つと、昨日は碌に話すことが出来なかったケイティが出迎えてくれる。

他の家族は皆それぞれの役目があるため、今は居ないらしい。まぁ、昨日のパーティーでもブラス家は引っ張りだこだったからな。

 

 

『今回は皆さんご参加頂きありがとうございます!いろいろお話ししたいことがあったのですが、コンベンションでは時間が取れませんでした』

 

 

若干申し訳無さそうに言うケイティからそっと目を逸らす。時間がなくなった理由の一つに間違いなく俺たちの馬鹿騒ぎの後始末も入っているからだ。

 

 

『今日はあちらに居なくてもいいんですか?』

 

 

真一さんが問いかけるとにっこりと笑ってケイティは応えた。

 

 

『基調講演と主要な方々への顔合わせはもう終わりましたから。今あちらにいるのはその他の顔つなぎ目的の方々やウィルのように後片付けを担当している人だけです』

 

 

その後片付け要員は朝の4時まで遊び歩いていたんだけど大丈夫なんだろうか。

 

 

 

 

さて、今回正式に発足した世界冒険者協会は各国の冒険者協会の上位団体として発足された。

すでに冒険者協会が正式に発足し動いているのは日本と米国だけだが、現在準備段階の国は10近くあり、日本の協会の情報を元に各国の協会を指導、運営の補助を行っていくらしい。

これだけを見ると日本におんぶに抱っこのように見えるが、情報提供や人材育成が出来るほどに冒険者協会の形を整えているのが日本しかないため、当面は仕方ないらしい。

ただ、それらの提供を行う代わりに日本冒険者協会は世界冒険者協会から相応の補助を受け、更に下部組織ではなくあくまで独立した団体として世界冒険者協会に加盟しているという扱いになり、かなり特別な待遇を受けることになるそうだ。

 

 

『冒険者協会における日本の役割は、大きく、重要です。タービン発電もそうですが、全世界に先んじて、ファッション、武器、車まですでに用意している。そしてそれら全てに納得できる十分な理由が存在する。まだ浸食の口(ゲート)出現から一年も経っていないというのに。これは驚嘆に値する事です』

 

『米軍にもその辺りのノウハウは渡ってるはずですがね』

 

『軍組織の秘密主義は時として困ったものです。お陰で日本に全て先んじられてしまいました』

 

 

自身の熱弁に対して冷静に返す真一さんに、ケイティは苦笑で応えた。

 

 

『そういえば、米軍からの武器供与を終了するとか?』

 

『ええ。まぁ、ウチもおかげさまで資金繰りに目処が付きましたんで』

 

『それが良いですね。軍組織は政治的な思惑に左右されますから』

 

 

そこら辺の考え方が日本とは全然違うな。日本の自衛隊は本当に不自由な組織でまともに動くのにも苦労するが、米軍はそうじゃない。

高級幹部に至っては政治家とそう変わらないし、議員には軍派閥なんてものもあるくらいだ。

昨日のパーティーにも議員の方々が多く来ていたし、将来は冒険者閥なんてのも出来るかもな。

 

 

 

『先ほど、冒険者協会にとって日本は特別だと言いましたが、それは民間技術だけではありません』

 

 

秘書の人が入れてくれたティーに口をつけた後、ケイティは静かに言った。

 

 

『あなた方チームヤマギシの存在が、正に冒険者協会にとってもっとも特別な存在なのです』

 

 

CCNで放送されながらのダンジョン攻略、魔法の発見・開発、米軍の救助、魔法アイテムの発明、そして世界一有名な冒険者の存在。

世界中の人間が『ダンジョンに潜る者たち』として俺達を思い浮かべる。つまり、今現在冒険者というイメージは=ヤマギシチームになるという事だ。

成る程。上の軌跡だけを見るとハリウッド辺りで映画化されてもおかしくないものだな。もしくは『プロジェクトX』かな。

そう言えばハリウッド化を希望されて断ったとか社長言ってたなぁ。

 

 

『ウチにも来ましたよ。余命2年の富豪の娘が奇跡の完治。定番の泣ける話ですね。3年以内には映画になるかと』

 

『・・・OK出したんですね』

 

『冒険者の宣伝としては格好の話ですからね。社会に受け入れられるチャンスがあるなら、悪い事ではありません』

 

 

そう言ってケイティは凄みのある笑顔で笑った。

笑顔は元々攻撃的な意味合いってあれ、本当なんだな。正直殴り合ってるときのオークの笑顔が可愛く見えるわ。

これで恭二と話してる時はびっくりする位可愛い笑顔を浮かべるんだから・・・

 

 

『あと、出来ればヤマギシの映画もOKを出して欲しいんですが』

 

『それは絶対にノウ』

 

 

真一さんが反応する前に恭二が答えた。まぁ、そうなるとこいつが主役だしな。

昨日のパーティーでさらし者にあった経験が堪えたのか今日の反応はかなり過敏だ。

その引きこもり気質は何とかした方がいいと思うんだがなぁ。

まぁ、意中の人間の不興を買ってまで推すつもりはなかったのかケイティもその後は映画の話はしなくなった。

ただ、俺に『マーブルが動いています』とか言ってくるのは止めて欲しいな。

恭二もそれで元気を取り戻すんじゃない。

 

 


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