奥多摩個人迷宮+   作:ぱちぱち

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第八十四話 アンチエイジングの恐怖

その日、ヤマギシに激震が走る。

 

「出来ちゃった♪」

「私も」

 

下原&鈴木家の母親s、W妊娠である。

 

「もーやだ!おかーさん恥ずかしいよーもー!」

「この年で弟妹かー。そっかー・・・」

 

沙織ちゃんは牛のようにもーもー言ってるし一花は一花でボケーッと空を見ている。

一花で16も差があり、俺と沙織ちゃんに至っては18歳差だ。ほぼ親子の年齢だな。

俺も黄昏そうになった。最近、母さんも父さんも若返ってからなんか熱々だなぁと思ったら・・・

いや、夫婦だからそりゃ可笑しくはないけどさ。

 

「暫くは問題ないと思うけど、産休の申請をしたいんですが・・・・・・」

「あ、ああ。そりゃ構わんが・・・・・・」

 

祝い事なのにどこか喜びきれないような雰囲気の社長。まぁ、法務部の頭である母さんと総務部でも気心の知れた下原の小母さんがほぼ同時に抜けるのはキツいだろうな。

 

ただ、産休はほかの女性社員にも起こり得るし、大きな仕事が終わった今の時期に経験出来ると思えばむしろプラスなんじゃないだろうか。

等と言う事を夕食の場所で告げたら一斉に「誰だお前?」と言われてしまった。解せぬ。

 

「普段はボケーっと聞き役になってるお前が、いきなりそんな事言いだせばなぁ」

「恭二兄もあんまり人の事言えないよね?」

「キョーちゃん、ブーメラン、ワタシ知ッテル!」

 

にやにや笑っていた恭二の顔が一花とケイティからの集中砲火に一気にしかめ面に変わった。

基本難しい事は真一さんやシャーロットさんに投げてるからなぁ・・・俺達。

因みに我ら幼馴染トリオ最後の1人、沙織ちゃんはいつの間にかシャーロットさんの所に避難しておしゃべりをしている。

さっきまで恭二の隣に居た筈なのに・・・はえーよホセ。

 

兎に角。目出度い話ではあるが二人とも40を超えており高齢出産になるため、事前の身体チェックは入念に行う事になった。

その結果はなんと全く問題なし。肉体年齢を調べると20台後半の数字になっており、母子共に問題ないレベルだった。

実年齢との差に診察をした医師が驚愕し、機械の故障かもしれない、と再検査を言ってきたほどだ。ダンジョンによるアンチエイジング効果を改めて思い知らされた気分だ。

 

勿論、この情報は冒険者協会にとっても追い風になる情報だ。

最近、ブラス家の保有する物件を諸事情により出されてしまい、ヤマギシビルの住居スペースに住み着いたケイティも目を輝かせてこの情報を拡散させた。

勿論肉体年齢≠実年齢という部分だ。

 

妊娠してすぐの為体型に変化がまだ殆ど無い下原のおばさんとうちの母さん、それに広報所属のうちの女性社員、更にはなんとアメリカのブラス家のお婆様とお母様まで持ち出してダンジョンに入る前と現在のビフォー・アフターの写真を作成。

事前に本人達に許可を取って世界冒険者協会と各支部のHPにアップロードした所、サーバーがあっと言う間にダウンしたらしい。

 

「・・・・・・・・・アンビリーバボー」

「分かるぞー今の気持ち」

 

世界冒険者協会からの新情報!という名目で写真がネットにアップロードされた時はニコニコした表情で、この情報があれば冒険者全体に対する世論を良い方向に誘導できる、と意気込んでいたケイティが30分で真顔になり、サーバーが飛んだときには青い顔でそう呟いていた。

俺も経験があるから分かる。凄い!って気持ちじゃなくて怖い!ってなるんだよな。

恐らく1時間の間にとんでもない数のアクセスが集中したのが原因らしい。サーバー関係には相当気合を入れたと言ってたんだけどね。凄いな、アンチエイジング。

 

結局サーバーは更なる強化と数を増やす事で対策し、混乱は収束した。したが、今度は世界中にあのとんでもアンチエイジングの成果が出回るわけで。

魔石の単価が1時間ごとにドンドン高くなっているんですが。

例のカリフォルニアの変な兄ちゃんの開発した魔力計量器で大まかな基準は出せているので、世界冒険者協会は魔力値が200を超えれば大幅なアンチエイジング効果が、そこに達さなくても10を越えた辺りから若返り始めるという数値を公表している。

少なくともゴブリンの魔石位の魔力含有量だと10個は必要になる計算になるのだが。

現在、そのゴブリンの魔石ですら一つ10万円を超えていると言うね。ちょっと前まではもっと安かったんだ。アンチエイジングの効果があると騒がれていた頃でも数万円だったし。

 

各地の冒険者協会が『もっと魔石を!』とプラカードを持ったデモ隊に囲まれるようになり、世界冒険者協会も慌てて対策を立てている状況だ。

日本?勿論、今現在奥多摩の旅館は満室だよ?

 

「ドーシヨ!ドーシヨ!」

 

予想以上どころか予想より数十倍でかい反響になって返ってきた現状に、あわあわとケイティが報告書の束を読んでいる。

うわ、フランスの魔石相場すげぇ。何回ストップ高になってるんだ?

 

「こうなるって予想できなかったの?」

「・・・・・・健康なヒト、コンナに若さホシイ、知らなカッタ」

 

何でも長い事病床にあったケイティは何よりも命を繋ぐ事に全ての感情が集中していたらしく。

世の婦女が求めるアンチエイジングも、需要の一つ程度の認識だったそうだ。

 

「女性人気、トテモ大事・・・・・・ダカラ、イケる、思ッタノニ・・・・・・」

「いや、行けると思うよ?」

「・・・・・・why?」

 

呆気に取られたような顔をするケイティ。

最近は体も成長を始めており、初めて会った時の幼さは完全に消えたと思ってたんだが・・・・・・そういう顔すると余り変わってないように思えるなぁ。

まぁ。うまくいくかはわからんが・・・

 

「逆に考えるんだケイティ。『魔石を用意できないなら俺達が用意しなくても良い』って考えるんだ」

「・・・・・・エエト。ノックしてモシモーシ」

 

ケイティさん、そこは俺の頭だよ。中身が入ってるからね?そこには脳みそが入ってるからね?

 

 

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