奥多摩個人迷宮+   作:ぱちぱち

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このお話はフィクションです。

今日、40話までの統合を行いますので、読んでいる話がズレたりしたら申し訳ない。

誤字修正、244様、kubiwatuki様、見習い様、kuzuchi様ありがとうございます!


第七十五話 魔法考察・ストレングス

さて、基本的な魔法の講義が終わった後は身体的な動きの強化だ。

ぶっちゃけると各国の代表というだけあって何かしらの武術を学んでいる人が多いので1から鍛える、という人はあまり居ないのだが、この訓練に参加する前と後では決定的に違う事が二つある。

まず、魔力の増加による身体能力の大幅な向上。ダンジョンで取った魔石は全て自分のものだし、ヤマギシで蓄えていた魔石を使って各人たっぷりと魔力を吸ってもらっている為、劇的に身体能力が上がっている。

次に、ストレングスに代表されるバフ魔法の存在だ。

 

 

『各自、ストレングスを使ってくれ。バリアはちゃんと張っているな?』

 

『『はい!』』

 

『よし。でははじめ!』

 

 

初代様の掛け声に従ってロシア代表の熊みたいな男性とフランス代表の女性が手を合わせて、押し合いを始める。

通常なら、まず勝負にならないやり取りだが、しかしここに魔法が存在すると話が変わってくる。

 

 

『おお!』

 

『すごい・・・』

 

 

対格差がある分ロシアの男性が優勢だが、女性側も負けては居ない。多少押し込まれているもののその場で踏ん張っている。

これは、ストレングスの強化度の違いによるものだ。

男性は前衛としては非常に優秀な人物で、組み手や武器の取り扱いに関して優れた成績を残した。

魔法についても、ストレングスはちゃんと使用している。

では何故、明らかに力の差があるはずの勝負が接戦になっているのか。

 

これは、ストレングスだけの話ではないが、魔法の強度には、個人差や習熟度による優劣が存在するようなのだ。

この事実に最初に気づいたのは、ウィルを教えていた時の一花だった。

今まで周りには聞いただけで魔法を覚えるような存在しか居なかった為発覚しなかったのだが、ウィルに訓練を施しているときに、彼が使う魔法の威力が明らかに低かった事に気づいた一花は、恭二に見てもらいながら幾つかの魔法を使ってその差を比べてみた。

すると、明らかに同じ位の魔力を使っているはずなのにウィルよりも一花の方が優れた結果を残したのだ。

 

この結果を元にちょっとした実験を行ってみた。1人の被験者(この時はウィルだった)に対して別々の人間がストレングスを使ってみたのだ。

結果は、真一さんのストレングスが5.6倍のパワーアップをしたのに対し、一花は4.8倍。実に0.8も数字に差が出る結果になった。

恭二が見る限り互いの魔力消費はほぼ同じ位だったそうなので、魔法の結果にも個人差が出る事がはっきりわかる結果になった。

 

そして、その後一花が習熟度についても言及。

一郎の右腕のように何度も使っていれば魔法も熟れるのではないか?という理論を元に1週間ストレングスを何度も唱え続け、再度実験してみた結果、真一さんが5.6のままだったのに対し一花は5.1まで結果を底上げしてきた。

 

前衛に付く事の多い真一さんは当然ストレングスを何度も使っている。

その分、結果が上がったのではないかと一花は言い、これだけでは資質まではわからないとまだストレングスを使えない下原のおばさんとうちの母さんの力を借りて実験。

結果、下原のおばさんが4.3の強化に対し母さんは3.8となり、一花の予測が正しかったと判明した。

 

この結果はもちろん冒険者協会にも通達され、どんな魔法も同じ結果になると思っていた各方面に激震が走った。

特に火力発電などでフレイムインフェルノを使うため、術者によっては結果が劣る可能性があるというのは大問題だ。

協会側としても優劣が出るのならまず基準。どこからが優れていて、どこからが劣っているのかを確認しなければならない。

 

という訳で今回のブートキャンプでは平均値の算出も一つの目標になっている。

彼らは殆どの魔法を今回のブートキャンプで覚える事になるし、元々使えた魔法もそれほど熟れているわけではない。

彼らの結果を総合して、暫定的な強化度合いや魔法の優劣を記録。平均値を割り出していき、一先ずの基準値を作っていく。

 

 

『ぐぬぅ、むん!』

 

『くっ・・・うううう!』

 

 

ロシア代表のセルゲイさんが止め、とばかりに力を込め、フランス代表のカミーユさんに押し勝った。

セルゲイさんの強化度は3.5倍。対するカミーユさんは4.8倍と1.3もの差があるが、元々の身体能力差がそれだけあったという事だろう。

 

 

『このように、魔法を使えばこれだけ体格差がある相手にも互角の戦いが出来るし、逆にこれだけ体格差のある相手に粘られる事もある。今までの自分の常識に囚われれば逆に身を危険に晒す事になりかねない。己の限界を、今の訓練中にしっかり見極めて欲しい!』

 

『『はい!』』

 

『うむ。では各自、呼ばれた順に出てきて組み手を行ってくれ。この武道場はかなり頑丈に出来ているがストレングスを使っている以上破損の可能性は高い。気をつけてくれ!』

 

『『はい!』』

 

『それと、武術の心得がない人間は私の所に来なさい。基礎的な部分からになるが、体の動かし方を教えよう』

 

『『はい!』』

 

 

返事をした中に居た日本人の顔が上気してる。まぁ、普通に有名人だしな初代様。

この画像はちゃんと保存していて、今後の為の資料として協会で取り扱う予定だが、これネットに流したら次回のブートキャンプ、定員割れだけは絶対に起こらないだろうな。

取りあえず許可を貰って東の映画会社に送っておけば有効活用してくれるだろうか。

 




セルゲイさん:ロシア代表の男性。2mを超える体格に体に見合った筋肉の鎧を付けた正に人の姿をした熊。モスクワ大学に在学するエリートでもあり、レスリングの有力選手でもある。

カミーユさん:フランス代表の女性。実家はフランスで空手道場を営んでいるらしい。元々女性にしてはかなり力もあるのだが流石に熊とは比べられなかった模様。

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