奥多摩個人迷宮+   作:ぱちぱち

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誤字修正、日向@様、ハクオロ様、244様ありがとうございます!


第八十三話 魔力センサーの開発

日本も大概だがカリフォルニアには変人が多い。

今俺の前で大仰なリアクションで俺の手を取り喜んでいる薄汚れた格好の学生を見て、改めて俺はそれを思い知った。

変な人、というのは社会的には余り褒められた言い方ではないが、人と異なった発想を持つ人、というのは意外と大きな事を成したりする。

そんな人材になるのでは、とブラスコと全米冒険者協会は、素材を提供したり、見込みがありそうな変人には資金援助をしたり、会社設立の援助をしているらしい。

真一さんと同年代らしい彼もそんな人物の1人だった。

 

『ぼぼ僕の開発した測定器は、ごごゴブリンの魔石を吸収した時の経験を元に開発しました』

 

出会った当初のウィルを思い出すこの安心感よ。

何でも本人はダンジョンには少ししか潜った事がない為、ゴブリンの魔石やドロップ品を協会から融通してもらい、魔石の魔力を吸う前と吸った後の違いから関連付ける事のできるエネルギーを測定。

恐らく誤差が最も少ないだろうパターンを発見し、これを測定する機械を作ったそうだ。

物を見せてもらうと、ごてごてとしたむき出しの電子回路にLEDランプやカウンターが付いていて、中にPCで使うような基盤がありそこで計算をしているらしい。

手作り感がすごい。こういうの良いね。

 

試しに動いている所が見たい、というと了承した兄ちゃんがプレートに手を乗せる。計量器みたいだなぁと思いつつプレートの傍についているカウンターを見ていると、チ、チ・・・とメーターが上がっていき。数値は6.2と表示された。

何でも1の数字はゴブリンの未使用魔石を基にして居るそうなので、彼は6.2ゴブリンの魔力を持っていることになる。

次に付き添いという事で来ている協会の人に試しにプレートに触ってもらうと、こちらは3.2となった。成る程、この人はダンジョンに数回足を踏み入れただけという事なのでダンジョン未探索者は大体この位の数字なんだろうな。

さて、では本命のご登場だ。

 

「恭二、お前やってみろよ」

「ああ。俺も出来ればお前の今の数字が知りたいな」

「ええ・・・・・・」

 

嫌そうな顔をする恭二を両脇から俺と真一さんで抑えてプレートの前まで歩かせる。

間違いなく現在人類最高の数字が出るはずだし、このデータは貴重な物になるだろう。後、恭二と他の人間がどれくらい差があるのかも見てみたいしな。

観念したのか大人しく恭二が右手をプレートの上に乗せると、一瞬で数値が駆け上がり4桁を超えてカウンターは『ERROR』の文字になった。

 

『嘘!?』

 

その結果に目を剥いた兄ちゃんはリセットをして再度自分の手を乗せ、問題なく6.2の数値が出た様子に安堵の顔を見せた。

 

『えーと、じゃあ私が触って見ても良いかな?』

『あ、ああ。お嬢さんよろしく頼むよ』

『は~い』

 

一花が手を上げると兄ちゃんもプレートから手を離してリセットを行った。

一花がそっと壊さないように手を乗せると恭二の時より大分緩やかだがあっと言う間に4桁まで行き、4桁を超えて『ERROR』の文字が出てくる。

兄ちゃんがムンクみたいな顔をしてる、すげぇな、あんな顔人間が出来るのか。

まぁ、確認する限りこれだと計算能力が足りてないんじゃないかな?

 

「恭二、オークの魔石って出せるか?」

「ん?あ、ああ」

 

俺に言われて恭二が収納からオークの魔石を取り出す。

ゴブリンのそれよりも大きなそれを兄ちゃんは初めて見るらしく何なのかを確認されたが、オークの物だと伝えて乗せてみても良いかと確認する。

了承を得られたので確かめる意味も込めてプレートの上に乗せて見ると64.7という数字が出た。

結構差があるんだな、ゴブリンと。

 

『このオークの魔石を吸収してみてもらっても良いですか?』

『あ、ああ。ありがとう。良いのかい?』

「どうぞどうぞ」

 

オークの魔石は現在の値段だと未使用で数十万円位するからな。思いもかけず貴重な物を手にしてしまった兄ちゃんが少し震えながら魔石を吸収する。

そして使用されたオークの魔石をプレートに載せると0.2の数字になった。このコンマ2は誤差だとしてもほぼ正確に数字が出せているようだ。

そしてここが重要なのだが、兄ちゃんに再度プレートに触って貰う。恐らくこの結果が恭二と一花の測定が出来なかった理由だろうなぁ。

 

『・・・・・・70.8。多少目減りしているが・・・・・・』

『成る程。どうやらこの計測器は非常に優秀な出来のようですが、メモリが細かすぎるんでしょうね』

 

体重計を求めていたら計量器が出されたようなものだろうな。

だが、今現在10層までがメインの狩場になる一般の冒険者やこれから冒険者になる人、一般人の魔力を計る時にはかなり役に立つんではないだろうか?

そう伝えると、兄ちゃんは嬉しそうに頷いていた。恐らく計算性能の問題だから、通常のPCレベルではなくもっと専門化した機械を用意できれば恐らく解決できるだろうとの事だ。

とりあえず現状のレベルで何処まで図れるか確認した所、10層までの相手ならほぼ問題はないがゴーレム以降は桁が上がってしまう為対応できない模様だった。

 

『面白い結果です。少なくとも現状でも低位の魔石を選り分けるのに使えるし、細かい魔力を測るのには十分すぎる性能でしょうね』

『あ、ありがとうございます!』

『ただし、このままではセンサーの能力が明らかに足りていない。非常に良いアイデアなのに設備や材料が足りていないのを感じていますが・・・』

 

真一さんがにこやかに笑いながら発想と着眼点を褒め、ただ諸々足りていないものを指摘すると兄ちゃんも神妙そうに頷いた。

実際、10層までの産物で見るなら兄ちゃんの機械は十分すぎる性能だった。ただ、そこから先の桁が文字通り違ってしまったのが問題なのだ。

彼はその後ブラスコや真一さんと数回の協議を経て、センサーの特許を取得。ブラスコ側の支援を受けてセンサーの能力向上に日夜を費やす事になったらしい。

取りあえずもっとも単純に計算能力を引き上げたコンピューターを用いて開発を続けていくそうだ。

 

そして、彼が最初に作った魔力計量器は機能はそのままで冒険者の居るダンジョンに配布。未使用の魔石と使用済みの魔石を選り分けるのに使われているらしい。

どこにでも不心得物は居るもので、今までも結構な数の使用済魔石を人に売りつけようとした者が居るらしく、こういった目で見て判断できる機械は非常にありがたいそうだ。

高性能センサーが開発されれば今は手作業で見て行っている火力発電所の燃料ペレットの入れ替えも全て機械に任せることが出来るようになるし、魔力の残量などを測る事も出来るようになるかもしれない。

変人兄ちゃんにはこのまま頑張って欲しいものである。

 

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