奥多摩個人迷宮+   作:ぱちぱち

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誤字修正、244様、アンヘル☆様ありがとうございました!


第九十四話 他国の反応

「なんか隣の国から謝罪と賠償の請求がヤマギシ宛に来てるんだけど」

「へー。意外と暇なんだね」

 

ネットニュースで隣国の国会にデモが詰め掛けていると書かれてたのだが、大袈裟な情報だったのかもしれない。

先日公開した動画によって巻き起こった一連の事態に対し、ヤマギシはあくまで被害者であり、動画の中で公表された各方面からの要求には従うつもりはないと公式に発表している。

そもそも、ただこういう風な要求を何故か付き合いのない所からされました。という事を発表しただけなので謝罪も賠償も必要な事だとは思わないんだがな。

 

「お兄ちゃんの目線って、偶にどこ向いてるか分からないよね」

「・・・そうか?」

「うん。頭と目のどっちが問題なんだろ。たまにすっごい良い意見出るのに、アクリル製の目ん玉してるとしか思えない時がある」

 

少し声を落とした一花の言葉に首を傾げる。

一花の件での茶々入れはともかく、それ以降の向こうの動きなんてどうでも良いと思ってるから、余り詳しく調べてないのだが。何か間違ってたのかもしれない。

 

「まぁ、日本だとあんまり実感無いかもしれないけどさ。国外だとお兄ちゃんってまんま現実に出て来たヒーローなのよね。実態はともかく」

「実態?」

「実態」

 

思わず問い返すも、真剣な表情で頷かれた為目を逸らす。実際はまぁ、こんな感じでのんびりしてるしな。別に日夜世界の為に戦ってる訳でもないし。

 

「で、今のシチュエーションってさ。他所の国の政治団体がヤマギシに対して無茶振りしてるってのは分かるよね?何故か一部国内からも来てるけど」

「ああ。それはまあ」

「そんなんをお兄ちゃんが動画で晒したら、普通お兄ちゃんのファンの方々は激オコだよ?ヒーローを邪魔する国家権力とかまんま映画の悪役じゃん。いろんな所で抗議デモが企画されてるみたいだし?」

 

一杯居るっていう俺のファンは何を俺に求めてるんだろうか。

国内だとせいぜい「ダンジョン探索頑張って!」とか声をかけられるか、写真を撮られるとかなんだが。

 

「日本人の好きなヒーロー像って悲劇のヒーローが多いから、お兄ちゃんはあんまり当てはまらないんじゃないかな。アメリカとかだと単純に『色々変身できてすごい!』って見てくれてる人も多いみたいだよ?」

「恭二で良いんじゃね?あいつ死にかけた所から復活してるし悲劇的だろ」

「それも違うんだよなぁ」

 

他愛もない話を交わしていると、会議室にどんどん人が入ってきた。

今日は月に一度、集まれる人間だけで行う定例会議の日だ。10分もしない内に会議室の殆どの席が埋まり、最後に社長が入ってくる。

 

「あー、皆お疲れさん。最近騒がしいと思うが、職務に支障がでていないようで安心している。さて、今回の議題だが、少しデカい仕事がある。意見を聞きたい」

 

最近の電話攻勢に聊か疲れ気味の社長はこほん、と咳払いを一つする。

その仕草に頷いて、シャーロットさんが立ち上がった。

 

「現在、日本国内の2種冒険者の数は大宰府で23名、西伊豆で7名。黒尾と忍野が5名。奥多摩では50名を超えています。最も奥多摩の場合は刀匠の皆様や社長他のヤマギシ社員を含めた数字ですが・・・・・・現状、他の各ダンジョンに奥多摩・大宰府の余剰の冒険者を回しており、一日に4回のダンジョンアタックを毎日行えています」

「結構増えたんだね~」

 

シャーロットさんの言葉に沙織ちゃんがぱちぱちと手をたたきながらそう言った。

確かに大分増えた。教官免許の時のように相手に教えるという技術を叩き込まないですんだから、一度に纏めて教習できるのも原因だろうな。

彼らは専業冒険者として毎日ダンジョンに潜り、臨時冒険者という名前のお姉さま方の介護を行いながら魔法やダンジョンについて習熟していく。

一度のダンジョンアタックにつき危険手当が冒険者協会からも出ており(協会は臨時冒険者から講習費を徴収している)、また自身がダンジョンで手に入れた魔石については売却も可能だ。

 

因みに現在、魔石の価格は魔力量で決まり、魔力1のゴブリンの魔石で5千円。これも一時期に比べればかなり安くなっているが、ゴブリンを2匹倒せば1万円になるのだ。

この魔石の価格は魔力量が上がれば上がるほど値段も跳ね上がり、魔力が1000を超えるゴーレムのものだと1千万を超える。

このレベルのものだと大規模魔力発電用のペレットを複数回補充できる魔力量になるうえ、人間が一度吸収してしまえば一発で保有魔力が1000近くまで跳ね上がるのだ。

魔力発電の研究用に値段を抑えて流しているが、流してすぐ売り切れという状況は改善されていない。

 

これらが何を意味するかと言うと、冒険者という職業はそこそこの腕があるだけでも非常に儲かるのだ。

そして、彼らには最低限生き残れるレベルの基礎技術は叩き込んである。

このまま時が過ぎれば、彼らも立派な教官候補生になり、そして教官になり、彼らが教えた冒険者達がダンジョンに潜っていくようになるだろう。

 

「それと臨時冒険者の中から、正式な冒険者として登録したいと言う声もかなり上がっています」

「ダンジョンに潜るだけで魔力も溜まるしね」

「ええ。それに気づいた目端の利く人は兼業という形ですが冒険者協会に登録をしてくれているようです。まぁ、それが理由で、ちょっと大きな事になってしまったんですが」

「うん?もしかして次の仕事って、その人たちの教育って事?」

 

口を濁したシャーロットさんに一花が尋ねる。そのレベルの事なら俺達じゃなくてそのダンジョンの2種冒険者が教えるべき事柄になるんだが・・・

シャーロットさんの言葉を引き継ぐように真一さんが口を開いた。

 

「いや。ダンジョンに入る女性の比率が高くなったことが問題なんだ。恭二、一郎。すまんが、この間の警官の教育。すぐに始めなければ不味い」

「・・・あ。ああ、あれか」

「そういえば世界冒険者協会が募集してましたね。何時からやるんですか?」

 

一花の事件をきっかけにダンジョン内での犯罪をどう対処するのか。また、冒険者が暴れたときはどうすれば良いのか。

それらの疑問に答えるため、世界冒険者協会は各国の警察等の治安維持組織に声をかけていた。

その事は事前に知っていた為、何時からやるのかと俺が問いかけると、真一さんは渋い顔で「来週」と答えた。

 

ぱちくりと数回瞬きをして、俺達は真一さんを見る。

その苦みばしった顔に、どうやら冗談じゃないと気づいて俺と恭二は互いの顔を見合わせた。

え、マジで来週各国から人来るの?無理じゃね?

 

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