奥多摩個人迷宮+   作:ぱちぱち

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誤字修正、garaasaa様、見習い様ありがとうございます!


第四百十二話 マンマミーア!

「キョーちゃん、イチロー。今から米国民になって世界冒険者協会の会長になりませんか?」

「絶対にNOで」

「勘弁してもらっていいですかね???」

 

 据わった眼をしたケイティに恭二と並んで返答する。恭二に対する米国民のくだりはちょっと本気っぽかったけど、まぁそれは良いとして。ケイティが俺だけじゃなく恭二にまで無茶ぶりをするってことは大分追い込まれてるみたいだな。それだけローマ・カトリックの行動が衝撃的だったのだろう。

 

 つい先日イタリアで起きた事件に関してカトリック教会は、全面的にマリオさんを支持した。もちろんマリオさんが暴力沙汰を起こしたという経緯を踏まえた上で、だ。

 

『彼は自身の家族愛と愛国心によってたしかに過ちを犯した。けれど自らが起こした行いを償おうとしていた。その償いの機会すらも奪おうとした者達こそ本当に罪深き者達だ』

 

 そう声高に訴えたローマ・カトリックは、イタリア警察の捜査によって魔法技術をテロリストに供与したマフィアのボスと内通していた政府関係者、それにマリオさんを拳銃で撃った警察官の3名を破門にすると発表した。

 

 日本人である俺たちには理解できないが、これ欧州の場合とんでもない状況らしい。昔の教科書とかで王様が破門されたとか読んだ覚えがあるし、日本の極める道の方々みたいに結構頻繁にあるもんだと思ってたぜ。

 

 え、という訳で今から俺らにイタリアに行ってほしい?

 

 という訳で切り出す話じゃないんじゃないですかね(震え声)

 

 

 

 

 最近、タクシーみたいによく米軍機に乗ってるんだけどこれっておかしいよね。俺、別段米国の要人ってわけでもないのに。乗り込む際にそう尋ねてみると、その輸送機のパイロットさんは心底愉快そうに「HAHAHAHA!」と笑っていたんだよね。今の話のどっかに笑いどころがあっただろうか。日本と米国のジョークセンスの違いが分からない。これがカルチャーギャップって奴かな。

 

『マンマミーア! って私が言うのと同じですよ。誰が言ったかが面白ポイントなんです』

「うん、例えが良く分からない」

マンマミーア!(なんてこった!)

 

 全身を拘束具に覆われた青年の言葉にそう応えると身動きできないまま青年は全身で驚きを表現してくる。彼の名はマリオ・マリノさん。イタリアの冒険者トップチームの一人でつい最近大騒動を引き起こした張本人である。

 

 彼をイタリア本国にこれ以上置いておくのは不味い、という政治的な判断とイタリアには彼レベルの冒険者を長期間ぶち込める独房がないという物理的な理由の為、彼の身柄は米国に移される事となったらしい。護送の際には護衛と監視をお願いされていたりするんだが、まぁ、この期に及んで逃げようとは思わないでしょう、マリオさんも。

 

 なんなら今現在も逃げようと思えば拘束具を全て引きちぎって逃げられそうだからね。暗殺未遂があったせいで現在は魔鉄製の拘束具が嵌められてないみたいだし。

 

『いやいや。もし逃げたら貴方が殺しに来るでしょう?』

「いや殺さないが???」

 

 俺は彼の中でどんな扱いなんだろう、47番目のハゲあたりか?

 

 そこまで怖がられる事した覚えがないんだが……ただ、まぁ。今回の事件に関して、大人しく最後に出頭したから色々呑み込んでる所はあるから、ここからその評価を崩すような事をマリオさんがしたら容赦しないかな、とは思っている。俺が護送に付き合うよう頼まれたのも、マリオさんを楽にボコれる奴だからってのもあるだろう。

 

 そう正直に告げると、マリオさんは嬉しそうな表情で『やはり貴方はマスターの兄君だ』と笑った。あれ、これもしかして一花の影響で俺ここまで恐れられてるのかな???

 

 因みに同じくマリオさんを楽にボコれるだろう恭二くんは現在、世界一小さな国でお偉いさんと歓談中である。あいつにはこの後、自慢の眼を生かした仕事があるらしい。それは俺に出来ないからなー! かー! と煽ったら割とガチ目で裏拳が飛んできた。

 

 実を言うとイギリスの大英博物館探索以降、世界冒険者協会には何度か恭二の眼を借りて見てほしいものがある、とローマ・カトリックから打診があったらしい。これまでは諸々の事情で断っていたのだが、今回は諸々の事情で断ることが出来ずに正式にヤマギシに依頼が舞い込んできた、と。

 

 ダンジョンの方も42層のマッピングを少しずつ進めてる状況だから、恭二が居なくてもヤマギシチーム的には機能する。ならいつまでも世界有数の宗教勢力の要請を断り続けるのも、という真一さんの鶴の一声により、恭二は沙織ちゃんとケイティを伴ってカトリック教会の秘宝を巡る冒険へと駆り出されたわけだ。両手に華かよ。爆発しろ。

 

 物量的に大英帝国博物館ほどじゃなさそうだが、危険度で言うと多分こっちの方が上なんじゃないかと予想していたがはてさて。

 

 あとマリオさん。こいつこんだけ世界中を騒がせといてやたらと余裕だな、と感じたのだが流石にここまで大事になるとは思ってなくて現実感が湧いてこないとの事。それは、まぁそうだろう。普通、身内に手を出されたから報復したらいきなり暗殺されかけて何故かカトリック教会がブチ切れた、とか聞かされてもね。どんなドミノだよって冗談かなんかだと思うだろう。それを報告された関係各所も大体同じ反応だったしね。

 

「あ。それとマスター様からの伝言だけどね。「出てきたら根性叩きなおしてやるから覚悟しとけ」だってさ」

『……はい。マスターの御心のままに』

 

 一花からの伝言を伝えると、マリオさんは顔をくしゃくしゃにゆがめてそう応える。彼が護送される際には彼の家族も一緒に米国へ渡ることになる。今のイタリアは彼の家族にとって非常に危険な状況だからな。それも仕方ない事だろう。米国なら世界冒険者協会の力も強いしね。

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