後、後書きにカスタムキャストを使って挿絵を入れてみました。初めての試みなので上手く言ってなかったら教えて下さい。
誤字修正、244様ありがとうございます!
横合いからすぱん、と顔を叩かれる。
痛い、というより驚いた。一瞬、意識が真っ白に飛びそうになっていたのが、急に視界が開けたように感じたからだ。
「・・・痛ぇな、昭夫くん」
「やかましか」
殴られたのに罵倒された。解せぬ。
「解せぬじゃなか。どうすっとよこの部屋」
「・・・うん?」
ふと昭夫君に固定されていた視線を周囲に向ける。
先ほどまで和風の居間だった宿舎の一室は、俺を中心に見るも無残にぼろぼろになっていた。
良く見ると昭夫君の衣服もかなりダメージを受けている。
「・・・ここはどこ?私はだれ」
「下手なボケはいらんとよ。何があった?あのウネウネは?この部屋片付けるのは?」
「あ、はいごめんなさい」
初めて見る昭夫君の激オコっぷりに俺は居住まいを正して正座した。
「すぐ西伊豆に行こう」
話し終えた後。昭夫君はダンジョンの職員さんに連絡を取り車を回してくれた。
昭夫君・・・ありがてぇ・・・
ありがたいが仕事は良いのかと言うと、慌てたように今日非番の人に連絡を取っていたのは昭夫君だなぁと思ってしまった。
いや、違う。こういった仕事は本来俺がやらなければいけないのだ。
携帯電話を取り出して真一さんに連絡を入れる。
『わかった。すぐそちらは何とかするよう手配する。叔父さん達も今出先から西伊豆に向かったそうだ。飛行機は手配しておく』
「すみません」
『気にするな。きっと大丈夫だ。俺もこちらが片付いたら現地に向かう。詳しい事が分かったら連絡を入れるから携帯は持っていてくれ・・・・・・向こうで会おう』
「はい」
そう言って、真一さんは電話を切った。ダンジョン内で冒険者が他の冒険者に襲われるといった事態に、冒険者協会側もかなり紛糾しているらしい。
俺と前後する形で現地の協会の職員から奥多摩にも連絡が入っていたらしい。
今回の事件はヤマギシの一員が被害者である以上、社長や真一さんは代表として奥多摩に待機して協会とやり取りをしているらしい。
職員からの連絡では詳しい事は判明せず、御神苗さんが現地の責任者として警察の事情聴取に付き合っているせいで中々続報も来ないらしいが、恭二がそろそろ現地入りするため、そちらからの情報を待っているところ、だそうだ。
昭夫君に詳細を伝えて、とりあえずの人員の目処は立ったことを伝えると、彼はほっとしたようにため息をついた。
というか昭夫君、完全についてくる気満々だけど別に付き合わなくても良いんだよ?と尋ねると、
『いや、新幹線の中でこれまたやらかしたらどうする気です?』
「面目次第もございません」
翻訳まで使われて本気の口調でボロボロになった部屋を指差された為、すぐに降参の白旗をあげた。
ここみんなで使う休憩室だもんね。うん、本当にごめん。
魔鉄でも握っていくか・・・したくないけどしゃあない。
右腕が使えなくなるが予防になるしな。
静岡の空港から電車に乗って更にバスに乗り換えて。
非常に長い旅路の末、俺と昭夫君はようやく西伊豆にたどり着いた。
そして、現地で俺と昭夫君を向かえたのは。
「あ、お兄ちゃん来たんだ」
「・・・来たんだじゃねぇぞ・・・・・・」
『やぁ、イチロー。すまない、心配をかけたみたいで』
「おう、やっぱ遠かったみたいだな」
「二人とも、お疲れ様。昭夫くん、お久しぶり~!」
ヤマギシの借り上げた社宅に取るものも取らずに駆けつけた俺と昭夫君を、のんびりと居間でお茶を飲みながら一花とデビッド、それに恭二と沙織ちゃんが出迎えてくれた。
安堵と脱力と、こみ上げてくる怒りを感じながら右腕にくくりつけた魔鉄を取る。
ハルクになっちまいそうな位に腹は立っているが、この場には恭二もいるし最悪こいつが殴って止めてくれるだろう。右腕無いと歩きにくいし。
「お父さんたちももうすぐ来るって。私もちょっと病院で女のお医者さんに検査されてたからさ!連絡遅れてごめんね!」
『僕も警察から解放されたの、ついさっきだからさ。翻訳が出来るのに英語が出来る人を連れてくるって聞かないんだよ!非効率的だよね!』
「わかった。頼む、怒りの矛先をくれ。何があったんだ?」
二人同時に頭を下げられたが、わざわざ5、6時間もかけて特急で急いで福岡から飛んできたのだ。
これで勘違いでした、だと流石に付き合ってくれた昭夫君に申し訳なさ過ぎる。
俺の問いに一花とデビッドは互いに顔を見合わせ、ついで恭二と沙織ちゃんに視線を向ける。
なんだ?と訝しむ俺に恭二はぽりぽりと頬をかきながら魔鉄を収納から取り出して俺の隣に立った。
非常に嫌な予感がするが・・・デビッド。お前も何故俺の隣に来る?暴れるから?暴れる内容なのか?
「うーんと。あのさ、本当に何も無かったから取り乱さないで聞いてよ?」
「・・・待て。恭二、それ、やっぱり魔鉄くくりつけてくれ」
「おk」
嫌な予感が天元突破した為右腕にテープを使って魔石をくくりつける。ハルクの怒りの増幅が発動したら誰も止められなくなっちまうかもしれんからな。
恭二ならレールガンを使ってでも止めて来るかも知れんが・・・・・・いやそれ下手したら俺死んでるか。
右側に恭二、左側にデビッド。空気を読んだのか背後に昭夫君が立ち・・・俺は囚人かなにかか。
話が出来る状態になったと判断したのか、一花は口を開いた。
「まず、佐伯さんって重度のロリコンみたいでダンジョン内でいきなりプロポーズされちゃったんだよね」
きゃっ、言っちゃった。とばかりに戯ける一花を見て、俺は言われた言葉をゆっくりと頭の中で咀嚼した。
「ほー。プロ・・・・・・・・・・・・・・・・・・佐えきぃいいい!!」
「お、落ち着け一郎!気持ちは分かる!気持ちは分かるぞ!」
「だったら離せぇ!プ、プ、プロポぉおあああ!」
『凄い力だ!ストレングスを使ってるのに!』
全力で家を飛び出そうとした俺を恭二とデビッド、更に昭夫君の3人が拘束する。
「あーあ・・・」
「予想通りだねぇ」
呆れたように呟く女子陣を尻目に俺達の格闘は恭二がネットで俺をがんじがらめにするまで続く事になった。