第五話
「よし、今日は3層以降を目指してみようか」
「ライトボールは先頭の恭二と最後尾の沙織ちゃんが使おう。前衛は俺と恭二。一郎くんは盾とバスターで前衛のカバーを中心に。一花ちゃんは周囲を警戒しながら手が足りない場所に援護を入れてくれ」
「りょうかいでっす!」
さて、ここ最近のゴタゴタのせいでゆっくり時間が取れなかったので、久しぶりの純粋なダンジョンアタックである。
これまでダンジョンに入るときは撮影やら随行やらのしがらみがあり、結局新しい魔法の開発以外に進捗がなかったため3層以降は手付かずのままになっていた。
魔法も充実してきたし、戦闘の連携も若干だがこなれてきた。そろそろ次の段階に進むべきタイミングだろう。
「あれ、今日はロックマンじゃないんだ?」
「コスプレは撮影とかが入る時だけだよ! 誰も見てないのにやる意味ないって」
沙織ちゃんが余計な一言を口にしたが、意外にも一花がそれを否定した。
あの格好と動画のお陰で現在自主休校中(学校側からの要請でもある)の俺としてはそろそろこんな目にあっている理由が知りたい所なんだが。
そう尋ねると、一花は「へ?」と間の抜けた表情をした後、周囲の人間の顔を見渡して1人だけ納得したように頷いた。
「あそっか。お兄ちゃんも恭二兄ちゃんも体育会系で結構カースト上だったね。真一さんとさお姉は美形さんだしね」
「あー。一花ちゃん、何となく察してはいたから、その三人と同じ枠組みからはハブいて欲しいかな?」
真一さんヒデェっすよ。
この朴念仁や天然と同等の扱いってのは流石に心が折れそうなんですが。
「さっすが真一さん! 気遣いもお上手なんですね!」
「中学生に気遣いが出来ないって言われてるんだけど」
「おう、俺もそう思うぜ」
「お前もだよ」
「お前ら二人ともだよ。まあ、お前ら二人は被害者って意識が先にあるからだろうな」
バカ話を恭二として場をごまかそうとしたが真一さんには通じなかったらしい。
被害者という事は、
「俺たち身内は兎も角、普通右手が自由自在に変形する奴が街中に居たらどう思うかって話だよ」
「・・・え、魔法って言えば」
「それで通じるのは今の状況だからだろ? 単純に今現在も一郎くんの事を知らない人がここに居たとして、その人の前でいきなり右腕を変形させたらどういう扱いをされると思う?」
「それは・・・その」
「普通に考えて排斥されるよ。お兄ちゃん、この間ウルヴァリンの変身してたでしょ? Xメンってどういう世界か分かってる? あの世界のミュータントは人類の脅威って扱いで、その状況を変える為にXメンは人類を守ってるんだよ?」
一花は真剣な表情でそう言った。その声音には、いつものような冗談めかした雰囲気は欠片もない。
右腕に目を落とし、右腕を変形させる。ぐにょぐにょと腕が動く様子を見て、自分の感覚が麻痺している事に気づいた。
これ、知らない人が見たらっつか普通に気持ち悪いわ。
もし自分以外の赤の他人がこの状態で傍に居たとしたら、恐らく近寄らないか遠ざけるだろう。
自分がとんでもなく危険なラインに居る事に、今更ながらに気づいてしまった。
「まあでも、今じゃ世界一有名なコスプレイヤー(一部ガチ)だしそこそこ安全だとは思うよ?」
「・・・シャーロットさんと話してたのは」
「CCNの公式アカウントで動画を流すってのは、実はシャーロットさんのアイデアなんだよね。私はこうなりそうだからお兄ちゃんの情報を無難に広めたいって話しただけだもん。危険は無いですよ~って」
あの撮影の時何か相談してたのはこの事か。
「その割にはめっちゃ笑ってたけど」
「その時点ではドラえもんのコスプレだったんだよね。絶対空気砲のが似てたって」
「どっちにしろコスプレじゃねぇか!・・・気付いてやれなくて、すまん。助かったよ」
「良いって事よ。私も楽しかったし?」
にや、と笑う妹の頭を撫でる。
こういう事をすると普段は恥ずかしがって逃げていくのだが、今日は逃げずに受け入れてくれる。
夢見心地というのだろうか。自分が今、現実に居るという事を忘れていたように感じる。
そんな俺の様子を一花は気付いていたのだろう。直接何かを俺に言わず、自分のわがままで言っているようにして。
「まあお兄ちゃんにコスプレさせるの楽しくなってきたし、これからも続けてもらうからね?」
「ああ。お前の指示に従うよ」
「・・・デレた?」
「やかまし」
デコピンを一発入れると、痛いよー、さお姉! と沙織ちゃんに甘えるように一花は逃げていった。
思わずふっと笑いそうになった時、肩にポン、と手を置かれたので振り向くと恭二が険しい顔で立っていた。
「悪い、俺も調子に乗ってたわ」
「お互い様だな。俺もだ」
「・・・気をつけよう」
「そうだな・・・周りに心配かけないようにしねぇとな」
俺の言葉に頷いて、恭二は「うし、そろそろ行くか兄貴!」と真一さんに話しかける。
さて、まずは目先の事からだ。
未踏破階層への挑戦前に一つの懸念を解消できた。
幸先が良い出発だと思って、頑張るとしよう。
3層へのアタックは無事成功した。したのだが、ここで一つ問題が起きた。
まず、この階層の雑魚は前の2層でボス部屋にいた長剣を持つゴブリンとナイフを持つゴブリンの群れだった。
ここまでは問題ないのだが、3層のボス部屋で出てきた杖を持ったゴブリンの存在が非常に厄介な状況を引き起こした。
こいつは俺たちの姿を見咎めた瞬間に、手に持つ杖からファイアボールを使ってきたのだ。
この時はボス部屋に入る前であり戦う準備を整えていたため、相手に魔法を使われる前にバスターで攻撃して散らす事が出来た。
しかしこれは常に射撃が出来る状態で待機していたから出来た事だ。
2層から3層への変化を見るに、恐らく次の4層ではこの魔法を使うゴブリンが雑魚として出てくる可能性が高い。
そうなると、今のジャージや胴着といった衣服でファイアボールをぶつけられたらどうなるか。
よくて髪や衣服への引火、悪ければ一撃で殺されてしまうかもしれない。
「今日は一旦戻ろう。装備について一度話し合ったほうが良い」
真一さんの言葉に全員が頷き、俺達はダンジョンを後にする。
しかし、装備か。今の野球のプロテクターじゃ炎は防げないだろうな。
どんな物がいいんだろうか。Amazonで買えるものだと良いのだが・・・
そんなこんなで悩んでいたら現在横田基地にお邪魔する事になりました。
次は大統領にでも会うのかな?(錯乱)
第六話
『皆さんようこそ。私が当基地司令のジョナサン・ニールズ大佐です』
『初めまして、山岸真一です。こちらが弟の恭二と下原沙織さん、鈴木一郎くんと一花さんです』
翻訳の魔法を使って真一さんが応える。大佐は名前を呼ばれた順に握手をして俺達を歓迎してくれた。
『駐日大使閣下よりホワイトハウスに連絡があり、当基地の備品の供与を《ダンジョン内での既製技術の効果判定》の名目で無償供与する判断が下されました』
昨日あれだけ悩まされた装備についての問題をシャーロットさんに相談すると、次の日には急遽横田基地への訪問が決定されていた。
何が起こったのか良く分からないがとんでもない速度で物事が決まったのだけは理解できる。
それに無償って事は買う必要がないって事か。資金が心もとない俺たちにとっては助かる話だ。
ただ、隣に立つ一花が低い声で「ホワイトハウス・・・?」と呟いているのが気にかかるが・・・
『それは、助かります。ありがとうございます』
『これから皆さんには一人ずつ担当者をお付けして採寸し、お帰りの際に一式の装備をお渡しします。それと・・・』
大佐はそこで言葉を切って、俺に目を向ける。
『出来れば一緒に写真をお願いできますかな。孫がMEGAMANのファンでしてな』
『あ、ハイ』
「スーツあるよ!」
一花さん用意良いっすね。
恭二達の採寸をやってる間に司令部の希望者と握手を行う。皆右手に興味津々で、特に腕をバスターに変形させると喜んでくれる。
「エリート軍人さんのコネゲット美味しいです」
一花はそうほくそ笑むが、お偉いさんと笑顔で握手してるこっちは気が気ではない。
失礼な態度を取ってないだろうか。あ、こっちに笑顔ですね、ハイどうぞ。
「兄ちゃんもレイヤーが板に付いて来たね!」
「全然嬉しくないがありがとう」
採寸も終わり対燃牲の高い軍用装備を1人ダンボール4箱分も受け取った俺達は、笑顔で見送ってくれた基地職員の方々に別れを告げて帰路に就いた。
荷物は全て恭二が収納で片付けているので運搬も気にならない。
あと気付かなかったが、シャーロットさんの分の装備ももらえたらしい。この人完全にダンジョン探索についてくる気満々だな。
「装備がどのように使われているかや効果について、画像で提出を義務付けられました」
理論武装までされてある。やっぱ海外の報道関係は気合が違うな(偏見)
山岸さん家についたら早速おニューの装備を試す。
今まで意識してなかったけど・・・軍服って、良いよね。こう、機能美というかさ・・・
などとにやにや笑いながら新しい装備に袖を通すと、どれも何故か右腕だけ半分位に切り取られていて真顔になる羽目になった。
解せぬ。
「一郎くんの変身魔法は、有名ですから」
「それでもこれはショックですわ」
シャーロットさんが慰めてくれるが気分は晴れない。右の袖は肘辺りから切り取られており、右腕をあらわにしている。
本物の軍服なのにパチ物感が凄い。
折角の軍服なのに・・・
「次はARMSかな」
「やめてください」
「却下☆」
恐ろしいことを呟く妹に懇願するも一言で断られる。
また、新しいのが来るのか・・・そうか。
この鬱憤はモンスターにぶつけて解消しよう。
新装備に身を固めた俺たちはさあいくぞ、っとダンジョンに足を踏み入れる。
わけではなく、その前に魔法対策を進めることにした。
バリアーが作れないか試しているのだ
「アンチマジックでいいかな?」
「いっそバリアー! とか分かりやすくない?」
「魔法を防ぐってイメージがしやすいほうが良いと思う。けど、どっちも試すか」
恭二が沙織ちゃんや一花の言葉に頷いて、どちらの魔法も使えるか唱えてみるとどちらも効果を発揮することが出来た。
ただ、魔法を防ぐ時はアンチマジック、物理的な攻撃に対してはバリアーが有効という結果で、それぞれ効力が大きく変わる結果となった。
見た目としては通常時から見えるのがバリアーで、体の周囲を薄い膜のようなものが覆っている。
視界が遮られないかと心配になったが、中からは特に何かがあるようには感じないらしい。
対してアンチマジックは普段は目に見えないが、魔法が当たった瞬間に周囲を青白く包む障壁の形をしていた。
同時に展開する事が可能だったため、この二つはダンジョンに入った瞬間に全員にかける事にする。
「後は武器が欲しい所だなぁ。いつまでもバットってのもな」
「相手から奪うってのは? ゴブの剣とか」
「使い慣れてない刃物とかは止めたほうが良いぞ。日本刀とか買えないかねぇ」
剣道をしていたらしい真一さんが、バットを持って素振りの動作をするも顔をしかめる。
「銃刀法とかって大丈夫なのか?」
「銃じゃなければ大丈夫だよ。免許っていうか刀の場合は証明書が付いてれば持ってても問題ないから」
「そういやお前、猟銃触ろうとして爺さんにこっぴどく怒られてたな」
「お陰で1月お小遣い抜きだよ・・・死ぬかと思った」
それはどう考えてもお前が悪いのでしっかり反省すると良い。
とりあえず今回のダンジョンアタックには間に合わないが、お金もそこそこあるし購入を検討しても良いのでは、という流れになると、真一さんが物凄くやる気を出している。
そんなに刀が欲しいのか。欲しいわな。俺も欲しいわ。一緒に買って貰えないか検討してもらおう。
第七話
「一郎!」
「あいよっと」
恭二の突撃に合わせてファイアバスター(ファイアボールとは若干違うため命名した)を連射して牽制。
ゴブリンの群れが怯んだ隙にゴブリンメイジの頭を恭二がホームランする。
「サンダーボルト!」
「ファイアボール!」
沙織ちゃんと一花が残りのゴブリンを掃討してゲームセットだ。
サンダーボルトはファイアボールが苦手な沙織ちゃんの為に先ほどの恭二が開発した攻撃魔法になる。
沙織ちゃん、ファイアボールはイメージのせいか10mも飛ばないんだよな。別に本当に投げるわけじゃないんだが。
ただ、代わりにと作られた魔法だが凶悪さはファイアボール以上かもしれない。
奥多摩はよく雷が落ちるんだが、日頃見慣れていてイメージしやすいのか、サンダーボルトを使うと本物の雷と遜色違わない稲光が指先から放たれる。
速度もファイアボールの比ではなく、レーザーのように相手を襲って一瞬で感電死させてしまう。
・・・バスターだとどうなるか試してみたら雷属性っぽくなった。ボスのチップはまだ入れてないんだがな。
「さて、そろそろボス部屋といこうか」
「りょうかい」
ある程度慣らしも終わった所で事前に確認していたボス部屋に突入だ。
さて、今度はどんな敵かな、と中を確認すると一匹だけ明らかにゴブリンより強そうな面構えの奴がいる。
オーガとかかな? よりゴブリンより凶悪そうな顔をしたそいつは俺たちに気付くと威嚇の咆哮をあげる。
「恭二、ボスは手を出す『サンダーボルト』・・・お前なぁ」
「ごめん、つい」
颯爽と駆け出そうとした真一さんの真横を稲光が走る。
一発でボスが黒焦げだ。
「すまん、全部倒しちまった」
「お前なぁ・・・しょうがない。次の階層で近接戦を試そう」
「了解。皆、まだ魔法は使えそうか?」
恭二の問いに各自が問題ない旨を返し、真一さんを先頭にして再びダンジョンの階層を降りる。
いつ魔力切れになるのかわからないってのは困るな。ステータスとか見れるようにならないだろうか。
「一郎、後ろから周辺警戒を頼む。あと、ボス部屋はあっちっぽい」
「了解。シャーロットさん、ポジションを変わりましょう」
「OK」
考え事をしている間に5階層に降り立ったようだ。
感知魔法でボス部屋を感知したらしい恭二に返事をして、最後尾を歩いていたシャーロットさんと場所を入れ替える。
準備するバスターは弾速が早いサンダーボルトだな。
「よし、今日はこの層を攻略したら終了しよう。恭二、前衛は勤めるから案内は頼んだ」
「了解。やる気満々だな、兄貴」
「ああ。魔法ばっかりだとやる事が少なくてな」
真一さんがそう言ってにやり、と笑った。割とバトルジャンキーなんですね真一さん。
そういえば剣道や格闘技もやってるって言ってたな・・・刀刀と言ってるのも接近戦がしたいからかもしれん。
「ワイルドな真一さんも素敵・・・ポッ」
「あばたもえくぼってな」
妹と益体もないやり取りをしている内に接敵したらしい。
敵の内訳はオーガ一匹に剣ゴブ3、メイジ1の5匹。ナイフはもう出ないのかな?
バットを構えた恭二の「一郎!」という叫びに合わせてサンダーバスターを連射。
周囲のゴブリンが怯んだり感電している隙に真一さんと恭二が突貫した。
「メイジは俺がやる! 兄貴!」
「オルァアアア!」
雄たけびを上げながら真一さんはオーガに突貫。
オーガは叫び返しながらこれを迎撃するも、体格差に押し切られて力負けし、最後は真一さんのバットに頭を潰されて終わった。
オーガがやられて怯んだゴブリンメイジは逃げ出そうとするも、その背中に恭二の追撃を受けて倒れ、残りのゴブリンは一花のファイアボールによって焼けることになる。
「・・・・ふぅー、よし」
被害なく接近戦も乗り切った真一さんは荒い息を整えて右手で小さくガッツポーズを行った。
手ごたえのようなものを感じたのだろう。
その後も何戦かするも特に手子摺る事も無く戦闘を終わらせることができた。
「よし、そろそろボス部屋に行こうか」
「OK、こっちだよ」
事前に当たりをつけていた方向に歩いていくと少し大きめの広間のような場所に続いていた。
さて、この階層のボスは・・・
「デカッ!」
「うわー。豚さんだねぇ」
複数のゴブリンやオーガに囲まれて一際目立つ豚鼻の巨人が立っていた。
「オークかなぁ、あれ」
「恐らくは。あれの相手は俺がする。恭二、一郎くん、手を出すなよ」
「了解です。気をつけていきましょう」
ついに俺たちより体格の勝る相手が出てきたか。
やる気を漲らせる真一さんの言葉にそう返事を返し、ごくりと唾を飲み込んで俺はバスターを構えた。
第八話
「全員一瞬だけ目をつぶってくれ!」
「了解! 何するんだ!」
「目くらましだよ! フラッシュ!」
開戦と同時に恭二が叫ぶ。とっさに目を閉じると、瞼越しでも分かるほどの強力な光が一瞬部屋を覆った。
目を開けるとゴブリン達が目を覆って身もだえしている。
成るほど、閃光手榴弾か! ライトボールの光度を変えたのかね。
「ナイスだ恭二! ッシャアアアア!」
気合一閃、とばかりに真一さんがバットでオークを殴りつける。
だが。
「ヤベッ!」
「真一さん!」
「バカ、止まるんじゃない!」
真一さんの攻撃を受けてもオークは止まらず、逆にバットを捕まれて拘束されてしまった。
オークの棍棒が真一さんを襲う。真一さんも咄嗟にバットを手放して逃げようとするが、知らないとばかりに奴はその防御ごと真一さんをぶっ飛ばした。
悲鳴を上げて立ちすくむ一花の前に立ち、ゴブリンメイジからのファイアボールをアンチマジックで受け止める。
「兄貴!」
「だ、大丈夫だ! バリアが効いた!」
よろめきながらも真一さんが立ち上がる。
そんな真一さんに止めを刺そうとオークが近寄っていくが、そんな事はこのバスターが許さない。
顔にサンダーバスターをぶち当てると、一撃で倒すことは出来なかったが相当効いたらしくオークはがくり、と膝をつく。
「恭二! 沙織ちゃん! シャーロットさん!」
「わかってる!サンダーボルト!」
「サンダーボルト!」
「ファイアーボール!」
魔法の集中砲火により敵チームを焼き尽くし、戦闘は終了となった。
急いで真一さんの下に走りより、肩を貸す。
「恭二、ヒールを!」
「いや、大丈夫だ。ダメージはない。転がったせいでふらつくだけだよ。あと、肝が冷えた」
「そりゃあんな棍棒で殴られれば肝も冷えますわ」
「ほんとだよ。いやー、焦った」
思った以上にダメージがないようで安心する。
少しすると足取りもしっかりしてきたので自分で立てるか確認すると、「大丈夫」との事なので離れる。
足腰もしっかりしてるし大丈夫だろう。・・・今回の探索はここまでだな。
さて、涙目で真一さんに詰め寄る妹を宥める役目は真一さんに任せてさっさと退散だ。
馬に蹴られる趣味は無いんでな。
「武器と防具の追加。これは必須な」
一撃で倒しきれずに反撃を受ける。今回は事前にしっかりとバリアの魔法を張っていたから問題なかったが、もしバリアが切れていたら真一さんはどうなっていたかわからない。
飛ばされた距離を鑑みるに骨や内臓が破裂している可能性もあった。
「生きてさえいれば恭二の魔法で回復できる。逆に言えば一撃で死んじまったら元も子もないって事だ」
「・・・体の急所を庇うプロテクターは必須だよ。出来れば軍用のが」
「米軍でもSWATなどが採用しているはずです。大佐に確認すれば回してもらえると思います」
真一さんに引っ付いたまま一花がそう言うと、肯定するようにシャーロットさんが答えた。
防具はそれでOKだとして、次は武器だな。
「男のロマンとしては刀だと思うんだが命がかかってるしな」
「真一さんは剣道の経験もあるし刀が良いんですよね」
「ああ。刀か、どちらにしても刃物が良いと思う。今回のオークみたいに自分より大柄な相手は鈍器だと少しな」
「槍が欲しいですね。リーチ的にも」
まあ、バットで殴りかかっても相手を倒しきれなかったしな。
これが刃物なら少なくとも切り傷をつけてもう少し相手を怯ませられたかもしれないし、急所に突き立てられたらそれで倒せたかもしれない。
どちらにせよ一旦は山岸さんに相談だな。刀って幾ら位で買えるんだろうか。
山岸さん、店の再建で少しでもお金が欲しい所なのに息子達の報酬金に一切手をつけてなかったことが発覚。
二人の通帳と印鑑をポイっと渡して「息子の金に手をつけるほど落ちぶれてねぇよ」と照れ顔で言っていたが、正直めちゃカッコいいと思う。
うちはそのまま親に全額渡したけどどうなってんのかな。
CCNからも動画の報酬が来てるって話だけど金足りるだろうか。
「まぁ、法律上は問題ないんだろうが一応警察にも話通しておけよ。面倒は一度で十分だ。あと、俺もそろそろダンジョンに行きたい」
「社長、コンビニの再建頑張ってくださいね」
ここ最近のゴタゴタですっかり不信感があるのか、不機嫌そうに山岸さんは言った。
あと、何だかんだでストレスがあるんだろうな。
最近は俺達の冒険話を聞くたびに羨ましそうに「ダンジョンいきてぇ・・・」と呟く山岸さんに、真一さんがそう言って返した。
何だかんだでまだまだ資金難は続いており、今山岸さんは非常に多忙だ。
ダンジョンに付き合うにしてもまだまだ先の話だろう。
それより先にまずは武器についてだ。
「シャーロットさん、警察の偉い人に顔って利きますか?」
「・・・そう、ですね。ちょっと当たれそうな筋はあります」
「あ。じゃあ、日本刀に限らずどこまで武器が使えるかの確認にしたほうがいいよ。これから先、ほんとにドラゴンとかが出てきてもおかしくないんだから。ドラゴンに刀ってRPGの勇者みたいな真似、真一さんにしてほしくないもん」
引っ付いたままだが若干調子が戻ってきた一花がそう言った。
まぁ、ありえない未来だとも言えないか。
魔法が効かない敵が出てくる可能性もあるし、強力な武器はあるに越した事はない。
そして翌日。俺達は首相官邸にお邪魔する事になった。
これ色々すっ飛ばしすぎじゃないか?
明日は投稿しないと昨日言ったな?あれは嘘だ。
X- MEN:言わずと知れたマーベル・コミックの誇る人気ヒーロー漫画。突如生まれたミュータント達がヒーローとして超能力で戦う。一花が例として挙げたようにミュータント達は基本偏見の目に晒されているのでかなり悲惨な待遇。でも偏見の目をなくすためにX- MENは今日も戦っている!
ジョナサン・ニールズ大佐:米軍横田基地の司令官。後に本土にいる孫に一郎との握手の写真を送り大喜びされご満悦。
ARMS:力が欲しいか?力が欲しいのなら くれてやる!!
ボスのチップ:倒したボスのチップを組み込むことにより様々な武装を使用できるようになる!というのが本家であるが、一郎の場合使える属性魔法なら特にボスを倒さなくても使用可能。あくまで魔法だからね。