奥多摩個人迷宮+   作:ぱちぱち

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この物語はフィクションです。実在の人物っぽい人も居たりしますが基本微妙に違う他人だと思って心を広く持ちお読みください。




許してください、なんで(ry

誤字修正。kuzuchi様ありがとうございます!


第六十九話 日本帰国。そして

『素晴らしい。二ヶ月前の我々の判断はやはり間違いなかった』

 

 

わいわいと騒ぐジェイとジュニア氏のやり取りを微笑ましいという目で見ながらダニエル老はそう言った。

 

 

『だからこそ惜しい。これだけの人材に恵まれた企業はそう居ないだろう。だが、企業としての未熟さがヤマギシの成長を妨げている。是非我々の提案を考えてほしい』

 

『なるほど。いえ、私も勉強させて頂きました。一度父とじっくり話し合ってみます』

 

『よろしく頼む。さて、料理を楽しもうじゃないか』

 

 

ダニエル老の言葉に合わせるように料理が到着しこの話は終了となった。

流石はブラス家。料理も絶品のものばかりだ。

 

 

「お前、よくあの話の後にそんなに美味しそうに食べられるな・・・・・・」

 

「料理に罪はないだろう?美味しく食べてやらないと可哀想だ」

 

 

お、この肉すっげぇやわらかい。出来ればご飯が欲しいんだがなぁ。

 

 

「・・・なぁ、さっきの感覚の件なんだが。何時頃から自覚してたんだ?」

 

「ミギーの時だな。明らかに自前の器用さが上がったし。それまでは微妙に何かが不味いとか、嫌な予感がするって思ってた」

 

「・・・・・そうか」

 

「後は・・・うん。恐らくなんだが傷の治りが早くなってる気がする」

 

 

俺の言葉を聴いて恭二は押し黙った。

恐らく、変形した回数も関係あるんだろう。最近髪の毛が茶色になっているように感じるし、明らかにスパイディの中の人に身体的特徴が寄って来てる気がする。

どうせなら頭脳まで似てくれれば良いんだがな。ライダーマンに変身しまくるのに。

 

あと、俺はお前も似たような状態じゃないかと思ってるんだがなぁ。本人は気づいてないけど、魔法やモンスターを見るときに恭二の目が淡く光ることがある。

あれは何か起こってるくさいんだが・・・一度、一花に相談してみるか。

 

 

ブラス家からの歓待を受けて二日後。俺達も日本へ帰る事になった。

帰りしなにブラスコ社から渡されたジュラルミンのアタッシュケースには、彼らが提案してきたビジネスについて、恐ろしく緻密な提案書と分析データが詰まっていた。

こんな物を渡してくるくらい彼らはヤマギシを重要視してるって事か。

 

 

「テキサスって土地安いなぁ・・・」

 

 

工場設立案を眺めながら恭二がぼやいた。奥多摩も安いっちゃ安いが確保できる敷地面積が文字通り桁違いだからな。

 

 

「これって、うちにとってもブラスコにとってもメリットのある話なんですよね? 真一さんはなんで渋い顔してるんですか?」

 

「ウチだけなら問題ない。ないんだが・・・」

 

「今まで販売代理店だったIHCが、これだと締め出されちゃうんだよねー」

 

 

言葉を濁した真一さんを引き継ぐように一花が答える。

 

 

「厳密にいうと、IHCが狙っているだろう世界戦略が縮小を余儀なくされる、だな。IHCは魔法ペレットで一気にシェアを拡大するつもりだ。だが、そこにもっと大きな存在のブラスコが出てくれば話は変わってくる」

 

「間違いなくIHCにとっては面白くない話になります。彼らもこれからヤマギシとの付き合いを拡大して利益を得ていく算段だったでしょうから」

 

「なるほどー」

 

 

社長とシャーロットさんの言葉に沙織ちゃんが頷いているが、恐らく半分も理解できてないんだろうなぁ・・・・・・

結局この件は社長預かりとなり、社長はIHCと数日間協議した上でやはりテロの危険にIHCは対応できないとして、折れる事になった。

ただし、国内シェアに関してはIHCが今までどおり握る事で合意し、この件はブラスコとウチがまた話し合う事になるだろう。

まぁ、住み分けが出来ていればブラスコ側も文句は無いだろうしね。

 

という訳でうちの父さんはまたテキサスにとんぼ返りする事になった。

真一さんが開発した燃料制御棒のシステムやペレット製造とリチャージあたりの特許も国際特許として無事登録されたし、工場についての話が煮詰まるまでテキサス通いが続くだろうなぁ。

母さんも国際弁護士免許に挑戦しようかとか言ってるがそっとしておこう。

さて、このブラスコとの提携の流れで実はヤマギシ、IHC、日本にとって結構大きなメリットが出来た。

それは特許を守らない国、特許権が存在しない国との取引を抑制できることだ。

設立して間もないヤマギシではその辺りの政治的な感覚はほぼ無いに等しい。ブラスコという巨大な後ろ盾ができた事でそれらの相手から距離を取る事ができたのは大きなメリットだった。

 

 

 

 

さて、そんなこんなで国内に帰ってきて数週間が経ったころ。

何故か初代様が奥多摩にやってきた。

 

 

「やぁ、鈴木君。久しぶりだね!」

 

「はははははいお久しぶりです!きょ、今日は何のご用で?」

 

「お兄ちゃん緊張しすぎ!オジ様!お久しぶりです!」

 

 

以前お会いしたのは去年、特別仕様のバイクを授与された時以来だから半年以上前の話だ。

あれ以降、特に映像関係ではたまに仕事を振られる位で何か関わったとかは無かったはずなのだが。

用件を聞いたはずの最初に応対していた社長は、子供に戻ったようにはしゃいで役に立たなかったのでシャーロットさんに頼んで蹴り出して貰っている。

こういう時の担当のはずの真一さんは生憎都心の方に出ずっぱりで今日は一日居ないし、恭二はこの手の事に役に立たない。

とりあえずアメリカ土産で買って来たコーヒーを淹れるととても喜んでくれた。本当にコーヒーが好きなんだな・・・・・・

 

 

「実は・・・・・・横紙破りだとは分かっているが。恥を忍んで頼みたい事がある」

 

「た、頼みですか?」

 

「ああ・・・・・・頼む。俺をダンジョンに連れて行ってくれ!」

 

 

ガバリ、と席を立ち頭を下げる初代様に慌てて俺は頭を上げてくれと頼んだ。

何がどうなっているんだいったい・・・

 

 




初代様:一号ライダーの中の人。ただしスタンさんみたいに微妙に変わってます。

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