奥多摩個人迷宮+   作:ぱちぱち

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誤字と文書修正、244様ありがとうございます!


第四百一話 ずっと頭の中で英雄故事歌ってる

 ジョセフジョースターというキャラクターが居る。ジョジョの奇妙な冒険という名作の第二部主人公であり、第三部でイケジジになったり第四部でショボジジになったりと作中でも屈指の活躍をしている人物なのだが、このジョセフというキャラクターにはある特殊な宿命というかジンクスのようなものがある。

 

 乗ってる飛行機が結構な確率で墜落するのだ。一度目はハイジャックにより、二度目から四度目までは敵対する勢力からの攻撃によるものと飛行機事故によるものは皆無だが、普通乗ってる飛行機が墜落したら助かるわけないんだから4回も墜ちた事があるというのは結構な確率というべきだろう。

 

 なにが言いたいかというとだ。

 

「なぁに、(一回や二回墜落を経験した方が)かえって免疫がつく」

「墜落に免疫も糞もないんだよなぁ!」

『お、おおお落ち着きましょうケイティ! なんとかなる! 私は冒険者! 助けてキョージ!! ……よし、落ち着きました』

 

 爆発四散した右翼とエンジンを眺めながらなんJ語録を口にすると、一花がいつもよりちょっと上ずった声で返答を返してきた。うん、落ち着いているな。こういった大事故現場で最も重要なのはパニックにならない事だけが重要だ。慌てようが動揺しようが、判断力だけは残っていれば割かしなんとか動けるのだ。

 

 なにをすればいいか分からないならケイティのように母国語で思い切り喚いて騒いで吐き出して冷静になるのもありだろう。ただいきなりスンって落ち着くのはビックリするから止めてほしい。

 

「というか、なんでお兄ちゃんはそんなに落ち着いてるかなぁ! 今、明らかに慌てるべき状況でしょ!?」

「いやぁ。なんかこれくらいなら特にピンチとも思わないというか、こういう時に一番敏感なはずのピーターもなんか反応鈍いしこれなんだ……足止めかな。全力でこっちを殺すつもりはないみたいだし、あ、いや。死ねばラッキーくらいには思ってるか?」

 

 絶賛墜落中の飛行機をつかず離れずの距離で付いてくる戦闘機群から、漏れ出る思念を読みほどく。が、なんだか妙にやりづらい。ノイズが走るというか、思念を伝える筈の魔力が何かに遮断されているというか。多分、このせいでうまくスパイダーセンスが働いてない感じ。

 

 今読み取れてるものの殆どは戦闘機のパイロットによるもので、こちらに攻撃を行った仁王立ちの連中からの思念は一人を除いて碌に読むことが出来ていないのだ。

 

『思念を読み取りづらいな』

「魔力波が上手くつかみ取れないというか、なんというか。親方、これは!?」

『親方……私は鍛冶屋ではないぞ弟よ。単純明快というか、力業というか。魔鉄で全身を覆っているのだろうな。一人なんかそれでも漏れ出してる陽気な奴がいるが』

 

 二葉の返答は確かに単純明快だった。魔鉄は非常に魔力伝達が良い金属で、更に魔力を吸収する特性もある。思念は魔力の波によって外に漏れ出るものだから、魔鉄を全身に装備しているのなら、読みにくくなっても当然だろう。

 

 それでも漏れ出てる奴がいるが、なんだこいつ。ずっと頭の中で“英雄故事”歌ってるんだが。メンチーの部分だけやたらと力強いし、思念波で力強くなんて出来るんだなと新たな気づきも与えてくれた愉快な奴だ。

 

『そ奴が一番の使い手だな』

「明らかに魔力の質が高いしね。やる気ないみたいだけど」

 

 最初の一発もこいつが撃ってきたのだが、感じる魔力の波と比べても明らかに手抜きのファイアーボールだった上に翼だけを狙い撃ちにしたもので、絶対にこちらを仕留めきれないと分かったうえでの一発だ。

 

 他の襲撃者たちも魔法を撃ってきたが、どいつもこのプライベートジェットに施されていたアンチマジックと更に上掛けされた二葉のバリア――本人は防御障壁と呼んでいる――を貫くことは出来なかった。威力は悪くないが、20層を超えたかどうかくらいの実力だろうか。上級冒険者を名乗っても良い能力はあると見ていいだろう。

 

 

「……まさか、セイテンタイセイですか?」

「いや、違う。ジャミングごしでも斉天大聖なら100km以内に近づいてきたら分かると思う」

 

 ケイティの問いかけに首を横に振る。件の人物なら出来そうではあるが、漏れ聞く華国の英雄さんの人柄ならもっと直接的に来ると思うからだ。それこそ国会議事堂に単身乗り込んで俺と恭二を指名して呼びつけるとかやるんじゃなかろうか。

 

 生まれる時代を千年か二千年くらい間違ってるとしか思えない人物像だが、たまに入ってくる情報から感じ取れる人柄はマジでそんな感じらしいのだ。俺の耳に入ってくるんだからケイティも彼の人物像は耳にしているはずなんだが。

 

「いえ、その。もちろん上がってきた情報は目にしているんですが、理解に苦しむといいますか……」

「現代社会に三国志とか水滸伝のキャラが出てきたらさ。ふつーこうなるよお兄ちゃん。ああいうのは物語の中だから面白いんであって実際に付き合いたいタイプじゃないから」

「せやな」

 

 ケイティや一花のド正論に頷きを返す。

 

 さて、話し合いをしているうちに飛行機はいよいよ海に向かってまっしぐらという状況だ。エドゥヒーションの魔法で足を床に付着させなければまっすぐ立つのも難しい。ケイティと一花も落ち着いたようだし、そろそろ手を打つべきだろう。

 

「一花、俺たち以外の乗組員でバリアとエアコントロールが使えない人に付与してやってくれ。ケイティはコクピットのパイロットの保護と、フロートで可能な限り飛行機の態勢を維持してほしい」

「了解。飛び降りも選択肢? 大きな板何枚か剥がしてフロートで浮かべるとかやっとく?」

「後ろの連中がしつこいならそれが最後の手段だな。可能な限り飛行機はこのままの形で保持したい。二葉はそのまま、防御障壁を維持してくれ」

 

 緊急脱出口と書かれたドアを開きながら指示を出すと、了承の声が帰ってくる。振り向かずに頼むと口にして、飛行機の外へ出る。

 

「変身。行こうか、常盤台の超電磁砲(レールガン)(美琴)

『ええ。舐めた真似してくれたお礼はしてやらなきゃね』

 

 口ずさむように声をかけると、内部から闘志に満ち溢れた少女の声が心に響く。いや、示威行為で良いからね? まともにやりあうとこっちの被害がどのくらいになるか分からないんだから。

 

 体中から電流を迸らせながら、磁力を利用して飛行機の上に立つ。幾つか機内の機器をぶっ壊した感触があるが、まぁ墜落中の事故って事でなんとかなるだろう、多分。

 

 さて、と追跡してくる敵機?に視線を向けると、視界に映る戦闘機の数は5つあった。それぞれに真っ黒な鉄の鎧を身に着けた人物を乗せて、着かず離れずの距離を維持したままこちらを追走してきている。

 

 その中で。明らかに一人だけ雰囲気のある人物がいる。全員同じ格好をしているというのに視線を吸い寄せられるのだ。視線を向けると、その鎧の人物はぐっとこちらに向けて親指を立てた後、手を叩き右手でVサインを作ったあと(パンツ見えた!!!)遠くを見渡す仕草をした(超見えた!!!)。そして大音量の“英雄故事”が頭に入り込む。微妙にうまいのが腹立つわ。

 

『スパッツ履いてるわよデマ言うな!?』

「そういう話じゃないよ???」

 

 思わずそう美琴に突っ込みを入れて、頭の中では変わらずに“英雄故事”を歌い続けてるそいつにコインを持った右手を向ける。

 

 互いに互いを見つめながら、一秒、二秒と時間が過ぎていく中。鎧の人物は両手を横に広げてやれやれといったジェスチャーを見せ、ゴンゴンと音が聞こえそうな勢いで飛行機に足を打ち付けた。恐らくそれが合図だったのだろう。一度左右に翼を振った後、そいつを乗せた戦闘機は大きくターンを描いてその場を離脱していく。

 

 その動きに合わせるように大きくターンしていく他の戦闘機を見送り、はぁっとため息をつく。

 

 しりもちをつくように飛行機の上で座り込み、去っていく戦闘機を見送る。こっから折り返しとかないよな、流石にないよな? 

 

 少し経つと、どうやら飛行機が海上に到達したらしく軽い衝撃と浮遊感がやってくる。戦闘機の姿も見えなくなったし、とりあえずの危機は去ったようだ。

 

「さて……これはしてやられたかなぁ」

 

 しりもちをついたまま、膝で支えるようにして頬杖をつく。戦闘機の種類もバラバラ、掲げている国のマークもバラバラ。誰一人顔も分からない集団に乗っている飛行機を落とされたという事実だけが残った結果どうなるか。相手パイロットの思考が読み取れたとはいえそれが証拠になるなんて流石に言えないしな。

 

 おそらく明日にはネットで鈴木一郎死亡説やテロに敗れたなどという風聞がネットを飛び回り、その対応のために忙しくなるだろう。その前に救助が来るまで動けないな。

 

 いや、大統領と会談するというケイティの目的も潰してるわけだし、世界冒険者協会にもダメージが入ってると考えればなかなか痛い手だったんじゃないか。それを考えると。

 

「あんだけの戦力(ヤツ)を使ってマジで嫌がらせ目的……?」

 

 当たってほしくない予感が頭をよぎるが、今となってはどうしようもない。一先ず、救助を待って……後のことはケイティや真一さんに投げよう。俺、今回頑張ったしもうゴールして良いよね……?

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