奥多摩個人迷宮+   作:ぱちぱち

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毎日更新がモチベーション的にキツくなって来たのと、数日ほど会社のお偉いさんが見回ってるため作業時間が確保できません。
日曜日の分は用意してあるのですが、月曜日から何日か更新出来ないかも知れないので、7時に更新されてなかったら察して頂けるとありがたいです。

誤字修正、244様、アンヘル☆様ありがとうございます!


第七十九話 合格者37人

各国代表のリーダー達が10層に到達し、二種免許を取得した。

ここからはリーダー格以外の班員が順番にチームを率いてダンジョンに潜り、全員がチームリーダーとしてチームを率いて10層に到達する事が出来るまで習熟訓練を行う予定だ。

 

各国リーダー達は班員兼補佐役となりその時のチームリーダーを補助。ダンジョンアタック後のミーティングではその時の総評と指導点を伝える役割を担う事になる。

つまり彼らにとっても教官免許の訓練になると言う事だな。

 

 

「やる事が無くなったなぁ」

 

「良い事じゃないか。やる事のある班に当たらなくて」

 

「ああ。今日は佐伯さんが5チームの班長なんだっけ。担当は?」

 

「シャーロットさんなんだけど、あの人女性の教官だとなんか態度がな」

 

「ああ。沙織ちゃんがぶーたれてたなぁ」

 

 

基本的にチームは8チームにわかれており、1から4までが前半、5から8までが後半として分かれてダンジョンに入っている。

 

人によっては最初のリーダーの時に10層まで行く場合もある為、チームリーダー達による最初の10層到達から一週間も行かない内に半分以上の代表メンバーが二種免許を取得している。

 

今現在まだ二種免許を取ってない人も大体は慎重な人か、順番の組み合わせが悪かった人達だ。

二種免許を取った人は各国のリーダーと同じく班員兼補佐役になる為、そういった人達も殆どは2、3日で合格するだろう。

本当にごく一部を除けば。

 

 

「何か協会の方からもう少し手心をとか言われてるっぽいね!」

 

「人の生死が掛かってるのに何言ってんだって、社長が切れてたな」

 

 

問題がある人間は3名。全員が日本代表だ。

その内、まだ見込みがありそうなのが2名。この2人は、もう1人の見込みがないとヤマギシチーム全員に判断された佐伯という男に従っており、彼から遠ざかっている時は指示にも従うし、言われた事を熟す事も出来る。

 

 

「つまり指示待ち人間だよね?」

 

「そうともいうな」

 

「二種まではともかく教官免許は無理じゃない?」

 

 

俺も無理だと思ってる。

一冒険者としてならともかく、彼らに後輩の冒険者を育てる事が出来るとは思えない。

 

或いは10層まで単独で潜れる位の実力者なら話は別かもしれないが、キャンプを始めてもうすぐ一月という現在、彼らは明らかに他の冒険者達に遅れを取り始めている。

この状況を問題視している協会幹部も居る為、何かしらの動きはあると思うが・・・

 

 

 

結局、7月の間に件の3名は教官免許を取得する事は出来なかった。

日本冒険者協会としては人選に問題があったとし、これらの3名は8月以降の教官研修には参加させず一冒険者として地元のダンジョンに戻ることになる。

 

あの3人、見送りに来た昭夫くんに悪態ついて出て行きやがった。

仲間と思っていた人達の妬みと恨みの言葉に参ってしまった昭夫くんをお姉様方が慰めていたのはちょっと羨ましかったがな!

しかしあいつら、出て行く時まで迷惑をかけるなんて、本当に碌な事しないな。

 

 

「協会長には文句を言っといた。記念すべき初回に贔屓人選なんぞしやがって」

 

 

不愉快そうにそう言って、社長がノシノシとアロハシャツを着たままヤマギシのSUVに乗り込む。

格好と表情が全然一致してませんよ、社長。

一先ず全員が教官免許を取得し、後は実際に人を教える教官研修を残すのみとなったブートキャンプでは、この一ヶ月の疲れを癒やす為と、教えることになる人員の調整の為に一週間ほどの休みが設けられた。

そして預かっている生徒さんが一斉に居なくなる頃合いを見計らってヤマギシも夏期休暇に入る。

 

 

「と言っても俺達は免許取得の為だから、殆ど仕事の延長だけどなぁ」

 

「ぼやくな。沖縄の海でも見て心を癒やそうぜ」

 

 

俺と恭二はため息をつきながら飛行機に乗り込む。

社長達は一週間で帰る事になるが、俺と恭二と沙織ちゃんは普通免許を、真一さんが大型免許の取得、それに今年は一花がバイク免許を取れる歳だからな。

前回はただの賑やかしだったから、今年はたっぷり苦労するがいい。

 

 

 

「実は奥多摩でもう免許取ってきてるんだよね」

 

「嘘だろお前」

 

 

教習所に何故か姿が見えなかった一花に何をしていたのか問い詰めると、にこやかな笑顔で真新しい運転免許証を取り出してきた。

しかも取得した日付は5月。もう三ヶ月も前になる。

 

 

「前々から準備してたし筆記も実技もラクショーだったよ?」

 

「一発合格とか・・・都市伝説じゃなかったのか」

 

「いや、珍しいかもしれないけど珍しいってだけだよ?制度として成り立つ位は居るんだから」

 

 

戦々恐々とした様子の恭二に呆れるように一花が答える。

俺と恭二は昨年、その筆記の方で大分苦労したんだが。

一花は一週間は社長達に付いて回り、それが終わったら知り合いの所を回ったり離島を巡るらしい。

年頃の娘が、と社長は心配してたが大鬼相手に接近戦が出来る一花を何とか出来る奴はそうそう居ない。

 

その間俺達は毎日暑い中、ホテルと教習所を往復する毎日だ。

MT免許の教習と大型自動二輪、大型特殊、牽引まで取るので、結構ハードな研修になるな・・・

 

 

「でも実は水着新調したんだよね」

 

「終わったら、帰る前に遊ぶか」

 

 

恭二と沙織ちゃんの間に漂う甘酸っぱい空気が心に来るぜ。

早く奥多摩に帰りたい・・・




佐伯さん:日本代表の問題児。西伊豆ダンジョンから代表としてきていたがリーダーとしての適正が非常に低いと判断され、教官免許の取得まで進める事ができなかった。

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