「魔法が使える医師が各ダンジョンに欲しい?」
「ええ、少なくとも今回のキャンプに参加した冒険者達が居るダンジョンには。恐らくそこは近隣の冒険者の育成も担う事になるから必要でしょうね」
真一さんはそう言ってウチの親父に書類の束を渡す。今回のキャンプで魔法には適正が必要な事が分かったし、もしかすると人によっては本当に覚えられない可能性もあるからな。
ダンジョンを出たらすぐに回復魔法を掛けて貰える場所は必要だろう。
前回縁ができた川口医師は、「職場の義理を果たせたら是非この奥多摩で働きたい」と言ってくれているし、まず奥多摩で実施してみるのも良いかもしれない。
「迷宮に潜るスキルもあるリザレクションの使える医師。しかも今後は後進の育成も担ってくれるそうだ。喜べお前ら!今回のブートキャンプでは3名も冒険者部門が増えたぞ!」
「やったー!人手不足解消だー!」
「どんどんぱふぱふー」
会議のたびに行われるこのノリはいつまで続くんだろうな。
ほら、初参加のデビッドや御神苗さんが戸惑ってるじゃないか。
さて、今回の会議は現状の確認という意味合いと現在ヤマギシが行っている事を新人二人に説明するという意味合いがある。
現在ヤマギシは奥多摩の山を削って大工事を行い、工場を建てている。
「元々ウチと協力関係にあった瑞穂町にあった三成精密さんは身内になったし、全部こっちの新工場に移したんだよね!」
「最新設備も入れてある。少なくとも去年の1.3倍はペレットも作れるって試算も出ている」
ヤマギシの主要産業になった燃料ペレットの生産が更に加速するわけだ。まぁ、今現在まるで需要に供給が追いついてないからようやくって所か。
燃料ペレットは現在一本1000万以上の値段で取引されている。一度買えば再度魔力の補充はできるんだが、どこも新品を欲しがっているせいでまるで足りてない状況なのだ。
しかし、新しく完成したこの工場で生産するペレットは、フル稼働すれば現状国内にある火力発電所の分を十二分に賄える計算になるらしい。
この結果に、石油の消耗を大きく抑える事ができると政府筋からも喜びの声が上がっているそうだ。
まぁ、燃料ペレットについてはテキサスの方で大規模な工場が鋭意建設中だし、そちらが完成するまで精々稼がせてもらおう。
また、この工場の建設に伴い、藤島さんを筆頭に刀匠が10名、それに刀研ぎ師3名、鞘や拵えの職人さん2名が、この工場に隣接する工房の主として居を移してくれていた。
彼らは形式上、個人事業主としてヤマギシと契約してもらって、変わりにこちらは工房と住居を提供する形だ。
「シナジーが凄いよね。三成精密の技術で、アルミ合金製の槍の柄が量産できるようになったもん」
「ああ。今まで使っていた柄よりも軽くて硬い。この辺りはやっぱり蓄積した技術力の差だろうな」
藤島さんも宮部さんも悔しいけど嬉しい、って不思議な言葉を口にしていた。
技術者としては悔しいけど、そんな相手と一緒に仕事が出来るのは嬉しい。張り合いがあるって言っていたな。
ライバルって奴なんだろうか。うむ、何となく気持ちは分かる。
金属加工の職人と刀匠が隣同士で作業が出来るのは生産性をとても向上させている。
この調子で行けば世界的に注目が集まっている現状でも装備を行き渡らせる事が可能かもしれない。
また、玉鋼の制限から開放された日本刀も、ダンジョン由来の魔鉄や現代冶金学で作り上げた合金を使用した「魔剣」の製造が認められるようになった。
こいつは5~6層のオーガやゴブリンが持つ剣なんか相手にもならない強さだ。恭二が試し切りに使ったら、敵の剣ごと両断し刃こぼれもしなかった。
なにより、エンチャントの炎をたなびかせて敵を斬る映像はめっちゃカッコいい。そうとしか表現できない位にカッコいい。
値段は一振り300万円以上と超強気の値段なのに常に生産待ちの状態で作れば作るだけ売れている状態だ。
槍の方も一本200万以上という値段なのに同じく人気で、この間預金通帳を見て怖くなったと藤島さんが語っていた。
初めて俺が米国政府からの報酬を振り込まれた時と全く同じ表情だったので、少し笑ってしまった。
ペレットといえば同じゴーレムのストーンゴーレムのブロックやサンドゴーレムの残すレンガ状のドロップも魔力を纏わせる形で活用できないか研究が進められている。
こちらの研究は主に真一さんと、真一さんが自身の大学の先輩をスカウトして連れてきて一緒に研究しているそうだ。
引き合わせてもらった時にいきなりシェーのポーズをした後にサインを求められて「あ、この人は変人だな」と確信したが、非常に優秀な人らしくブロックやレンガを破砕した後にセラミックのように加工したりして魔力を乗せられないかや、モンスターがドロップする皮の有効活用などを研究してくれている。
この間試作品として渡されたキマイラの皮を使って作られたボディアーマーは、アーマー自体に魔力が通ればバリアの効果を及ぼすように作られており、魔石を使って十分に魔力を持った冒険者なら着るだけでバリアを維持してくれる優れものだ。
「惜しむらくはずっと消費されるせいで魔力切れが起きるって事だな」
「下手な人には渡せないよね。過信して大事故とか目も当てられないし」
「そうは行ってもな。魔力測定器でもなければ誰がどの位使えるかもわからんし」
「測定器・・・・・・欲しいですね」
結局魔力を測る何かが無ければ誰がどれ位魔法を使えるかもわからない。こういったマジックアイテム的な物も使いづらくなってしまう。
あーでもないこーでもないと俺達が朝食そっちのけで話していると、「ソーいえば」と一緒にご飯を食べていたケイティがポン、と手を叩いてこう提案してきた。
「皆サン、カリフォルニア、行きマス?」
にっこりと笑ったケイティの顔を呆気に取られたように俺達は見た。
先輩:研究職に突こうと思ったが言動がエキセントリックすぎて全落ちしこのまま院に進むかと覚悟を決めていた所真一に拾われた人。