第九話
「これ、大丈夫なんですかね」
「大丈夫よ。貴方達に対する失策の数々で、日本政府も焦ってたみたいだから」
実際政府筋には助けてもらった覚えないですしね。
入院してた時だって特に動くのに支障ないのに検査検査&検査で3日も拘束されて、下手すれば検査代金まで出させられる所だったからな。
「その点を我々も苦慮していたんです」
首相官邸に到着した俺達は官房長官室に案内された。
ここ最近お偉いさんばっかりに会ってるせいで麻痺してたが、やっぱり自分の国のトップと会うのは緊張する。
「山岸真一さん、山岸恭二さん、鈴木一郎さん、下原沙織さん、シャーロット・オガワさん。今日はようこそお越し下さいました」
官房長官室には官房長官氏と幹事長氏が揃っていた。
促されるままに席につくと幹事長氏が口を開く。
「申し訳ないがオガワさん、同席なさるならここからあとは全てオフレコでお願いしたい」
「はい、オフレコで」
幹事長にうなずき返すシャーロットさん。
「まずは皆さんに、
そう言って、幹事長氏は正面に座る真一さんに頭を下げた。
「ただご理解いただきたいのは、あまりに突発的な事象であった上、正体不明の……アレでしたから、我々としても過敏にならざるを得なかったのです」
「事情は……まあ、わかりました。ただ、弟とその友人を生体解剖しようとしたり、不当に拘束したり、暴行を加えたあげくに『公務執行妨害』で逮捕しようとしたり、事情も説明せず、私たちの家を長期間立ち入り禁止にしたり、挙げ句の果てにあれほどの状態になっているのに、ついに災害認定も金銭的な援助もしなかった事は忘れませんが」
幹事長氏に真一さんはすごい笑顔でそう答えてから官房長官に向き直る。
「私たちの危機は、あのゲートからではなく全て日本政府から押し寄せてきましたし、私たちを救ってくれたのはCCNテレビであり、このシャーロットさんであり、駐日大使であり、アメリカです。それは今も変わりません」
「返す言葉もありません。誠に申し訳ないことをした」
「正直、どんな困り事も日本政府ではなくアメリカに頼った方がいいんじゃないかって気さえしますが、ウチは日本にありますし、俺たちは日本人です。もし日本政府が俺たちに協力していただけるのなら、今日までのことについての謝罪は、受け入れます。勿論忘れませんがね」
そこまで言い切って真一さんは出された湯飲みを手にとり、口に運ぶ。
すげぇな真一さん。大物政治家のプレッシャーもなんのそのって感じだ。
「君の言い分も尤もな話だ。これまでの事を忘れず、実りある関係を築いていきたいと思う」
「その言葉に期待します」
それで、と仕切り直して、真一さんは今日の本題に入った。
「現在我々はダンジョンの第五層に達しています。その階層である問題が発生し、その解決の為のご相談をしたいのです。恭二、バットを出してくれ」
「了解」
恭二が収納していた真一さんのバットを取り出した。
そのバットは途中から歪んでおり、また巨大な手形のような物がついていた。
「・・・なんと」
「これは・・・すごい」
「これは昨日、5層のボスであるオークに殴りかかったバットです。一撃を与えたのですが大したダメージも与えられず、逆に奪われて殺されかけました」
絶句する二人の政治家の前にバットを置き、淡々と真一さんは語る。
「ここから先に進むための武器を我々は求めています。例えば日本刀、槍、薙刀。重火器の使用も視野に入れなければいけないかもしれません。その為の援護が欲しいのです」
「・・・・・・成る程」
「勿論、まだ槍や重火器の使用を検討するには世論が厳しいのは承知しています。しかし、世界中に100ヶ所、国内にも11ヶ所ダンジョンは存在しています。今後はダンジョンを探索する専門家がきっと現れるでしょう。武器や防具が必要になります。何らかの方法で所持を許可してもらえないと、非常に困る事になる」
「それは、確かにそうなるかもしれません。分かりました。ひとまず専門家に諮ってどのような対策が取れるのか研究を始めましょう」
「よろしくお願いします」
真一さんの説明に合点がいったのか、幹事長氏がそう言って頷いた。
部屋の隅にいた秘書らしき女性に目線を送ると、その女性は頷いて何処かしらに連絡を取り始める。
それを横目で眺めながら、真一さんは「ああ、そういえば」と思い出したように口にする。
「ところで、今俺たちが使っている装備は米軍から供与されています。ご存じでしたか?」
「いえ……存じ上げておりませんでしたが」
「このままですと、アメリカ軍主導で迷宮用の装備技術が発展します。日本企業は下請けになるのでは?」
「それは……面白くはありませんな。田井中君!」
真一さんの言葉をすぐに理解出来たのか、幹事長氏が立ち上がって秘書さんと話始める。
用件が終わった以上長居する意味もない。真一さんが「そろそろ行こう」と口にしたので俺達はソファーから立ち上がった。
真一さんが官房長官に礼を言って握手をしてした時、部屋のドアをノックしてSPを引き連れた男性が入ってきた。
「申し訳ない、時間がないのでこのままで失礼します」
内閣総理大臣はそう言って軽く頭を下げた。
第十話
「申し訳ない、時間が押しておりましてこのままで失礼します」
そう言って総理が挨拶をした。
いきなりの日本トップの登場に流石の真一さんも驚いたのか固まってしまっている。
「アメリカ大使より皆さんのお話は伺っております。現時点で世界屈指の『冒険者』だと。我々日本政府の対応に多々問題があったことも承知しております。ですが、我々としては今後、皆さんのお力、お知恵をお借りして、なんとか『迷宮』問題をよりよい方向に進めたいと思っています。憤りもあるでしょうが、どうかお力をお貸しください」
そう言って総理は頭を下げると、真一さんから順に俺達と握手を行っていった。
そして俺の前に来ると、「鈴木一郎くんだね」と声をかけてくる。
「君が行っている広報活動の目的は把握しています。君達の危惧は尤もな事だと思う。我々日本政府としても助力を惜しまないつもりだ。右手を見せてもらっても?」
「あ、はい」
そういって、総理は俺の右手に触れ、そして硬く握手を交わした。
「本当に申し訳ない。このあと閣議がありまして……必ずいずれ時間を取って、皆様のお話をお聞かせいただきたいと思いいます……須田君」
「はい」
総理はそう言って官房長官と共に部屋を出ていった。
「あー、負けた! 悔しい!」
真一さんはそう言って髪を掻く。シャーロットさんは苦笑いだ。
俺としてはもう凄いとしか言葉に出来ない対談だったが、真一さんからしたら最後の最後で詰めを誤った出来らしい。
いや、うん。総理の不意討ちはしょうがないと思う。
こちらの要望もほとんど通ったし良いんじゃないかな?
さて、現在俺達は東京は銀座に来ている。
日本刀を扱う刀剣商が銀座には集中しているからだ。
「何で銀座なんだろうね」
「わかんね。買う人が多いんじゃないか?」
沙織ちゃんの質問に恭二が答える。それは流石に適当すぎるだろ。沙織ちゃん膨れてるぞ。
俺達はスマホで調べた店の住所をリストアップしていく。予算も限られているし少しでも安く数を揃えたい。
リストアップした店から一件選んで中に入ると、ショーケースに陳列された刀剣類がまず目にはいる。
物珍しさにキョロキョロしていると、真一さんは真っ直ぐに店主らしき初老男性に向かって歩いていく。
「何の用だい、お兄さん方」
「実用で刀を使いたいんですが、一本予算50万で用意できませんか?」
「実用ぉ?」
店主の男性は困惑気に真一さんを見て、俺達に目を向ける。
「あんた、右手の。ダンジョンかい」
「あ、はい」
「ああ、そうかそうか。ニュースでみたよ」
店主さんは納得したとばかりに頷くと、真一さんに向き直った。
「無銘の物でも構いません。ニュースで見たのならご存知と思いますが、俺達はバットを使って戦っていました。それでは勝てない敵が出てきたので、武器を探しています」
「成る程。合点がいった。だがね兄さん、まず一つ。ここで売ってる物に50万で買える刀はない。良くて懐刀か脇差し位だな」
これでそこそこの店なんでね、と店主さんは笑った。
「そう、ですか…」
「二つ目だが、名を得た名匠ではなく修行中の中堅所の打ち物で良いかな? その値段でもかき集めれば数本は手に入るだろうさ。紹介料は多少頂くがね」
「お願いします!」
真一さんの言葉に頷いて、店主さんは俺達を応接間らしき場所に通してくれた。
他所の店舗に連絡を取る間、お茶でも飲んで待って欲しいそうだ。
店主さんはそれから程なく8本の刀をかき集めてきた。
料金も1本50万前後。流石はプロだな。
「はい、毎度あり」
「お世話をお掛けしました」
「なぁに、面白いものも見れたし他所に恩も売れたからな。良い仕事だった」
近所の銀行でお金を下ろしてきて、一括現金払いする。恭二の収納で刀を全て片付けると、店主さんは「おおっ?」と驚いて喜んでた。
「そうだ、兄さん達は奥多摩だったな? あんたらに渡した刀の内、3本を打った刀匠は、青梅に住んでいるぞ」
「青梅に?」
「ああ。確か沢井だったな」
奥多摩町からすぐ隣だ。
「1本50万じゃそうそう刀なんか買えんぞ。そっちの刀匠に一度話してみたらどうだ?」
「紹介をお願いできますか?」
「構わん。修行中の連中の食い扶持になるしな。ただ……」
店主さんはそう言って俺に目線を向ける。
「孫にちょっと自慢したいんだが」
「あ、はい」
「出来ればあの青い奴になれんかね。孫が好きでな」
散々お世話になったし構いませんです。ちょっと着替えの場所を借りますね。
その後、ロックマンのスーツを着て数枚写真を取る。
シャーロットさんがポラロイドを持ってて助かった……あ、こういう時用に一花に渡されてたんですね。
この場に居ないのに用意良いっすね一花さん。
刀剣商を出た俺達は横田基地に向かっていた。
「ニールズ大佐がシンイチのアイディアを聞きたいそうです」
シャーロットさんに頼んでいた防具の件で、米軍からも前向きな返答が来たためだ。
『ライオットシールド、ですか』
『はい。右手に片手武器を持ち、左手に盾を。恐らくこれが一番臨機応変に対応出来ます』
『ふむ……』
オークに曲げられたバットを見ながらニールズ大佐は頷いた。
『恐ろしい。たったの5層下にこのような怪物が居るのですな……わかりました。確かにSWATの装備が良いでしょう。3日程頂ければ用意致します』
「ありがとうございます!」
『いえ、こちらこそ礼を言わせて頂きたい。貴方方の生の情報は大変価値のあるものだ。この程度の援助ではむしろ申し訳ない位ですよ』
そう言って大佐と真一さんが握手をかわす。
これで防具の目処もついた。第6層の攻略も見えたな。
『ああ、所で、その』
『あ、はい』
今日二回目の撮影会ですね、わかります。
あ、お孫さんに連絡入れたら凄い羨ましがってた、そうですか。それは良かった。
は、はは。
第十一話
新しい装備が届くのは週末になるとの事なので、
「じゃあキリキリ撮ってこうか!」
『OK、ボス!』
一花の号令にCCNスタッフが陽気に返事を返す。
ここはダンジョンの3層入り口。
新魔法の研究ついでにある程度慣れてきた3、4層をコスプレをしてクリアしようという魂胆だ。
「ヒーローは戦ってなんぼでしょ!」
とは妹氏の談である。ヒーロー?
疑問符が頭を過ぎるが、まぁヒーローを模しているといえばその通りか。
さて、今回は何を着せられるのか・・・と覚悟を決めるも一花はそれらしい手荷物を持っていない。
スタッフに預けたのかな? と思いそちらを見ても撮影機材くらいしか持ってない。
と言うことは収納か?
「いや、流石にこの短期間で新コスは用意できてないからね。恭二先生、お願いします!」
「どぉれ」
一花の言葉に合わせて芝居がかった様子で恭二が俺の前に来る。
新コスチュームはない? どういうことだ。
右手しか変身はできないんだが。
「右手以外は変えられんぞ?」
「大丈夫だ。こんなこともあろうかと! こんなこともあろうかと! 新魔法を開発した!」
「私も一度言ってみたいよ。素直に羨ましい!」
大事なところなので二度繰り返したらしい。
恭二は俺の左腕に触ると「ちょっと使ってみる」と言って呪文を唱えた。
「トランスフォーム!」
「そのままかい」
「イメージしやすいんだよ。おし、出来たぞ」
恭二がそう言って手を離すと手を銀色のグローブのようなものが覆っている。
ペタペタと体を触ると、確かに軍服を着ているはずなのに、その上から何かが覆っているように感じる。
あ、これもしかして頭も覆ってるのか? 触るまで分からなかったが何かバリアーに近い感じがするな。
「ふふふふふっ、まさかここまで上手く行くとはね、見てみる?」
ほくそ笑む一花はそう言って携帯電話を渡してきた。
礼を言って携帯を受け取り画面を見ると・・・・・・
「・・・・・・何だこれ。仮面ライダーのパチ物か?」
「本物の仮面ライダーだよ! 謝れ! 4号ライダーさんに謝れ!」
「お、おうすまん」
ヘルメットの下が普通に口なんだが、あ、いえ何でもないですごめんなさい。
参考資料として用意していた漫画を見せてもらう。こんなものまで収納してんのかよ恭二。
えーと、途中から参加なんだな。ライダーマンか。
ほうほう、カセットアーム。右手のアタッチメントを付け替えて色々出来る、確かに俺向きかもしれんな。
「マシンガンアーム!」
右腕を機関銃型に変形させて弾(簡易ファイアボール)をばら撒く。
もちろん優先的にゴブリンメイジを鎮圧だ。
簡易式とはいえ当たればほぼ相手を倒せる。やっぱり弾幕はパワーだぜ!
そしてその弾幕を避けて近づいてきた奴には!
「ギガァ!」
「スイングアーム!」
右腕を鉄球に変形させてオーガをぶん殴る。
剣を使って防ごうとするが、そんなもので鉄球が止まるものか!
顔面を変形させてぶっ飛んだオーガが光の粒子になって消えると、今回の戦闘は終了となった。
やべ、これ楽しいわ。
思った以上にライダーマンスタイルがハマってつい4層もラストまで来てしまった。
しかもここまでほぼ1人で戦ってる。これめちゃ強いんじゃないか?
「強いなライダーマン。やる事が探知しかなかった」
「いや、十分助かった。でも確かに良いわ。万能型って感じで。あと技名叫ぶのが楽しい」
「技名じゃなくてアタッチメントね!」
一花がそう言ってスポーツドリンクを手渡してくる。
「いやー、良い画取れたよー! これは放送した時の反応が楽しみだね!」
「そうか。でも、これ知ってる人いるのか?」
「んふーふ。もっちろん! 若い人はロックマンで引き付けたからね。次はナイスミドルな人たちを狙わないと!」
ロックマンやブルースの動画で若い世代に注目されたので、次はもっと上の世代も視野に入れるらしい。
実際、俺にサインを貰っていく人たちもお孫さんとかお子さんにって人が多かった。その点を一花も苦慮していたらしい。
「子供や孫がファン、じゃやっぱり弱いんだよね。味方をもっと増やさないと」
「ありがたいけど、無理はすんなよ?」
「今めっちゃ楽しんでるから大丈夫!」
一花はそう言うと、「じゃ、撤収!」とスタッフに声をかけにいった。
・・・・・・うーむ。もっと頑張らんといかんな。
兄として負けるわけにはいかんと気合を入れて、俺はふと思い出す。
これ(変身)どうやったら解けるんだ?
すんません恭二先生ちょっとこれどうやれば。アンチマジック?
・・・・・・あの、解けないんですが恭二先生? 恭二先生!?
尚触りながらアンチマジックをしたら解けました。結局半日変身しっぱなしでした。
・・・・・・疲れた。
第十二話
さて、防具が届くまでの間に行ったのは撮影会だけではない。
「そうそう、目釘の真上を持つんだ」
「あ、安西先生・・・刀が重いです」
「惜しい。僕は安藤だね。それスラムダンクだっけ。良く知ってるね」
カラカラと笑って安藤先生は鞘にいれたままの日本刀を構え、振り上げ、振り下ろすまでの動作を行う。
真一さんが昔通っていた剣道場の師範代だという安藤先生は、真一さんから今回日本刀を扱うことになった、という相談を受けてすぐに山岸家に来てくれたという。
「素人がいきなり本身を扱うなんて無茶にも程がある。事前に相談してくれて良かった」
とは山岸家についてすぐ、応接間での言葉だ。
それから二時間、日本刀を扱う上で気をつけたほうが良い取り扱いについてのレクチャーを受けた後、実際に木刀を手渡されて全員で素振りの練習だ。
「ふむ、思ったよりもみんな力がある。あのちっちゃい子なんかまともに持てるかも怪しそうなのに」
「おそらくダンジョンの影響です。魔力と言いますか、魔法に使うエネルギーは身体能力も向上させるみたいで」
「興味がつきないな。真一、この後日本刀を実戦で使うのだろう? その時私も潜らせて欲しい」
「わかりました。CCNの方とも相談になりますが」
安藤先生は真一さんと俺たちの素振りを見てそう話し合う。
確かに最近、結構無茶な動きをしても余裕で出来てしまう。ロックマンのコスの時はそれほどでも無かったが、ライダーマンの時はキックでゴブリンが破裂したりしてたからな。
キックは、義務だろ? ライダーマンはやらない? あ、そう・・・
「いや、やっぱおかしいって。普通に蹴って破裂ってなんだよ」
「ヒーローですから?」
「やかまし。ちょっと力込めてもらえるか?」
恭二に言われるまま、左手をぎゅっと握り締める。
眉を顰めて恭二が真剣な表情で左手をじぃっと眺めると、恭二の目が淡く光りだした。
あれ、こいつなんか魔法使ってね?
そう問いかける前に「ああ、わかった!」と恭二が言った。
「強化の魔法だ、これ」
「・・・何も唱えてないぞ?」
「分かってるよ。多分自動でかかるんだ。俺らも魔力を持ってから似たような事になってるけど、それをお前の場合きっちり魔法として発動してるんだよ。自動で」
「パッシブスキルとアクティブスキルの違いってこと?」
途中から口を挟んできた一花に、「パッシブ?」と恭二が尋ねる。
「要は常時その効果が現れるものの事。アクティブは普通の魔法みたいに使おうとしたら効果がでるものの事だね」
「ああ、それ。そんな感じ。ちょっと俺も使ってみるわ・・・パワー、でいいかな」
「そこはストレングスだよ恭二兄ちゃん」
一花の突っ込みに苦笑して恭二が「ストレングス!」と叫ぶ。
一瞬光ったかと思うと、すぐにその光も収まる。外見的な変化は無さそうだな。
「・・・あ、なるほど。一郎、ちょっと飛ぶからしくったら受け止めてくれ」
「・・・うん?」
何を言ってるんだ、と問いかける前に恭二がしゃがむと、ドンッという音と共に姿が見えなくなった。
恭二が立っていた地面にはひび割れのような後がある・・・上か。
恭二はおそらく4、5mほど飛び上がった後、落ちてきた。
これ受け止めるのか俺。あ、いやでもあいつなんか妙にゆっくり落ちてくるな。
すたっと地面に降り立った恭二は満足そうな笑顔を浮かべた。
「体重を軽くして飛び上がってみた。いや、予想より行ったわ」
「今新呪文2連発だったのかすげぇなお前。ここで試すか普通」
「失敗は成功の母だからな。最悪どっちか失敗しても受け止めてもらえれば大丈夫だし」
あっけらかんと言い放つ恭二。やっぱこいつヤバイ奴なんじゃないかと最近小まめに思う。
取り敢えず慌てて駆け寄ってきた真一さんへの説明はお前がしっかりやれよ。
ヘルプ? 俺関係ないだろ今の。
「ねえねえ恭二兄ちゃんちょっと相談なんだけどさ」
「うん? 何だ一花ちゃん」
「あのさ。ごにょごにょごにょ」
「・・・ああ、イケるかも?」
「ほんと!?」
後ろのほうでごにょごにょと一花と恭二が何やら密談している。
非常に嫌な予感がするが、今現在俺はそれどころではない状況に陥っておりそちらに構う余裕が無い。
「えーと、あっちにいるね」
「私もわかったよ!」
「お、沙織と一花ちゃん正解。兄貴と一郎とシャーロットさんはどうだ?」
「俺は何となく掴めて来た気がする」
「・・・・・・まだだ」
「これ、難しいです」
必死に魔力の流れ的なものを嗅ぎ取ろうとするもどこに敵が居るのかが良く分からない。
そう、今俺達は感知の魔法を練習しているのだ。
というのも、恭二が再三今のうちに絶対に覚えたほうが良いという二つの魔法・・・回復と感知を覚えるまでは、5層以降には行かないほうがいいと言い始めたからだ。
先日の事件の影響か慎重になった真一さんもそれを承諾。
俺も沙織ちゃんも一花も異存は無かったし、シャーロットさんも有効性を認めてくれたため現在刀の習熟がてら俺達は2、3層で感知の魔法を練習していた。
練習、しているのだが・・・
「回復まで右手から発射されるのか」
「ある意味有用じゃない? 距離があっても射撃でヒール!」
「ヒールショットって所か」
どうも体から離れた距離への魔法は右腕を基点に発動するらしい。
バリアくらいの奴なら問題ないんだがな。
「多分そういう得意分野的なのが人によってあるのかもね!」
「恭二は魔法全般、一郎くんは近距離って感じかな?」
「そうかも。意識しないでストレングスを使うのは俺には出来ないし」
持続時間的にも呪文でストレングスを唱えると数分で効果が切れるらしく、俺のように好きな時に力めば発動ってのとは実質的には違うもののようだ。ただ、瞬発力だと呪文の方が良さそうな気もする。
「あ。もしかしたら今いけたかも」
暫く練習して魔力の流れを読むという事を繰り返していると、ゴブリンが姿を現す前くらいに何となくこちらから何かが来る、というのがわかるようになってきた。
その感覚を出来るだけ広げるように何度も繰り返していくと、ボスの存在だろう、少し大きな気配にいきつく。
「なんかあれ。飛行機とかのセンサーみたいなのあるじゃん。あれが頭にある感じ」
「人それぞれなのかな? 私はなんかこの辺りって、ピンと来た感じだよ!」
「へぇ~」
恭二も一花と似たような感覚らしい。魔法についての捉え方でも結構差がでるもんだな。
その後は日本刀でゴブリンと戦い、都度講評を安藤先生から貰って夕方前には疲れてきたので終了。
明明後日には防具も届くだろうし、次はオークだな。
やる気を漲らせて、俺たちは帰路についた。
官房長官:半分頭を下げに来た人。
幹事長:残りの半分頭を下げに来た人。
総理大臣:特に意識してなかったが絶妙のタイミングで入ってきた事を官房長官に言われ苦笑い。
刀剣商の店主:孫と久しぶりに会話が弾む。
ニールズ大佐:孫にMEGA MANと親しいと自慢。会わせて欲しいとお願いされて苦境に立たされる
CCNスタッフ:最近少女の号令で動く事に楽しみを感じている。
ライダーマン:仮面ライダーV3の相棒。正式な4号ライダーだぞ!彼の活躍を見たい人は是非『仮面ライダーSPIRITS』を読もう!(ダイマ)
山岸恭二:バリアーのコツでちょろっと変身魔法を完成させた。イメージできれば大概いけるんじゃないかと最近は色々な漫画を読み割りとヤベー魔法がぽつぽつ開発されている。
安藤先生:真一が剣道をしていた頃の恩師。一郎たちが感知の練習中、ひたすら画面外でゴブリンを切りまくっていた。